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    seeds_season

    @seeds_season

    ただいまmhyk小説(メインはミス晶♂・全年齢)がしがし書いてます

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    seeds_season

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    昨日ひとさまにぶん投げたミス晶♂妄想を、熱いうちに叩いて形にしました!
    肌寒い季節の一コマ。距離感バグはいつものことなので、周囲も段々気にしなくなってきている。

    肌寒い季節に 無人の玄関ホールは、いつもに増して冷え切っていた。
     色硝子の嵌まった窓から差し込む光に、細かな埃がキラキラと舞っている。まるで細氷のようだが、あれは見たものの魂までも凍り付かせる、過酷な自然現象だ。この魔法舎にはおよそ似つかわしくない。
     冷たく乾いた空気に、思わずくしゃみが漏れる。
     小さく鼻をすすったミスラは、それでも防寒魔法をかけるほどではないと判断して、まくり上げている裾から覗く肌をさすった。

     緩やかに、密やかに、そして冷酷なまでに刻々と、季節は移り変わっていって。
     朝晩の冷え込みが顕著になってきたからか、いつもの格好では肌寒く感じるようになってきた。
     そうはいっても、魔法舎のある中央の国は比較的温暖で、都市部には雪が積もることすら少ない。だからこそ北の魔法使い達に厚着をするなどという発想はなく、ミスラもいつも通りの服装で過ごしている。
    (誰も来ないな……)
     今日は出発前に打ち合わせをするというから、わざわざ足を運んでやったのに。玄関ホールはもぬけの殻で、掃除の際にカナリアが忘れていったらしき箒だけが、階段脇にちょこんと佇んでいる。
    (……部屋に戻るか)
     そもそも気乗りする依頼でもなかったし、ミスラが同行せずとも問題ない程度の内容だった。だったら、面倒なことはやる気のある魔法使いに任せて、自分は作りかけの呪具でも弄っていた方が、よほど有意義な時間を過ごせる。あとで賢者や双子から文句を言われるかもしれないが、自分を待たせる方が悪いのだ。
     くるりと踵を返して歩き出そうとしたミスラは、ふと近づいてくる足音に気づいて、ぴたりと足を止めた。
    「お、お待たせしましたミスラ!」
     バタンと扉を開けて姿を現したのは晶で、その後ろからは東の魔法使い達がぞろぞろとやってくる。どうやらここに来る途中で合流して、一緒にやってきたようだ。
    「君が一番乗りなんて珍しいな」
     驚いたように眼鏡を押し上げるファウストに、ミスラはどうでもいいと言わんばかりに肩をすくめてみせた。
    「誰も来ないから、もう帰ろうかと思ったところです」
    「わー! 帰らないでください! すいません、食堂でばったり皆さんと会って、話し込んでいたら遅くなってしまって」
     慌ててミスラの腕を取り、弁明の言葉を紡ぐ晶。その必死な顔が面白かったから、それに免じて部屋に戻るのは止めにしてやった。
    「仕方ないですね。さっさと打ち合わせとやらを済ませて、とっとと行きましょう」
    「はい! ありがとうございます。それでは、今日の依頼について改めて説明しますね」
     手にしていた資料をめくり、依頼内容について語り出す晶。向かう先は東の国の北部――つまりは北の国にほど近い寒村で、だからこそ今回は土地勘のある東の魔法使い達に加え、万が一の場合を想定して寒冷地での戦闘に慣れているミスラが選出されていた。
    「村の近くで不気味な遠吠えが聞こえるとのことで――伝説の魔獣、雪狼の可能性が――」
     つらつらと説明を続ける晶の声を聞いていると、どうにも眠くなってしまう。ふわあ、と大きく欠伸をした途端、乾いた空気に刺激されて、再びくしゃみが飛び出した。
    (寒いな……)
     鼻を擦りながら隣にいた晶を引き寄せ、その小さな背中を抱きしめるようにして腕を回す。ついでに頭の上に顎を乗せると、実にちょうどいい高さだ。
    (相変わらず、暖かい)
     子供のような体温、と表現すると「大人ですから!」と反論されるけれど、比較的体温の低いミスラからすれば、晶はまるで湯たんