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    hsm_konome

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    hsm_konome

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    副反応の残りに若干(;//́Д/̀/)ハァハァしつつ、布団の中でもそもそ書いたカイアデdeワクワクチンチンネタ(だいぶ元気だな!?)
    カイトが弱っている方が好きなので、ひとまずカイトに倒れていただきました(本当に推しなのかと疑われる)

    カイトのおかゆ嫌いの理由は、他にもなるほどと思う予想がありましたが、とりあえず自分が予想した方(まるっきり自分と同じ理由)にしました!

    #カイアデ
    chiade

    おかゆとうた 新型ウイルスに対抗するためのワクチンを打った。
     酒をよく飲む俺の担当は予想通りのアクシオンで、摂取の前後は絶対に飲むなと口酸っぱく言われ、適当に流していると監視をつけるだのアルに報告するだのと脅された。さすがにそれは困るので渋々守ったのだが、今のこの状況を考えると、本当に飲まなくて正解だったのかもしれない。怪我以外でこんなに寝込むのは何年ぶりだろうか。
     そう、いわゆる副反応というものだ。1回目は大したことはなかったし、男性は女性に比べて強くないとも聞いていたのだが、この体はやたら免疫力が強いらしく、普段あれだけよく動く体が、今はちっとも言うことを聞いてくれやしない。
    「カイト、生きてるー?」
     ドアをノックする音と、アデルの声。何かあった時に誰かがすぐに部屋へ入れるようにと、鍵をかけることさえ禁じられていた。最初は大袈裟だ、面倒だと思ったものだが、本当に動けなくなった今は、その判断が妥当だったと思い知らされる。……本当に、医者の言うことは聞くものだと反省する。
    「……ああ」
     返事をしたつもりが、ほんの小さな声しか出なかった。それが届いたのかはわからないが、彼女は部屋へ入ってくると、食器の置かれたトレーをベッドのサイドテーブルに置き、ドアを閉め、近くにあったスツールをこちらに運んでくる。
     トレーに目をやると、小鍋と茶碗、それにスプーン。こんな時、この組み合わせで思い当たるメニューは一つしかない。
    「…………おかゆか」
    「そう、作ってみたの」
    「…………」
     おかゆは嫌いだ。昔しょっちゅう体を壊しては無理矢理流し込んでいたもので、ひどい時はこれすら受け付けず重湯を飲むしかなかった。以来、おかゆやそれに似たものを口にするとその時の記憶が蘇り、元気な時でも体調が悪くなってしまうほどだ。
     アデルは、俺がおかゆ嫌いであることを知っている。だが実際、この状態ではそれしか食べられるものがないこともわかっている。――が、一番の問題は、彼女が料理に関して、ドがつくほどの下手であるということだ。
    「ほら、ちょっとでも食べて薬飲んで。風邪なら自力で治さなきゃって言うんだろうけど、これは違うんだから」
    「……あ、ああ。そう、だな」
    「もう、そんなにおかゆが嫌? 大丈夫よ。カイトが嫌がるからってジャオキキに相談したら、いいレシピがあるヨ〜って手伝ってくれたの」
     それを聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。ジャオキキが見てくれていたならひとまず安心だ。
     俺は重い体をなんとか起こすと、上がる方の右腕だけで背伸びをした。寒気で身震いすると、アデルは慌てて自分の着ていたルームジャケットを俺に掛ける。遠慮すると、自分は元気だし、震えていたら食べられるものも食べられない、起きている間だけだから着ておけと諭された。肌触りの良いボアからは彼女の優しい香りがして、少し落ち着かない。
     彼女が小鍋の蓋を開けると、ふわりと湯気が立ち上り、知っているおかゆとは異なる匂いが漂う。彼女はそれをおたまで丁寧に茶碗に移し、スプーンを差し込むと、はい、と差し出した。
    「自分で食べられる? あーんしようか?」
    「お前な……」
    「冗談よ。……とりあえず、お雑炊っぽいものならまだ大丈夫でしょ? 味付けは薄めだけど」
     嫌いなものを無理矢理食べて、余計体調が悪くなっても困るしね、と苦笑する。中には卵・鮭・しいたけ・ネギが入っており、なかなかに彩り豊かだった。
    「ああ。……懐かしい匂いだ」
     茶碗を一旦テーブルに置き、いただきます、と手を合わせる。
    「律儀ねぇ」
    「そりゃそうさ。こいつに関わってくれた全ての命に感謝、ってな。もちろんお前にもだ」
