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    ogetaro3

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    オゲです。ぴくしぶの供養作品置き場。オゲが恥ずかしくなって消してしまった作品の墓場である。たまにここにも載らず、人知れず焼却処分されたやつもある。

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    キメツ学園卒業間近の炭治郎と煉獄先生の話。最後どうなったかは皆様の想像にお任せします。
    愛恋奇譚2の時に載せてたやつですね~。懐かしい!!

    黒百合の便箋高校3年生の炭治郎は窓の外を眺めて、ふぅっと小さくため息をついた。

    もう3年生の授業も終わり頃になり、あと数日も経てば自由登校が始まってしまう。そうすれば、もう煉獄先生の授業を受けることもなくなってしまうのかと思うと、酷く寂しい気分になった。
    窓から差し込む光に照らされて、黒板に板書をする煉獄先生の髪がキラキラと光る。本当にきれいだな、といつもうっとりするように眺めてしまって、たまに授業についていけなくなって慌てることもあったなと思い出して、一人心の中で笑った。
    今日の煉獄先生も相変わらずで、もうすぐ皆とお別れという寂しさなんて一切感じさせないようにハキハキと授業を進めていた。黒板に板書する煉獄先生の後ろ姿がもう見られないのかと思うと、胸が締め付けられる思いだ。
    キラキラと輝く髪も、チョークを握る手も、ハキハキ喋る唇も、全てが愛おしいと感じるようになったのは、もうずいぶん前の話だ。

    炭治郎には物事ついた頃から、前世の記憶があった。
    親や弟妹達には前世の記憶はなかった。少し寂しいが、あんな惨殺された記憶なんて、むしろない方がいい、そう思って過ごすことにした。禰豆子まで前世の記憶がなかったのはショックだったが、それでも、人間として横で穏やかに一緒に成長していけるだけで十分だった。
    少し大きくなり、善逸や伊之助達、柱の人達とも再会したのだが、彼らの誰も前世の記憶がなかった。さすがに誰も覚えていないのは堪えた。自分が世界に一人だけ取り残されたような気分になってしまった。前世の記憶は、もしかして自分の妄想なのだろうか?とも思ってしまった。
    煉獄先生にあったのは高校の入学式の時だが、泣いて飛びつきたい欲を抑えるのに必死だった。だって、当然他の人と一緒で、煉獄先生も前世のことなんて覚えていないだろうから。
    俺が入学式で煉獄先生を見て、無限列車での出来事を思い出して吐きそうになって廊下でうずくまっていたのを、煉獄先生が気づいて保健室まで運んでくれた。
    竈門少年?大丈夫か?と聞かれて、笑いながら大丈夫ですと答えるのが精一杯だった。とても辛かったけど、煉獄先生がしばらく保健室で一緒に居てくれたのが幸せだった。心配そうに手を握ってくれている煉獄先生を見ながら、やっぱり俺は煉獄さんの事が好きだったんだなと再確認した。
    こんな出来事があったから煉獄先生は俺の名前は憶えてくれたけど、特にそれ以上何かあるということもなく、高校生活の日々が過ぎていった。煉獄先生にとって俺はただの生徒で、それ以上でも以下でもなかった。でも、日に日に先生への思いが強くなっていって、たまに竈門と呼ばれると、何かあるのではといつも期待してしまっていた。

    ついつい、昔の事を思い出して授業そっちのけになっていたら、こら!竈門!聞いているのか!と煉獄先生に怒られてしまった。ごめんなさい、と小さく謝ると、また先生は黒板に向かって板書をしながら授業を再開した。
    授業終わり、いつも先生の周りは生徒でいっぱいになる。皆、煉獄先生が大好きなので、いつも先生の周りには誰かいて俺が入る余地がない。先生の隣が空くのを待っていたら、善逸と伊之助がやってくるので、いつも煉獄先生と話をする機会がない。とはいえ、別に先生と何か話をするようなこともないと思い、いつも諦めてしまう。

    でも、今日の授業終わり、いつもと違う事が起こった。
    「竈門!社会科準備室に荷物を運ぶのを手伝ってくれないか?」と煉獄先生から言われて、善逸と伊之助にちょっと行ってくる、とだけ言って、慌てて煉獄先生のところに駆け寄った。いつもと比べても、そんなに荷物が多いという訳ではないような気がしたが、先生が俺に手伝って欲しいと言ってくれたのが嬉しくて、資料を入れた紙袋を持って意気揚々と先生の後ろをついて廊下を歩いた。

    たまにこうして煉獄先生に呼ばれて社会科準備室に入っていたのだが、久しぶりに社会科準備室にお邪魔すると、荷物でごちゃごちゃになっていた。
    「先生・・・、部屋が酷いことになっていますね」と俺が言うと、先生は少し困ったような、甘えるような、不思議な顔をして「ははは、最近忙しかったから、掃除をする時間がなかったんだ。よければ片付けを手伝ってもらえないだろうか」と眉毛をへの字にしながら言った。
    もう少しだけ二人きりでここにいられるのかと思い嬉しくなったが、それはあまり顔にださないようにして、黙々と煉獄先生の片付けを手伝った。
    甘ったるい匂いが社会科準備室に広がっている気がしたが、気のせいだろうか?
    部屋が大体片付け終わったところで、先生が机の引き出しを開けながらこっちこっちと俺に向かって小さく手招きをした。不思議に思いながら近寄ると「今日はありがとう。少しだけど、お礼に受け取ってくれ」と小さな紙袋を渡された。煉獄先生から在学中に何かもらえると思っていなかったので、その場で飛び上がりそうになった。

    「いいんですか!?」
    「君には今まで何回も部屋の掃除を手伝ってもらってしまったからな。そのお礼だ」
    「ありがとうございます!」
    「うむ、学生生活もあともう少しだな。学校に来なくなっても、自主学習頑張るようにな」
    「・・・、はい、ありがとうございます」

    卒業するともう会えなくなると思うと胸が苦しくなって、かなり沈んだ顔をしていたのだろう。先生が頭をポンポンと撫でてくれた。

    「大丈夫だ、君なら卒業しても元気にやっていけるさ」

    違うんです、そうじゃない、あなたと別れるのが辛くて仕方ないんです。そう思いながらも、一言だけ、ありがとうございますとお礼を言って社会科準備室を出た。

    家に帰りもらった紙袋を開けると、そこには高級感あふれる朱色の塗装に金色のクリップが付いたボールペンと紙切れが入っていた。

    (少し早いが、君にだけ卒業のお祝いを贈ろう。学生生活もあと少しだな、頑張れ)

    君にだけ、と書かれてあることに、嬉しくてはしゃぎだしそうになった。あの先生が俺にだけ特別にくれたんだ、もう一生大切に箱にしまって保管したいけど、持ち歩いて少しでも煉獄先生と一緒に居る気分にもなりたいな、などと思いながら、嬉しくてペンを持ったまま床でころころと転がってしまった。

    この出来事のあとは、特に先生と何かあるということもなく、自由登校期間に入ってしまった。
    あの日以来、先生と二人きりで会うということもなく、一人で部屋にいると段々と寂しい気持ちになってきてしまった。次に先生に会うのは卒業式ぐらいかな、と思うと胸が締め付けられる思いだった。寂しい、苦しい、煉獄先生に会いたい、家で一人そんな風に思いながらも頑張って勉強を続けた。

    この日も勉強をしようと使っているダイニングテーブルを見ると、机の上に見慣れない黒百合の花が書かれた便箋が置かれていた。誰がこんなところに便箋なんて置いたのだろうか?家族の誰もこんな便箋使いそうにないのにな、と思いながらその便箋を手に取った。
    その時、ふと、最後まで煉獄先生に言うつもりはなかったのだが、好きという気持ちをこの便箋に書いて伝えてしまおうかな、などと思ってしまった。
    先生に貰ったペンで、黒百合の便箋に(煉獄先生のことが好きでした)とだけ書いて、それを折って鞄の中にしまった。


    ついに卒業の日がきて、煉獄先生とお別れする時がきた。
    卒業式が終わり、まだクラスの皆が名残惜しくて外で集まって話をする中、一人抜け出して社会科準備室に向かった。
    社会科準備室にこっそりと忍び込んだが、当然、煉獄先生はいなかった。
    先生の机の上に本が積まれてあったので、それの間に黒百合の便箋を少しだけ挟んで入れた。目立たないように、それでも先生が気づく程度に本の間に挟み込んで、満足してその場を去った。この一方通行の恋の思いは、最後まで一方通行のまま終わらせないといけない。だって、こんな感情を先生にぶつけても、先生が困るだけだから。

    こうして、俺は煉獄先生への思いに蓋をして、皆が集まっている場所に戻ろうと社会科準備室を後にした。

    ***

    三年生達がもうじき自由登校になるころ、煉獄は相変わらずいつもと変わらないように授業を行っていた。

    もうしばらくすると、この子達に授業をすることもなくなるのかと思うと、とても寂しい気持ちになったがそれは毎年のこと。滞りなく最後まで授業を行うことが今の責務だと思い、授業を続けた。でも、今年は一つだけいつもと違うところがあった。
    窓際に座っている、先ほどから窓の外ばかり見て集中していない様子の竈門炭治郎が卒業してしまうというところだ。窓の外をどこか切なげに眺めている姿をとても愛おしくは思うが、授業を聞いていないのはいただけない。俺は、こら!竈門!聞いているのか!と少年を少しだけ怒って、また黒板に戻った。

    煉獄には物事ついた頃から、前世の記憶があった。
    親や弟には前世の記憶はなかった。とても寂しいことだが、母上も父上も弟も元気で過ごしてくれている、それだけで俺には十分だった。
    少し大きくなり、柱だった仲間とも再会したのだが、彼らの誰も前世の記憶がなかった。これも仕方のない事だと割りきることにした。覚えていなくても、話をすれば彼らは彼らのままだったから、とても嬉しかった。ただ、誰とも前世の話が出来ない事が少しだけ、心に穴が開いたような気分で寒かった。
    ある日、あの無限列車で一緒だった竈門少年が高校に入学してくることがわかり、あまりの嬉しさに舞い上がり、入学式が楽しみで仕方なかった。

