「あ、ダメ一氏くん…じっとしてて」
「こそばゆいんですよ…っ」
「もう…そんな風に身をよじらせてたら、ヘンな気分になりそうだよ僕…」
つぅ、と指の腹で穴をなぞると、一氏の体がぴくりと跳ねた。こそばゆいだけなのか、欲しているのかわからないが、気持ち良さそうな声が出て漏れ出てしまっている。
「中の方も塗るから、指…入れるね」
「ちょ…それは自分で…あっ!」
咄嗟に一氏が口を手で塞ぐ。ぬるりと入れられた指に感じてしまったらしい。
「そういう声出されたら、やりたくなっちゃうからやめてよ…」
「あんたが出させてるんでしょうが」
昨晩彼の尻穴で遊びすぎて故意ではないとはいえ傷を付けてしまった。充分に濡らしていないままに玩具を押し込んだのがまずかったのか、伸びてきた爪を切り忘れたまま指を突っ込み玩具を引き抜いたのがまずかったのか。どちらにせよ、今こうして軟膏を塗る羽目にさせてしまったのは半兵衛であった。せめてもの責任を、と塗りづらい臀部へ薬を塗るのを手伝っているわけである。一氏本人が必要ないと言うのを無理矢理説得してやらせてもらっているのもまた半兵衛であるのだが。
「入れたら…痛いよね?」
「痛いですね」
「あ、でも僕のは昨日のおもちゃより細いし…」
「細いとか太いとか言う問題じゃないと思いますが」
「そっか、そうだよね」
立ち上がるたびに痛みを感じているらしい穴に、異物をあてがうのは拷問に等しいだろう。半兵衛自身も昔はよくやられていた。明らかに入る大きさではない義龍のソレや突起のついた玩具などを入れられては、数日用を足すたびにトイレからしばらく出てこれなかった。しかし慣れとは怖いもので、幾度かやられるうちに痛みにも慣れてしまう。広げられ初めの頃よりかなり太い物でもすんなり入れられるほどになった頃には、血が出るほどに裂けることもなくなった。
「ううん〜…でも入れたいなぁ。指でもいいから」
「あんた…物欲しそうな声を出したら許してもらえると思ってませんか?」
「え、バレちゃってる?」
「バレバレです」
一氏がいつもの溜息をついた。もう一押しすれば入れさせてくれるのがパターンではあるが、無理強いはしたくない。しかし、リビングのソファに尻を突き出す形で床に膝をつきソファに伏せる一氏を見ていると、いてもたってもいられなくなる。この穴に指を奥まで突っ込みたい。彼を気持ちよくさせたい。あわよくば己のアレも入れて彼と一つになりたい。
ダメダメ、と半兵衛は頭を振った。痛がってる彼に酷いことをして軽蔑されたくはない。
「じゃあ、さ」
入れることが叶わないのならば、その逆で妥協するまで。入れられないのなら、入れてもらえばいい。
「僕の穴に入れてよ」
「はい?」
「それなら一氏くん痛くないし」
「まぁそうですけど」
「じゃ、決まり」
軟膏を塗り終えた指を一氏の前へと滑らせ、ゆっくりと付け根から先へと触ってゆく。先端をくちゅくちゅといじると、彼はびくっと体を硬らせた。
「力抜いて」
ゆっくりと、そしてだんだんと速く。一氏の背中に体を押し当て、右手のみで前を弄る。硬くなってゆく感触にゾクゾクする。もうそろそろ良いだろうか。一氏は抵抗もせず声を殺してソファに上半身を沈めている。
空いた左手で己のズボンと下着を下ろし、尻穴につぷと指を入れてみる。すんなりと入ったので、もう一本加えて入れてみる。少しキツいが、すぐほぐれるだろう。
「一氏くん」
「…何、ですか…、んっ…!」
「入れたい?」
「……っ」
「はっきり言ってくれないとわかんないよ?」
はあはあと一氏が肩で息をしながら喘ぐ。言葉にならない声をあげながら、途切れ途切れに「入れさせてください」と答えた。
「入れさせてあげる」
ぐい、と彼をこちらへ向かせる。ソファに体を預け半兵衛を見上げる汗だくの額に髪が張り付いている。その髪をかき上げつつキスをすると、強引に背中へ手を回された。
「一氏くん…っ!」
細い半兵衛の体が軽々と持ち上げられ、一氏に跨る格好で向き合わされた。
「入れていいんですよね?」
その言葉が終わると同時に股間に圧を感じた。熱を持った太く長い物が奥の方へとぎちりと押し込まれる。あまりの熱量に半兵衛は耐えきれず声を上げた。今の声は隣の部屋へと筒抜けだろう。しかし隣を気にしている余裕などない。
「一氏くん…!」
ぐっと腰を押される。その位置は、と抵抗しようにも非力な半兵衛ではどうにも出来ない。
「そこはダメぇ…っ、やだ、もっと優しくしてよ…」
「お断りします」
「一氏くんの意地わ…あぅっ」
ズンと突き上げられる衝撃に意識が飛びそうになる。体勢を保っていられない。
「気持ち良いんでしょう?」
一氏がニヤリと意地が悪そうな顔で笑う。僕が何をしたの、とうっすらと残る思考回路で考えてみると、すぐにその答えに行き当たった。
「気持ち、いいから…ゆっくり…っ」
「入れさせてくれるんでしょう?なら、俺が満足するまでやらせてもらいますよ」
そんな泣くほど気持ち良さそうな顔して、と笑う一氏に、ならいっそ壊れるまで抱かれてみたいと半兵衛は一氏の肩に爪を立ててしがみついた。