     スプーンで掬って、ひとくち。確かに味は大人しいが、だしや醤油が入っているのがわかる。そこにほんのりと生姜の香り。舌触りこそ確かにおかゆのそれだが、優しい気持ちになれる味だった。
    「美味いな。これは……だしを入れて炊いたのか」
    「ううん、炊いてから入れたの。離乳食にも使われる方法なんだって」
    「へえ……」
     料理には詳しいが、苦手なものに関してはからっきしだ。俺の知っているおかゆと言えば、味も食感もない、糊のような代物だった。
    「ありがとな、これなら食える」
    「そう? 良かった。後でジャオキキにもお礼言わなくちゃね」
    「ああ」
     残念ながら体調のせいで、用意された分を食べ切ることはできなかったが、後で温め直して食べることにした。薬を飲み、アデルからキャラバン内の様子を聞くと、上着を返して再び横になる。
    「キリアンの接種は明後日ね。その頃にはカイトは回復してるんじゃないかしら」
    「だといいがな」
    「余裕だって言ってたけど、あなたが倒れたって聞いて真っ青になってたわよ」
    「はは、そいつは傑作だ」
     その状況を想像して、思わず笑ってしまう。本当にここにいると、どんなにつらいことがあっても、あっという間に楽しさで上書きされていく。
    「……お前がここに来るまで、ちと昔のことを思い出してた」
    「…………」
    「体が悪くなると、心まで弱っちまうからな。つい余計なことを考えちまう」
    「……そうね」
     ふう、とため息をつく。こんな柄にもないことを言ってしまう辺りも、普段とは違う証拠だった。
     アデルは少し考えて、
    「そうだ、だったら本でも読んであげようか」
    「ガキか俺は」
    「じゃあ子守唄」
    「遡ってんじゃねえ」
    「じゃあ何もしないでこうやって見てるわ」
    「勘弁してくれ」
     嫌なわけではないが、どうもそういうのはこっ恥ずかしいし、それこそ柄でもない。
     アデルは、もう、とふくれると、立ち上がって茶碗とスプーンを持って出て行った。かと思うと、今度は大きな本を持って戻ってくる。
    「食べられそうな時に言ってくれれば、おかゆを温め直して、食器も新しいのを持ってくるわ」
     よいしょ、とスツールに座り直し、膝の上で本を開く。なかなか大型のもので、よくは見えなかったが、「ワコクの」という文字だけ視認できた。
    「えっと、確か青い栞のとこ……あった」
     昔話でも読むつもりかと思ったが、彼女は小さく息を吸うと、囁くように歌いだした。
    「……!」
     その歌は――と言いかけて、彼女の優しい表情と声に魅入られてしまう。それは昔ながらの子守唄でも童謡でもなく――いや、厳密には後に童謡の扱いにもなった歌だが、俺の生まれるほんの30年前に作られたものだ。それでも恐らく、ワコクで知らない者はないだろう。
     目を閉じ、紡がれる旋律の心地よい響きに身を委ねる。久しく触れることはなかったが、改めて聴くと、やはり美しい曲だ。
    「……知ってる? この歌」
     一通り歌い終えてから、アデルがちらりとこちらを見て尋ねる。
    「他にも色々調べたんだけど、なんとなく、これが好きだなって思ったの」
    「ああ、よく知ってる。懐かしいな」
    「良かった。カイトならもっと上手く歌えるだろうし、ちょっと恥ずかしいけどね」
    「そんなこたぁねえよ。それに……しがらみも何もない、ただの思い出としてある歌こそ、胸に来るモンがあるのさ」
    「ええ。歌ってどんなに世界が変わろうと、歴史にも心の中にも残り続けるのよね。
     ……この歌はちょっと後ろ向きかな。でも、カイトが悲しい時は、私がいつでも自由な空へ連れてってあげられるから大丈夫ね」
    「…………」
    ――そう。
     解釈によっては未来に希望を見ているように捉えることもできるが、元々これは現実逃避とも取れる、決して明るい内容の歌詞ではない。しかし彼女の歌ったそれは、悲しさを感じさせない――いや、悲しさも全て包み込んで、一緒に前を向いて羽ばたいてくれる――そんな風に感じたのだから、不思議なものだった。
    「じゃあ、次はこれなんかどうかしら。季節はずれだけど、ワコクらしい風情のある、桜の曲」
    「ああ、それは随分昔のだな。100年以上前か」
    「やっぱり? さっきのはワコクにしては珍しいメロディだったものね」
    「元々は箏曲らしいがな。歌詞がつけられたのは後になってからだ」
    「ソウキョク?」
    「ワコクの伝統楽器の曲ってことだ」
     相変わらず頭も体も重いのに、口だけはよく動いてくれる。
    ――いつか、俺が故郷の歌を取り戻せたら。それにどんな意味があったとしても、俺にとって大切なものであることに違いはない。その時はこいつにそばにいてほしいと、心からそう思った。





