帰蝶さまが半兵衛で遊んでる──どうして姫様に押し倒されているのだろう…。
半兵衛は帰蝶の艶やかな髪ごしに天井を見つめた。帰蝶が「どこを見ているの」と聞いてくる。
つい先程、帰蝶が半兵衛の部屋に来た。何の話かと思えば昨夜の主人義龍との交わりのことで、半兵衛の身を心配して様子を伺いに来たらしい。昨夜は軍議が長引いて疲れていて粗相をしてしまい、義龍を怒らせた。半兵衛の隠そうにも隠せない頬の腫れを見たのだろう、部屋に入ってくるなり濡れた手拭いをいきなり押し当てられた。
その後しばらく何ということのない話をしたまでは自然な流れだった気がするのだが。
「あの…姫様」
「何?」
「正気ですか?」
「私の気が狂っているように見えるの?」
「ああ、いえいえ!」
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