    入学式が終わったあと、ついつい俺は少年を探して廊下をうろついてしまっていた。彼は当然前世の記憶なんて残っていないだろうが、どうしても彼に会って頭を撫でてあげたかった。前世で彼に出来なかった事を、なるべくしてあげたいと思ったのだ。
    探し回ってようやく見つけた少年は、何故か廊下にうずくまっていた。慌てて駆け寄ると、顔は真っ青になりがたがたと震えていたので、そのまま抱き上げて保健室まで連れて行った。
    保健室のベッドに寝かせて、竈門少年?大丈夫か?と聞いたら、少年は苦笑いしながら、大丈夫です、と答えてくれたが明らかに大丈夫そうではなかった。寒そうに震える少年の手をそっと握ってあげると、安心したかのように少年は眠ってしまった。
    自分の担当する授業が始まるまで、少しでも少年のそばにいてあげたくて、ずっと横に座って手を握ってあげた。このとき、俺はこの少年のことが好きだということに初めて気が付いた。

    この出来事以来、竈門少年になんとか近づきたくて教師としてできる範囲で色々と試したが、全く見向きもされなかった。実は俺は竈門少年に嫌われているんじゃないだろうかと不安になることもあったが、たまに名前を呼ぶと嬉しそうにそばに寄ってきてくれるのでその姿をみて少しほっとしていた。
    どうしても少年と二人きりになりたくて、社会科準備室の中をわざと片付けをしないまま放置して、汚くなってきたら竈門少年を呼んでは一緒に片付けをしてもらっていた。
    「先生、片付け苦手なんですね」と言いながらも、どこか嬉しそうに少年が片付けしてくれる姿をみるのが好きだった。
    教師として、毎度生徒を呼びつけては掃除させるのもいかがなものかとも思ったが、これが二人きりになれる唯一の方法だった。竈門少年は他の生徒から頼られていて、いつも誰かと一緒にいる。少年の隣に行きたい、一緒にいたいと思っていても、普段は一緒にいられない。なら、せめてここでは、俺だけの少年にしたかった。こんな思いを生徒に抱くのはいけない事なのだろうが、少年の事が好きで好きでたまらなかった。

    この日の授業終わり、少年を少しわざとらしく呼びだして、荷物を運ぶのを手伝ってもらった。別に手伝ってもらわなくても持っていける程度の荷物だったが、今日は他の生徒に黙って少年に渡したいものがあった。
    相変わらず社会科準備室を整理整頓していなかったので、竈門少年が困った顔をして「先生・・・、部屋が酷いことになっていますね」と言うので「ははは、最近忙しかったから、掃除をする時間がなかったんだ。よければ片付けを手伝ってもらえないだろうか」と俺が言うと、少年は黙って片付けをし始めた。黙って片付けをする少年の後ろ姿が本当に可愛くて、愛おしくて、ついつい教師としての一線を踏み越えそうになるのを必死に抑えた。
    掃除も終わり、この日のために準備していたものを少年に渡した。もう彼と二人きりで会う機会もないだろうから、せめて、俺の事を忘れないでほしいと思い、朱色の塗装に金色のクリップがついたボールペンを渡した。
    少年が別れ際、悲しそうな顔をしたので頭をポンポンと撫でてあげた。

    「大丈夫だ、君なら卒業しても元気にやっていけるさ」

    違う、本当はこんな事を言いたいんじゃない、本当は卒業しても少年とずっと会いたい、好きだと言ってしまいたい。そう思いながらも、そんな事を言えば竈門少年が困ってしまうのがわかっていたので決して言わなかった。
    ありがとうございますと一言だけこちらに向かってお礼を言った少年は、社会科準備室を出て行ってしまった。それを俺は唇を噛みしめて送り出した。

    あの日以来、少年と会わないまま卒業式になってしまった。卒業式が終わり、生徒たちが自分の周りに集まってきたので対応していたが、竈門少年はいつまで経っても現れなかった。
    やっぱり俺は竈門少年に嫌われていたのか?と不安になり、他の生徒に居場所を聞いたが、卒業式のあとからしばらく見かけていないと言われた。
    まさか、卒業式が終わったあとすぐに帰ってしまったのだろうか、俺に挨拶すらしてくれなかったな、と落ち込みながらふらふらと社会科準備室に戻った。
    戻って机の上にジャケットを置くと、机の上に積んでいた本の間に紙が挟まっているのが目に留まった。
    慌てて引き抜いて中を確認すると、黒百合の便箋に(煉獄先生のことが好きでした)とだけ書いてあった。

    名前が書かれていなくても、字体だけで誰が書いたものか、すぐにわかった。
    彼の本心がわかった今、(好きでした)の過去形で終わらせる気はない。

    煉獄はその便箋を掴んだまま、少年を探しに再び社会科準備室の外に飛び出していくのだった。
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