     ふと目が覚めると、夜中の2時だった。アデルの歌を聴きながら、いつの間にか眠りについていたらしい。
     薬が効いたのか、少し眠れたからか、体が随分と軽くなっている。起き上がると、スツールは元の場所に戻されており、彼女の姿もなかった。若干の寂しさを感じつつ、おかゆの残りを食べようとベッドから降り――
    「……っ!?」
    ――ようとして、下にあった謎の大きな塊を踏みそうになり、とっさに足を引っ込める。
    ――アデル……!?
     恐らく自室から毛布を引っ張り出してきたのだろう、床の上で芋虫のようにくるまって眠っている。
    「まったく……お前が体壊しちまったらどうすんだ」
     起こそうとするが、どうやら熟睡しているらしい。仕方ないかと、毛布ごと彼女を抱き上げようとするが、左腕が痛くて思うように力が入らない。これでは部屋まで運べない。
    「クソ、まいったな。よ……っと!」
     それでもなんとかベッドに乗せ、布団を掛ける。ここで「意外と重いな」などと口走ろうものなら、どんな深い眠りからでも覚醒してきてぶん殴られそうなので、慌てて口をつぐんだ。……まあ重く感じるのは、単に今の俺が万全ではないからというのが大きいだろうが。
     一息つくと、サイドテーブルに置かれていた先程の本を拝借してキッチンへ向かい、おかゆの入った鍋をコンロに乗せて火にかけた。その間に手近な椅子に腰かけ、本を開く。
    「――『ワコクの文化』か」
     やたら分厚いとは思ったが、ワコクの歴史や昔話、民謡や童謡まで幅広く記載されたものだった。栞が挟まれていたり書き込みがあったりするところを見ると、借り物ではなく彼女自身の持ち物らしい。なぜわざわざこんなものを――と思ったが、考えるまでもなかった。
    「……はぁ」
     頭を抱える。別に迷惑なわけではない、重いわけでもない。……ただ、少し、照れくさい。
     コンロの火を消し、食器棚から茶碗とスプーンを出して、再び温まったおかゆをよそう。同じ味のはずなのに、先程よりも美味く感じ、あっという間に平らげてしまった。やはりだいぶ回復したようだ。
    ――あいつが倒れた時のために、こういうのも開発しとくかな。
     今まで敢えて触れてこなかった、アレンジしようと思ったことのないメニュー。山菜や肉を使ったいつもの料理の方が遥かに楽しいのに、なんだか負けたような気がしたのか、それとも純粋に嬉しかったのか、よりにもよって嫌いなおかゆのことを真剣に考える羽目になるとは思わなかった。人生わからないものだ。……だが、悪い気はしない。





