どえす(って書いてあった)「やっとかよ」
繋がった部屋のドアを、タイジュがゆっくりと押し開ける。
「……ハナビくん、あの……ほ、本当に……するんですか……?」
「しかねぇだろ」
吐き捨てるように言うと、はめ殺しになっている一面ガラス張りの窓へと顔を向けた。キングサイズのベッドに腰掛け、ハナビは並べられた真っ赤なクッションをひとつポンと放る。真っ白な絨毯が敷かれた床に転がるそれを目で追い、タイジュはドアを後ろ手で閉めた。
「でも……」
「どうしたって見られてんだからヤるしかないんじゃねえの?」
ハナビはバスローブの腰紐に右手の親指を差し込み、ぐいっと引いてみる。緩く結ばれていた腰紐はハナビの正面でくるりと解け、ベッドへと落ちる。
「つーか、タイジュも耐えられなくなったから来たんだろ?」
ハナビの視線の先には前で合わせたバスローブを押し上げるタイジュのそれがある。
「……それは……そうですが……」
「もうガキじゃねえんだし、ハラくくれよ」
ハナビは顎をしゃくり、タイジュをベッドへと促す。
「正直、タイジュの快い顔とか声とか……ぜってぇ知られたくなかったけど……条件にその選択肢はなかったろ?」
鋭い眼を向けた先は部屋の至る所に設置された小型カメラだった。ご丁寧に小さなマイクまで付いている。
「オレ以外の誰かに触らせるくらいなら、こんな部屋だとしてもオレが抱いてやる」
部屋中を見回したあと、タイジュに狙いを定める。目を見開いたタイジュはごくりと喉を鳴らす。
「……ほら、タイジュ。ここからはいつも通りにな」
ベッドに腰掛けたハナビは右手を差し伸べる。「はい」と小さく返事をするとタイジュはハナビの元へと歩を進め、ベッドに乗るとハナビの手に左手を重ねた。その手を掴み、タイジュを引き寄せる。
「何本飲んだ」
「……三本……です」
「同じだ」
ハナビは、ふっ、と笑うと据わった目をタイジュに見せた。
「あんま酷いことはしたくねえけど……ちょっとブレーキかけらんねえぜ」
「……大丈夫、です」
「あ?」
「大丈夫……ですから」
「……そ?」
左頬を引き攣らせて歯を見せるハナビの目は笑っていない。ぐるぐると巡る身体の血流が速く、暑い。キスすらしていないのにもう繋がりたくて仕方がない。
「……タイジュ」
低く、響く。
ハナビの喉仏が上下し、いよいよバスローブを脱ぎ去る時なのだとタイジュの眉尻が下がる。