ある日のがっくんと跡の会話部活終わりに岳が跡に「跡って好きな奴いねーの？」っていきなり聞いてくる。一方、聞かれた跡は部誌から顔を上げてあーんと岳を見る。「俺様は忙しい。恋愛なんぞにうつつを抜かしてる暇はねえよ」「じゃあ、タイプは？」「…唯々諾々と従う奴より、跳ねっ返りのが見てて面白いとは思うが」


「いいだくだく？？」「樺のような奴のことだ。あれはあれで可愛い奴だが」「じゃあ、跳ねっ返りってのは亮とか、ひよとか？」「なんで、あいつらなんだ。…まあ、性格だけで言うならあれぐらい気が強い奴のが楽しいだろうな」「なら、ひよに告られたら跡はどうする？」

「あーん？」「だってよ、あいつ、下剋上って言ってる割にめっちゃ跡に懐いてるじゃん？口を開けば跡さん、跡さんだし。お前のこと、好きなんじゃねえの？」言いながら段々と口を尖らせて行く岳になんだ、そういうことかよと納得する跡。「あいつにとって俺は下剋上する相手でしかねえだろうよ。

恋とか愛とかそんな甘ったるいもんじゃねえ。だから、安心してひよを口説け」「は、はあああ？なに、言ってんだよ！？」「余計なことを考えず、真っ直ぐにぶつかっていけ。あいつなら受け入れるにしろ、受け入れないにしろ、きちんと応えてくれるぜ」跡の助言に真っ赤になって黙り込む岳。

暫く、うーうー唸ってた後、気を取り直して再び、口を開く岳。「なあ、跡って本当に好きな奴いねえのかよ？」「同じことをを何度も言わせんな。いねえよ」「塚は？」「塚？」「他校の生徒でライバルなのに、喜んで構いに行ったり色々、大盤振る舞いしてんじゃん？好きなんじゃねーの？」

休日とかもわざわざドイツまで行って、釣りしたり、山登ったりしてんだろ？それってデートじゃねえの？」怒涛の質問攻めに考え込む跡。


「いや、ない。趣味は合うが奴とそうなる想像ができねえ。いいとこ、お友達ってとこじゃねーの？」「マジで？」「マジで、だ。おそらく、あいつが添い遂げるのはテニスの女神だろうよ」「俺からすれば、跡もそんな感じだけどな」「あーん、当然だろう？テニスの女神の祝福は王たる俺様のものだ」


「………テニスバカ…」「文句があるなら言いやがれ」「別に。じゃあさ、ゆーしは？」ぴたと手を止める跡。「…今度はあいつかよ」「跡って基本、樺しか傍に置かねえのにだけど、ゆーしには自分から手伝えってスカウトしたじゃん？なんで？」塚の時はすらすらと理由が出てきたのに今は出てこない。

なんで自分のサポート役に忍を選んだのか改めて、理由を考えてみるが明確な答えが出てこない。ただ、単純にこいつがいいと思ったからスカウトした。そこに何か特別な感情があったのか。「……なんとなく？」いつもの跡らしくないぼやかした答えに岳はにいと笑った。その笑いに嫌な予感を覚える跡。

なるほどなるほどと満面な笑みで頷く岳。「つまり、跡にとってゆーしは特別ってことか」「…なんで、そうなる」「だって、それって誰にも取られないように傍に置いときたいってことじゃん。ゆーし、ああ見えてモテるしな！」一体、何が楽しいのかご機嫌な岳とは反対に眉間に皺を寄せる跡。

「ゆーしのことは任せた！」「はあ？なんだ、それは」投げかけられた疑問に答えず、じゃあなーと上機嫌で部室を後にする岳。一人になった跡はシャーペンを置き、髪を掻く。「特別、なのか………？」ポツリと呟き、考え込む跡。実は部室の外には忍が居て、出て来た岳に頑張れよとエールを送られてたり。

跡は人の感情の機微は鋭いけど自分の感情には鈍め。なので、どうしてそうしたのか無自覚。ちなみに立ち聞きしてた忍は跡が好き。だけど、今の関係を崩したくなかったのと、跡は塚が好きだと思い込んでて、ずっと黙ってた。満更ではない跡の態度を目にして、この後、あのエ◯ボイスで跡を口説き落とすのだった。