ぎし、と音を立ててソファのクッション材が沈む。平均よりかなり大柄な体躯にソファが限界だと声を上げているかのような音だ。
「新しいの買いましょうよ」
その大柄な男、義龍に跨るように向かい合った半兵衛は、もう長くないだろうソファの寿命を思いやった。
「それもそうだな」
もっと横幅のある物を買うか、と義龍が半兵衛の背中に手を回し自分の方へと引き寄せる。半兵衛は数度義龍にキスをした後、義龍のだらしなく首にかかっているだけのネクタイを引き抜いた。
「ネクタイ、使いますか?」
「じゃ、使うか」
「悪趣味」
数日前ここで絡み合った時、裸にされネクタイで後ろ手で縛られて床に転がされた。何のAVで見たのか知らないが、そういうプレイも悪くねえな、と悪びれる様子もなく縛り上げたまま口のみでフェラをさせられた。義龍には嗜虐趣味もある。半兵衛が苦しむ様を見るとゾクゾクするらしかった。あまりそっちの味を覚えられたらたまったものではないな…と半兵衛は己の身を心配しているが、それもまた義龍の人間性なので諦めている。
義龍はあまりここでする時は衣服を脱がない。仕事の合間の休憩のようなものなので、やり終えたらさっさと一人で煙草を吸ってくつろいでいる。そのくせ、半兵衛には脱がせたがる。半兵衛自身も、寝室ではない殺風景な、むしろ殺伐とした空気の漂う事務所内で布切れ一枚すら無い露わな姿にされるという、いかにも背徳的な行為というものが嫌いではない。ただし、必ずドアに鍵をかけての話であるが。
義龍の胸元をはだけさせた後、半兵衛はするりとシャツを脱いだ。下着も脱ぎ捨てると、白い四肢が剥き出しになる。なめらかなツヤのある肌には自信があった。義龍に気に入られるよう、手入れは欠かしていない。もちろん、いじられる部位は剃毛済みだ。
「どうされますか?」
再び跨り、義龍から引き抜いたネクタイを、義龍の目の前でぷらぷらと揺らす。「どうするかな」と迷うそぶりを見せながら、義龍がネクタイを半兵衛の目元に巻きつけた。
「目隠し…ですか」
目隠しは初めてだな、と半兵衛が過去の一連の行為を思い返していると、突然後ろにずぷりと何かを挿れられる感触が走った。
指ではない。しかし目隠しをされているため何かはわからない。これは何だ?と神経を侵入箇所に集中させる。挿れ込まれたそれはゆっくりと抜き差しされ、完全に引き抜いたかと思うといきなり奥の方まで押し込まれる。
「あ、う…っ!義龍様、それ…」
「教えねえよ」
新しいおもちゃなのだろうか。今まで挿れられた物とは違う初めての感触。いつもより感度が高くなっている気がする。そこに集中しているからこそ、いつも以上に感じる幅も広くなっているのだろう。
「う……、はぅっ!」
突然の振動に体がびくんと跳ねた。大きな声も出てしまった。幸いなことに防音設備は施されている。
「バイブ…?」
「まぁな」
カチ、というかすかな音の後、振動が強くなった。その上に奥までぎちぎちと挿し込まれていくものだから、喘ぐな跳ねるなという方が無理な話である。
されるがままなのも癪なので、手探りで義龍のズボンを探し、ベルトとボタン、チャックを外した。下着をずらすとこぼれ出てきたものを、指でなぞる。そっちがその気ならこっちだって…と触りながら部位を確認し、手を使って撫ではじめた。
「あ、んっ!!…もうそれ以上は…っ!」
「それ以上は?」
義龍の声で、今彼は意地の悪そうな笑みで自分を見ているのが想像できる。目を隠され全身を震わせながら喘ぐ姿を見て心底楽しんでいるのだろう。触り始めはまだ柔らかかったそれは立派に収穫できるとばかりにぱんぱんになっている。
「それ以上されると、もちません…」
空いた手で自分の前を触ると、前もしっかりと天井を向いて起き上がっていた。後ろにばかり気を取られていたので気が付かなかったが、前はすでにぐしょりと濡れていた。
「もたせろよ」
一旦切られていたスイッチがまた入れられる。ブブブ…という音に合わせて身体が勝手によじれてしまう。
「無茶言わないで……くぅっ」
脳がちかちかする。これ以上されたら気を失ってしまう、というところでスイッチが切られた。義龍のを弄っていた手がどろどろに濡れている。おそらくイったようだ。半兵衛自身もすでに限界で、もう数分続いていたら今日一日はもう使い物にならなくなっていただろう。
「ったく、早えぞ半兵衛。まだこっちはやり足りねえのに」
「……ここまでもたせたことを褒めてくださいよ…」
跨る気力も使い果たし、ずるりと義龍の膝の上から床へと転がり落ちた。冷たい床の感触が熱った身体に気持ちいい。しかしこのまま寝転がっているわけにはいかない。前からも後ろからも垂れ流される液体を片付けてしまわないと。ここは寝室ではなく仕事場なのである。
ネクタイを外して仰向けになる。義龍が裸のまま床に寝転がる半兵衛を見下ろしているのがまずはじめに目に入ってきた。