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    ろくでもない

    @kabesaido

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    雨クリ 雨彦誕要素とハロウィン要素少しあり プロデューサーがいます 山村が巻き込まれていて可哀想です

    疲れた雨彦さんが暴走気味の話10月31日
    葛之葉雨彦の誕生日である。しかし、誕生日を迎える本人はもうそんな時期かと思うくらいで子供のように浮かれる事も無い。またいくら目出度い日であろうとも仕事が楽になるなんて都合のいいことは起こらないのだ。
    プロデューサーと雨彦が2人揃って死んだ目をしながら事務所の扉を開いた。時計を見るともう11時を過ぎようとしている。プロデューサーが組んだスケジュール通りに働いていたはずなのに行く先々でトラブルや予期せぬ時間の延長などが重なりこんな時間になってしまった。また雨彦は個人の見過ごせない掃除なども合間に行っていた為流石に体に疲労が響いている様だ。ふぅー…とため息をついた雨彦にプロデューサーは「お疲れ様でした。」と笑いかける。
    「プロデューサーこそお疲れさん。今日は一段と忙しない1日だったな。」
    「そう…ですね…今日は…葛之葉さんに無理をさせてしまうような日程になってしまい…すいませんでした……もう帰って…貰って大丈夫です…明日は休日にしますので…しっかりと休んでもらって……」
    プロデューサーが目をシパシパさせながらいつもより幾らかゆったりとした口調で話す。どうやら疲労と眠気で限界らしいのが見て取れる。俺の仕事の付き添い中電話の対応をしたり途中で抜けて何処か別の場所へ行ったりと走り回っていた様なので無理もない。
    「お前さん大丈夫かい?もう少ししたら日付を超えるが1人で帰れるか?」
    目の前でこれだけフラフラになっているのを見てしまっては心配してしまう。
    「1人で…帰ります……けど少し仮眠してから…帰ろうと思います…すみません……横に…なってもいいですか……」
    今にも倒れそうな足取りでソファーに向かうプロデューサー。本当に今日はお互い大変な1日だった。
    「仮眠はいいが風邪はひかないようにな。俺は一足先に帰るよ。お疲れ様。プロデューサー。」
    「はい……ありがとうございます……お疲れ様です…………あっ!葛之葉さん!」
    直ぐにでも眠りに落ちそうだったプロデューサーに呼びかけられ少しビクッとしてしまった。
    「なんだい急に、何か忘れてる事でもあったか?」
    「あ……違くて…あの……お誕生日……おめでとうございます………と…最後に言いたくて……」
    はは…と目を擦りながら笑顔で祝いの言葉をくれるプロデューサー。朝も祝ってくれたじゃないか。律儀な奴だ。
    「あぁ、わざわざありがとう。嬉しいよ。」
    微笑みながら返答をし、それを聞き届けたプロデューサーは今度こそ倒れすぐ寝息を立てて寝てしまった。
    さて…と伸びをしながら帰る支度をしようとしたらまた事務所の扉が開いた。振り返ってみるとそこに居たのは古論クリスだった。
    こちらの顔を見るとクリスははっと目を開き
    「お疲れ様です!雨彦!」
    とニコリ笑う。
    笑顔が眩しい。
    「どうしたんだ古論、もうお前さんの仕事はとっくに終わってる時間だろう?何故まだ居るんだ?」
    「あの…それは……えっと……あっ!そうです!今コンビニで温かい飲み物買ってきたので少し休憩しませんか?」
    と、右手に持ったコンビニの袋を広げた。温かいコーヒーや紅茶などが入っていた。こちらの表情をおずおずと伺いながら待っている古論を見て断る訳が無く少し休憩することにした。
    「コーヒーと紅茶、どちらがいいです?」
    「コーヒーがいいな。疲れで上手く頭が回ってないんだ。少しでもスッキリさせたい。」
    と雨彦は額を拳でグリグリさせながらふぅ、とため息を着く。
    「す、すみません。無理に引き止めるような形になってしまって……あの、やはりもう帰る支度を…」
    「あ、すまん。違うんだ。むしろ今日朝しか古論や北村と会話出来ていなかったから今こうやって話せるのは嬉しい。わざわざ寒い中飲み物も買ってきてくれたんだろ?」
    古論は真面目なので言葉の意味を深く捉えてしまい考え込む事が多いからあまり心配させるような言い方はしないようにしていたが痛恨のミス。やはり頭回ってないな。
    「コーヒー美味しいよ。少し気が引き締まった。」
    「良かったです。後もうひとつ、ささやかながらな贈り物で大変申し訳ないのですが……」
    と後ろの袋から取り出してきたものは小さなショートケーキだった。
    「ケーキ……?…………あ、俺の…」
    「はい。お誕生日おめでとうございます雨彦。日付が変わる前に個人的にどうしても伝えたかったのです。」
    「だからこんな遅くまで事務所に居たのか…俺の誕生日を祝うためにか………」
    何時に帰ってくるかも分からない中わざわざ準備して待っていてくれたのか。祝いの言葉を伝えようとしてくれていたのか。いじらしい事をしてくれる。
    一連の行動に胸を打たれじっとしていたら古論が不思議そうにまたこちらの顔を覗いてから何かを思いついたようで急いでポケットをゴソゴソし始めた。
    「まだ何かあるのか?」
    「はい、今日はハロウィンだからかゆく先々で小さなお菓子をもらいました!甘いものは疲労回復効果があると言いますし…お疲れの雨彦に是非貰っていただきたく!」
    そう言ってズボンの両ポケットから飴玉やビスケットなどを沢山取り出して雨彦の両手に乗せてきた。
    触れる両手、小さなお菓子、目の前には好きな人の可愛らしい笑顔。古論から祝われた辺りから雨彦の思考は回らなくなっていたが今の行動で雨彦の思考は停止した。そして本能の赴くままクリスに抱きついた。
    「ん!?雨彦…!?どうされましたか!?体調が優れませんか!?雨彦!!」
    雨彦らしくない急な行動に焦りながら捩るからだを抑えるよう強く抱き締め溢れ出る思いをそのまま伝える。
    「古論、嬉しい。凄く嬉しい。お前さんが向ける笑顔が眩しくて可愛い。こんな遅くまで俺を待っていてくた事が嬉しい。ありがとう。なぁ、古論 好きだ。」
    いつもは素直に好意を伝えたりなどしてこない葛之葉雨彦からの唐突な熱烈な告白や強い抱擁にへ…?え!?と焦りを隠せないクリス
    「雨彦…!好意を伝えてくださるのは嬉しいですが…っ!耳元はくすぐったいです……あと……あのっ」
    「古論はどうなんだ?俺の事好きかい?教えてくれ…」
    「す…好きです…好きですけど……!!少し待って………!」
    「あんなに可愛らしいことをしてくれたってのに今度は抑えるのかい?明日俺もオフになったんだ…このまま朝までゆっくり2人で過ごそう…いいだろ?古論……なぁ…」
    どんどん思いが湧き上がってきて変なテンションに入ってしまい遂に古論を押し倒しそうになった時、古論が叫んだ
    「雨彦……っ!ここは!事務所で!!山村さんがいらっしゃいます!!!!!」
    ん?山村?
    動きを止め古論の顔を見る。古論は真っ赤になりながら俺の後ろを指さすので振り返るとバインダーで顔を隠しながら棒立ちしている315プロの事務員 山村賢が居た。
    「…すいません…本当にすいません……お2人の時間をお邪魔してしまって………あの……出ていこうと…したんですけど……タイミングが無くて………」
    静まり返った空間にぽつりぽつりと話し始めた山村の言葉が響く。バインダーで顔は隠しているが持つ手が真っ赤になっている。仕事終わりのアイドルとプロデューサーの為に待機していたのであろう仕事熱心な事務員に年甲斐もなく恋人に理性無く言いよっている姿を見せつけてしまった事を止まっていた脳がやっと理解した。
    再度静まり返ってしまった空間。何か、喋らなければと必死で言葉を考えていたらふにゃりとした気の抜けた声が聞こえてきた。
    「おはようございまぁす……あぁ寝た…あれ葛之葉さんまだいらっしゃったんですか…?ん?古論さんも……?えっ賢君なんでバインダーで顔隠してるの?どうしたの皆……」
    状況が飲み込めていないプロデューサーは変な空気の3人に向かいもう遅いから事務所閉めるんで準備お願いしますーと声をかけ支度し始めた。固まった3人も各々無言で支度に取り掛かった。

