不器用な恋(たいみつ)※他ジャンルの二次作品をたいみつ蘭みつに書き直した作品です。キャラブレ解釈違いその他大丈夫な方向けです。
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三ツ谷は、クラスメイトの大寿と定期的にセックスしている。
過去に大寿の弟関係で揉めて、理不尽な暴力や虐めを受けた。その後、担任や学校側の指導もあり、暴力を振るわれることはなくかったが、相変わらず見下されるし、仲良しになった訳ではない。セックスしてるとはいえ、甘い関係ではなく、もちろん付き合っていない。
大寿の別の形での虐めと言えるのだろうか。
仲良くなったと思いきや、性的な嫌がらせをされるようになった。
三ツ谷を女扱いするし、欲望の捌け口と思える愛のない性交。
いわゆるセフレにされてしまった。
三ツ谷は大寿のように割り切ってセックスなんてしたくない。好きな人としたい。
だけど圧倒的強さを誇る大寿に力で敵うわけはなく、抵抗むなしく抑えつけられて無理やり犯された。食事を奢ってもらった後で、抵抗しきれなかったのもある。そして、その後度々肉体関係を求められるようになった。ハメ撮りされたからバラ撒かれるのが怖くて逆らえない。
暴力を振るわれないとしても、逆らって怒らせたら何をされるか分からず、誘いを受けたら素直に従っている。
大寿が飽きるまで、卒業するまでと耐えている。
授業が終わり、何気なく大寿の机の上を見たらスマホが置いてあった。
スマホで何かチェックしていたところ、取り巻きたちに呼ばれて一緒に帰ったのだろうか。大寿にはカリスマ性があり、複数の取り巻きを従えてるのだ。
忘れてしまったようだ。手元にないと困るだろうと、三ツ谷は後を追いかけることにした。今なら追いつけそうだ。
「笑わせるな、三ツ谷とは単なる遊びに決まってるだろ。アイツはオレのオナホ以外の何ものでもねぇ。彼女が欲しいし、彼女ができたら簡単にポイだからな。ハハハッ」
階段を駆け下り下駄箱まで辿り着くと、軽快に笑いながら取り巻き3人に話しかけている大寿の声が聞こえてきた。今昇降口には大寿たち4人と、慌てて追いかけてきた三ツ谷しかいない。とはいえ、周囲に聞こえる大きな声で、よく卑猥な話ができるものだ。
しかも自分と大寿の知られたくない関係を漏らしている上、オナホ扱いで辱めるとは、無神経にも程がある。
三ツ谷の顔は屈辱と羞恥で染まった。
大寿が自分をどういう風に見てるかなんて想像できていた。だけど、聞きたくなかった。
とても惨めな気分になって涙が滲んだ。悔しい、セフレですらなく、オナホだった。
大寿の取り巻き3人は、やっぱりそうっスよねーと、爆笑しながら賛同している。それが怒りに拍車をかける。
三ツ谷をイジメることに快感を覚える3人組、彼らに蜜を与えるような発言にもムカつく。
三ツ谷をとことんコケにしている大寿たちは、まだ三ツ谷に気づいてない。
スマホを渡すために追いかけてきたのに、声を掛ける気分ではなくなってしまった。
(はは……オレは大寿のことなんて、なんとも思ってないから気にしてない。ただ、人として扱われなくて悔しいんだ)
自嘲する。
早く彼女を作って解放してほしい。
しばらく間を置いて、落ち着いてから4人の後を追いかけた。
「大寿っ、待ってっ!」
「……三ツ谷?」
「机の上にスマホ忘れてたよ」
「お、おう……サンキュー」
明るく笑顔を作って大寿にスマホを渡した。
三ツ谷に対して不遜な態度を取ることが多い大寿だがお礼は言えるようだ。
「わざわざ届けてくれたんだな」
「うん…困るだろうなと思って」
怒りに任せて捨てたくなった。だけど、三ツ谷の中の良心が許さなかった。
「助かったぜ。…いつから居たんだ?さっきのオレたちの会話、聞いてねぇよな?」
悪口を言ってたのではと疑いたくなる狼狽えぶりだ。
「え?なに?何か話してたの?焦ってるようだけど?」
三ツ谷はしらを切った。
取り巻きたちも、バツが悪いような顔をしている。
「ならいいんだが……三ツ谷、このあと時間あるか?ふたりで軽く食べに行かねぇか?スマホ届けてくれたお礼に奢るぜ」
