心まで、雨に濡れて。 打ち付けるような雨が縁側を濡らす。刀工の皆は繁盛期でもないからと作業を一時中断した。今は別の書類作業をしているらしい。他ならぬ僕も、今は割り当てられた部屋で待機している。
特にやることもないので畳の目の数を数えていると、誰かが障子を開いた。
「傾奇者、少し頼みが……何してるのでござるか?」
「た、畳の目を数えていました……」
開けた主は、丹羽だった。寝転んでいたのでいそいそと正座をする。恥ずかしい。丹羽はそんな僕に目線を合わせるように立ち膝をついた。
「こんな雨の中其方に頼むことは憚られるのだが……この箱を、今から言うところに届けてくれはせぬか? 丹羽からだ、と言えばすぐに分かると思うでござるが……」
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