    「――さて」
     後片付けを終え、部屋に戻ってきた。
     体調は早ければ朝には回復するだろうし、翌日には任務にも復帰できそうではある。だがその前に、ひとつ大きな問題が残っていたことを思い出した。自分がどこで寝るかだ。
     もし徹夜したり、彼女が目を覚ました時に俺がソファなどで寝ていたりしようものなら、間違いなく説教を食らうし、彼女自身も責任を感じてしまうだろう。かといって今は夜中、他の奴の世話になるわけにもいかない。
     となると――選択肢はひとつ。
    「……ま、仕方ねぇか。今日くらいは許してくれ」
     ソファ用のクッションを枕元に置くと、そっと布団を捲って彼女の隣に潜り込む。些か狭くはあるが、元々少し余裕があったので問題はない。
     彼女の体温で温まったベッドは、少し冷えた体を優しく包み込んだ。
    「ありがとな、アデル」
     手を伸ばし、頭を撫でる。腕にズキンと痛みが走るが、もう、どうということはなかった。
     そして――軽く唇を啄むと、彼女の穏やかな寝顔を目に焼き付け、ゆっくりと瞼を閉じた。
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    hsm_konome

    DONE実話から生まれる千萩シリーズより、イベの悲しみを癒すための自給自足カイハギ。
    いい感じに過ごしてもらえればそれで良かったのに、メインの話(早く書けよ)(細かいとこの設定が定まってないんだよ)に入れてもおかしくならないようにするのが難しくて死んだ。
    アデルちゃんみたいに、都合の悪い話は別の世界線!で行けば良かったんだけど、千萩の設定自体がオリジナルゆえ、それはそれで難しいという……ゲソ
    いつか見た夢「……ふう」
     バレンタイン当日。抱えきれなくなったチョコを宿舎の部屋に持ち帰り、空いていた収納ケースに入れて整え、ソファに寝転がった。今年も食べ切るのが大変そうだ。
     カリンにバレン谷に呼ばれたものの、あの阿鼻叫喚の地獄絵図に巻き込まれるのはごめんだと断り、ギュリアムに残った。だというのに、結果は似たようなものだった。一体どこから嗅ぎつけるのか、女たちはどこからともなく現れて大量のチョコを渡してくる――もとい、襲ってくる。その波の中に双眼鏡やら地図やらが見え隠れするので、複数人で結託して俺を探し出している者もいるようだ。クローナイツのファンも国民も大事ではあるのだが、ここまで来ると、自分でも本業が何なのかわからなくなってしまう。まったく、恐ろしいイベントだ。
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    カイトが弱っている方が好きなので、ひとまずカイトに倒れていただきました(本当に推しなのかと疑われる)

    カイトのおかゆ嫌いの理由は、他にもなるほどと思う予想がありましたが、とりあえず自分が予想した方(まるっきり自分と同じ理由)にしました!
    おかゆとうた 新型ウイルスに対抗するためのワクチンを打った。
     酒をよく飲む俺の担当は予想通りのアクシオンで、摂取の前後は絶対に飲むなと口酸っぱく言われ、適当に流していると監視をつけるだのアルに報告するだのと脅された。さすがにそれは困るので渋々守ったのだが、今のこの状況を考えると、本当に飲まなくて正解だったのかもしれない。怪我以外でこんなに寝込むのは何年ぶりだろうか。
     そう、いわゆる副反応というものだ。1回目は大したことはなかったし、男性は女性に比べて強くないとも聞いていたのだが、この体はやたら免疫力が強いらしく、普段あれだけよく動く体が、今はちっとも言うことを聞いてくれやしない。
    「カイト、生きてるー?」
     ドアをノックする音と、アデルの声。何かあった時に誰かがすぐに部屋へ入れるようにと、鍵をかけることさえ禁じられていた。最初は大袈裟だ、面倒だと思ったものだが、本当に動けなくなった今は、その判断が妥当だったと思い知らされる。……本当に、医者の言うことは聞くものだと反省する。
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