なにか後ろめたいことがあるから機嫌を取りたくて誘ってるように思えてしまう。しかも、その後はお決まりのコースだろう。
「今日は用事があるんだ。約束してないし、帰っていいよね。それに、ただ忘れ物を届けだけだし、お礼なんていいって」
「……ああ。そうか、予定があるのか、残念だ」
本当に残念がってるのか判断し兼ねた。
ヤりたくて誘ったのだろうし、ヤれなくて残念なのだろう。
「じゃあ。オレはスマホ渡しに来ただけだし、急いでるからもう行くね」
「あ、三ツ谷……ッ」
大寿が何か言いたげにしてたけど、無視して足速にその場を離れた。
平静を装うのは思ったより難しくて、このまま一緒に居たら、感情が爆発しそうだった。
断ってしまったから報復されるだろうか。だけど今回は大丈夫そうだ。
大寿の本音を知ってしまって、これからオナホにされると思うと不愉快だ。
大寿は父親に自由に使っていいマンションの一室を与えられていて、三ツ谷の家に近いこともあり、放課後ふたりで会う時は必ず寄ることになる。テレビゲームで遊んだり、持ち帰りした料理やスイーツを食べたり…そして性的に身体を触られて、セックスする流れになる。
大寿と三ツ谷が貰っているお小遣いは比べ物にならない。大寿は三ツ谷の10倍貰っている。食事などに誘われ、お金がないと断ろうとしても、奢るからと付き合わされる。そして奢ってやったからと言うように、当然のように好きにされ……思えば、買春・売春の関係ともいえるのか。だとしたら自分の身体は随分と安い。
◇
「三ツ谷」
翌日の昼休み、席で編み物をしていると、大寿の取り巻き3人組がやって来た。
見回すも、大寿の姿はなかった。
「なに? 今手が離せねぇから簡潔に話して」
三ツ谷は編むのをやめず素っ気ない。
当然である。
3人は三ツ谷に好意的ではなく、一緒にいても碌な目に遭わないのが分かっているからだ。
「くぅ〜、三ツ谷、生意気」
「オレたちは親切に教えに来てやったのによぉ」
「相変わらずオレたちに塩対応だよな」
友達ではないし、嫌がらせをする3人に優しく接しようとは思えない。
大寿に三ツ谷に暴力を振るわないようにと牽制されたようで、今でこそ暴力は振るってこないものの、大寿と一緒に行動するようになった三ツ谷のことを快く思ってないのは明白だ。
「そういうオマエたちは相変わらず無駄口が多いな」
「フン、調子に乗ってんのも今のうちだからな」
取り巻きAが睨みをきかせてきた。
「大寿は、さっき女子に呼び出されたんだよ。それが2年の、スッゲー可愛い女子なんだぜ」
「おっぱいデカかった」
取り巻きBは下品に笑った。
「大寿の家は大金持ちだしスペック高いからファンが多いし、はにかんでたから、ぜってー告白だと思う。抜け駆けだって他の女子にハブられる可能性はあるけど、あの可愛さなら納得されるかもな」
「可愛いし巨乳だし、断る理由ねぇよなー」
「即、付き合あいそう。くぅ〜あんな可愛い子とヤリたい放題かよ〜」
3人はとても羨ましがっている。
「ふーん…」
三ツ谷は興味なさげに編み物に集中する。
「休み時間にいっつも縫ったり編んだり刺繍したり、ホント女みたいなヤツだよな」
「大寿やオレたちが構ってやらねぇと、いつもボッチで裁縫してて暗いよな」
取り巻きたちは無関係な内容でいびりだした。
三ツ谷は元々は女子たちに人気の明るく爽やかな手芸部部長だったが、彼らによって活動できなくされたのだ。
「おいおい、なんか言えよ。大寿に彼女が出来たらどうなるか分かってんのかよ!?」
「シカトかよ!オレたちにそんな態度とっていいのか!?」
「分かってるか?大寿はテメエのことなんて、少しも好きじゃねえんだよっ!」
彼らは吠え出した。
「三ツ谷は可愛い顔してるから抱けるようだろうけど、女子の柔らかさには敵わねぇだろ」
「テメェは大寿の都合の良い性処理相手だからな。機嫌損ねすぎないようちっとは優しくしてるかも知んねえけど、調子に乗んなよ」
クラスにいる他の生徒が何事かと注目しだして、三ツ谷はデリカシーのない3人組にイラついた。
3人の悪意はまだ止まらない。
「彼女できたらオメエは見向きもされねぇだろうな。つうか大寿はオメエとの関係は無かったことにしたいだろうし、またオレたちが三ツ谷イジメでも、止めねえだろうな」