    プロデューサーと山村に別れの挨拶をした後雨彦はすぐクリスに向き合いすまん。と謝罪した。
    「周りを把握せずに強引に迫ってしまった…古論は教えてくれようとしてたんだな……変に…浮かれていたよ…。」
    格好がつかない。古論の顔が見れない。幻滅されているだろうか。雨彦なんて嫌いですなんて言われた日には暫く立ち直れんかもしれん…と様々なことを考えていたらふふ、と笑われた。
    「雨彦も熱く迫ってくる事があるのが予想外で…んふふ…その後山村さんを見つけた後の動揺した雨彦も新鮮で……ふふ……思い出したら…」
    クスクス笑う古論。
    「笑い話になったなら良かったよ。事務所ではもうあんな失態はしないよう肝に銘じておく。」
    「あ、もう事務所でハグはして下さらないのですか?口説くのも?私はスキンシップ、大歓迎です!」
    「からかってくれるな…あんなのもう一度山村が見たら今度こそ倒れちまうよ……。」
    「残念です。ですが雨彦に求められた時恥ずかしかったですけどとっても嬉しかったんです。私も同じように貴方を求めたい。貴方の思いを受け止めたい。なので2人の時はもう一度、先程の雨彦を見せていただけませんか?」
    深夜の街頭の灯りの下は古論の赤い顔がよく見えた。白い息を吐きながら真っ直ぐこちらを見据える目に吸い込まれそうだ。
    「……明日はお互いオフだ。古論さえ良ければ今からの時間俺にくれないか。あまり格好悪い姿を晒すのは躊躇うが、恋人が見たいと言うなら存分に見せようじゃないか。」
    「! 是非ご一緒させてください!熱烈な雨彦、楽しみです!!」
    楽しそうに浮かれる古論をどうしてやろうかと半ばヤケクソになりながら今後の予定を考え雨彦は車に乗り込むのだった。
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