新刊予定掛かっていた
まるでデートみたいだ。
平日の昼間。人の少ないショッピングモールの中を、十四は空却と並んで歩いていた。
実際はデート、ではない。単にふたりで買い物に来ているだけだ。だが、ふと、デートみたいだと思ってしまったら、胸が弾まずにはいられない。緩んでしまいそうな頬を、気合を入れて引き締め直す。にまにまなんかしちゃダメだ、変な表情や態度を見られて、からかわれなんかしたら……真っ赤になって、そして自分は恥ずかしさのあまりに走り出してしまうだろう。そんなみっともないこと、するもんか。
自分が見せられる一番いい顔で、空却さんの隣を歩くんだから!
十四は胸の中に深くしっかりと、自身の言葉を刻んだ。
好きな人の隣を歩くのだ、誰よりもいい姿勢をした、にこやかな表情の自分でいたい。そんなことを思う片想い中の自分自身が、照れくさくて、そして誇らしい。
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