「大寿に気を使って殴るのやめたけど、ストレスヤベェし、これからまた思う存分イジメてやるからな!」
「覚悟しろよ!たくさん泣かせてやる!」
うるさい。
ここぞとばかり捲し立てる3人。
他の生徒は、暴力的なイジメが再開するのかと、関わりたくないという顔をしている。
また地獄の日々が始まるのだろうか。
◇
下校のチャイムが鳴りすぐ教室を後にした。
大寿が告白された。彼女が出来た。
……もう大寿に脅され、性的関係を強要されることはない。やっと大寿から解放される。そう思えば、とても嬉しいことだ。
なのに、ジリジリとしたものが込み上げてきてイライラする。
「おい、三ツ谷、待てよっ!」
慌てて追いかけて来た大寿に呼び止められた。
「……大寿」
「今日、放課後遊ぶ約束してるだろ。その日はいつも一緒に帰るのに、なんで先に帰るんだよ」
「だってもうオレは必要ないよな。今日は彼女と帰るのかと思ったよ」
「はぁ!?彼女!?」
息も絶え絶えな大寿は唖然とした。
「……取り巻きAたちが、今日大寿が昼休みに後輩の女子に呼び出されたから、告白されて付き合うだろうって……」
「!?…アイツらッ。確かに告白されたが、勿論断ったからな」
「えっ、嘘……なんで?」
三ツ谷は取り巻きAたちの言う通り、即お付き合いしたのかと思った。
自分のことはオナホ扱いで、彼女が欲しいという本心を知ってしまったし、断るなんて勿体ないと、承諾したものだと思い込んでいた。
「なんでって……当たり前だろ?」
「当たり前?彼女作って、オレを捨てるのが当たり前なんだよな?」
混乱してきた。
大寿は人気のない場所に三ツ谷を連れていった。
「オマエを捨てるって……?」
「あ、ごめん。オレたち、付き合ってないのに捨てるもなにもないか」
「……だがオレたちは定期的に、セックスしてるよな?」
「それは欲望の捌け口としだろ。オレは恋人でも、セフレでもない……オナホ扱いだろ」
「〜〜ッ」
大寿は頭を抱えた。
「……ひょっとして、スマホ渡しに来たとき、オレと取り巻きとの会話聞いたのか?」
「…………」
「誤解だ。アイツらについイキってしまったが……。なんかよ、一悶着あって見下してた相手を……って言うのはダセえし、しめしが付かないと思っちまって……。すまねぇ、オマエを傷つけるつもりはなかった。本当はあんなこと、思ってねえからな」
あんなこととは、『オナホ』か?
大寿は、神話の中のヘラクレスを思わせるような恵まれた体格をしていて、立ってるだけで威圧的でド迫力だが、今は弱々しく見える。
「どういうこと?やめろよ、オレは傷ついてねぇし、今更言い訳する方がみっともねぇよ。何の意味があるんだよ」
「あるんだよ!好きなヤツに誤解されたんだぞっ!」
大寿はヤケクソのように叫んだ。
決してスマートな告白とはいえない。
だけど、みっともなくても心に訴えてくるような告白だった。
「………えっ?」
三ツ谷は耳を疑った。信じられない。
だけど赤面しているし、嘘をついてるようには思えない。
「ああくそッ、こんな風に告白するつもりなんてなかったのによ……」
これまた神話の中に登場する英雄を彷彿させる、彫刻のように整った顔が、悔しそうに歪んでいく。
「……大寿」
「マジか……」
「そんなぁ…嘘だろ。三ツ谷のことを……」
いつの間にか近くにいた、大寿の取り巻き3人はバッチリ聞いていたようで、ワナワナしている。
再び三ツ谷をボコボコにできなくて悔しいのだろう。
それに、先程三ツ谷をいびったことを大寿に知られるのではと怯えてるのかもしれない。
「オマエらいたのか。丁度いい、もう体裁など気にしないでハッキリさせる。オレは、三ツ谷のことが好きなんだ!」
大寿は三ツ谷を胸の中に引き寄せて、後ろから抱きしめて告げた。
自分を抱く腕がいつもより逞しく感じられるし、なぜか安心感があり、三ツ谷は少しドキドキしてしまって戸惑った。
大寿の潔さに慄く3人。
「……そんな、三ツ谷のこと生意気だと言ってたじゃねぇか」
「死ねと、邪魔者扱いしてたじゃねえか」
「オナホなんだよな」
まだ納得できないようだ。
思えば、大寿が三ツ谷を嫌っているからこそ、ご機嫌を取ろうと取り巻きたちは三ツ谷をイジメだしたのだ。
