しまった、と思った時にはもう遅かった。父や兄の後ろ姿も、従者たちも、どこにも見当たらなかったのだ。
はぐれた。迷子だ!
焦りながら駆け出す。走れば追いつくかもしれない。海が物珍しくて、気になるものを見ながらのんびり歩いていたから置いていかれたのだ。だから、急げばきっとすぐ見つかる、そう思った。息が上がってきた。結構走った気がする。
ふと立ち止まると、そこは薄暗く湿った裏路地だった。
「あ、」
またやってしまったのだ。考えなしに行動するなと父にあれだけこっぴどく叱られてきたのに。だって、まっすぐ走ってきただけなのに、こんなところに着くなんて思わなかったから、と、脳内の父に言い訳する。
「……なんだ、お前」
後ろから声がした。驚いて振り返ると、澄んだ海のような髪色の男の子がそこに立っていた。綺麗だなぁ。いや、そんなことを考えている場合ではなくて。
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