「初めは弟を誑かすし、生意気だと思っていたが、愛しちまった」
「そんな……大寿まで誑かされたのかよ」
「三ツ谷、どんな姑息な手を使ったんだ!?」
「誘惑したんだな、そっか、金目当てか」
「あと、大寿は目立つし人気者だから、媚び売って、自分の評価を上げるようと利用したんじゃね?」
3人とも三ツ谷を悪者扱いした。
大寿が三ツ谷を好きになるわけない。性的に誘惑して落とした淫乱だと罵った。
違う。
仲良くしようと、放課後ふたりで会おうと誘ってきたのは大寿の方からだし、打ち解けたところ、マンションの一室でキスされて、無理やり犯されたのだ。
「それは違う、三ツ谷はオレを誘惑してねぇ」
「……大寿」
取り巻きたちの揶揄を否定してくれ、三ツ谷は心が揺さぶられた。
「まあだが…無防備だし、うなじが色っぽいし、ある意味、誘惑されたと言えるのかな」
「!?」
含み笑いしてるように声が震えている。
庇ってくれたわけではないようで、地の底に叩き落とされた気分だ。
「やっぱりな」
「分からないよう誘惑してズル賢いよな」
「淫乱なコイツに騙されてるんだよ」
自分達の言葉を否定されて悔しそうにしていた取り巻きたちは、ここぞとばかり、三ツ谷を罵り出した。
「いや違う、オレたちは愛しあっている」
「そう勘違いさせてるスよ」
大寿に三ツ谷が狡猾で、誑かされていると、力説する3人。
「テメェらオレを怒らせてぇのか?愛のないセックスなんてするわけねぇだろ!」
大寿が怒りだし、自分達の方こそ大寿のご機嫌を取っている3人は怯んだ。
「三ツ谷はいつも悦んでるし、だからこそ定期的に愛しあってるし、いつも合意の上だからな!」
あまりの迫力に、取り巻きたちは何も言い返せないでいる。
だが、その顔にはありありと不満が浮かんでいる。
「オレは三ツ谷を愛してるから抱きてぇし、三ツ谷だって愛してるから抱かれたくて、定期的にふたりきりで会うんだ。三ツ谷にはオレが必要だからこそだし、オレたちの問題だ。何も知らねぇオマエらが、勝手な憶測で口を出すんじゃねぇ!」
三ツ谷を抱きしめる腕に力が込められた。興奮してるから熱くて、大寿の熱が身体に伝わってくる。
「……だから、それが誑かされてると……。三ツ谷は好きなふりしてるんじゃ…」
勇気を出したCが、恐る恐る意見をした。
「うっせえ!ど突かてえのか!?」
「「「ヒィッ!」」」
空気が振動する怒声に3人は縮こまった。まだ腑に落ちないようだが、反論するのはやめたようだ。
三ツ谷は唖然としている。
いつも嫌々応じてるのに、大寿は本当に勘違いしてるのか、誤魔化してるのか。
三ツ谷が大寿のこと好きだという前提で、抱いているようだ。
大寿は三ツ谷に振られるなんて考えてもないようだ。犯罪まがいのコトをしたくせに。
(それなら)
三ツ谷の心に仄暗いものが芽生えた。
(利用してやる)
好きなふりをする。
取り巻き3人が言うように誑かす。
大寿の家はお金持ちだし、毎週のように食事に連れて行ってもらえるかもしれないし、有料施設など、いろいろ連れてって貰えるかもしれないし、カッコいい服も買ってもらえるかもしれない。
三ツ谷の家はシングルマザーでお小遣いは少ないし、貧乏で、付き合ったとしても、大寿が奢ってくれなければ、満足にデートができないのは事実。
裁縫用の生地など買ってもらうのもいい。マフラー編んだり、服を仕立てて喜んでくれるとしたら、自分のスキルアップにも繋がるし、一石二鳥だ。
大寿と恋人同士になれば。
大寿の取り巻きたちは大寿に媚を売るために三ツ谷にへつらうだろう。
大寿だって、今は本当に好きだとしても、いずれあっさり捨てるに違いない。だから本気になりたくない。
後ろめたい気持ちはない、大寿を利用するのは一種の復讐だ。
「…オレは大寿の本心を知って嬉しいよ。恥ずかしくて言い出せなかったけど、オレも……大寿のこと、好きだよ」
ずっと寡黙していた三ツ谷はついに口を開いた。
大寿の腕に愛しそうに触れて。
分かっていながらも動揺したのか、大寿がピクッと震えたのが伝わってきた。
「三ツ谷……愛してる」
両腕を掴まれて、向かい合わせにされた。
ゲッと、気持ち悪がってる取り巻きたちの声が聞こえてきた。
だけど大寿は気にしてないようで、真剣に真っ直ぐと見据えてきた。
嘘偽りない情熱で、琥珀色の飴玉のような魅惑的な甘さを含んで煌めく瞳。その中に囚われてる自分は、とろけているようだ。
「三ツ谷、オレたち付き合おう」
「………」
計画通りだ。
「大寿、やめた方がいいって」
「手玉に取られる。そのうちもっといいヤツが現れたら乗り換えるつもりぜ」
「オレたちは大寿の為に言ってるんだぜ」
三ツ谷が返事する前に、取り巻きたちが忠告する。
真に大寿を心配してるのではなく、大寿が三ツ谷と付き合ったら虐められなくなるし、都合が悪いからだ。
「オマエら反対するのか。なら今後一切、オマエたちと関わるのをやめる。自分の不始末の後処理をオレに頼むなよ、金を貸すのもなしだ」
そんなっと震え上がる3人。
「はは…反対するわけないっスよ」
「大寿が選んだ相手だ。良いヤツに決まってるよな?」
「ああ。三ツ谷可愛いし、悪人には見えねぇ。それに大寿のこと凄く好きなんだって伝わってくるぜ」
急に煽てだした。
「だ…だけど、飽きて捨てるかもしれねぇじゃん」
「大寿に酷いことするかと心配で…」
「浮気するかもだしよぉ…」
心配してることのアピールも忘れてない。
「浮気しねぇだろ。それに飽きたって離さねぇよ。オレと三ツ谷が別れるとしたら、それはオレが三ツ谷に飽きたときだ」
その言葉に三ツ谷は心臓が不安に跳ねた。なぜかザワザワして、落ち着かなくなってきた。
「そっか。大寿が三ツ谷と付き合うのは、飽きるまでなんだな」
「飽きたらお別れするのか」
「ああ、そうだ」
正面に見える取り巻きたちの狡猾な顔と、背後から聞こえる声に、心が蝕まれていく。
(オレの気持ちなんて関係ねぇのか)
愛してると告白してくれ、真剣に付き合おうつもりなんだと思った。
だけど。
自分本位で付き合うつもりだったようだ。
そんな大寿が憎たらしい。本気だと思ってしまって悔しい。だけど、顔には出さなようにする。
本人がハッキリと告げたのだから間違いない。大寿が求めてるのは、自分が飽きたら終わる、初めから終わりを見据えた恋人関係。
(名家のようだし、後継問題とかいろいろあって……オレは、結婚相手を見つけるまでの繋ぎなのだろう)
家柄が釣り合わないし、俯瞰してみれば明白だった。
弟を誑かしたと嫌われていた。
信じられないが、今は好きなようだ。
告白されて……本当に愛してくれてるのなら、自分も好きになる努力をしたいと思わないことはなかった。
だけど、期間限定の恋人だと思い知らされ、反発心が芽生えた。
もう迷わない、大寿が飽きて別れるまで、大寿を利用する。
悔しい…ホントに、利用してやる。
「三ツ谷…コイツらが横槍してタイミング失ったよな。愛してる、オレたち付きあわねぇか?返事が欲しい」
大寿は改めて告白してきた。
「……はい」
三ツ谷は承諾した。
嬉し恥ずかしいように。でも心の中は冷めていた。
「本当か!?良かった……Aたちが煩せぇし、一時はどうなるかと思ったぜ」
大寿は安堵したようだ。
嬉しさのあまり抱擁され、三ツ谷も腕を背中に回した。
ヒューヒューと取り巻きたちが口笛を鳴らした。
学校の敷地外だが、まだ学校の近くで、知らない人々だけではなく、生徒たちも通っている。
隠れて様子を見てる生徒もいるし、ハグしてるのを複数人に目撃されて、本来なら恥ずかしくて無理だが、今は気にならない。本来なら恋心が実り、感無量になってる場面だ。
「今度、ふたりきりの場で改めて告白していいか?」
ようやく抱きしめるのをやめた大寿が話しかけてきた。
「いいよ」
告白をやり直したいようだが、とりあえずオレたちは取り巻きたちにも認められて恋人同士になった。
どうせすぐ飽きる。
そう思ったのに。
それから十年。
大寿はいつまで経っても三ツ谷にゾッコンで、一向に飽きる気配がない。
社会的地位が高く、経済力や指導力、包容力があり、何よりも一途で愛情深いのが魅力的だ。
かつて利用しようと思ったこともある。だけど、今は彼のことを尊敬してるし、絶対に手放したくないくらいに好きだ。自分がそんな風に変わるなんて、当時は思いもしなかった。
世の中、どうなるかなんて分からない。
【おしまい】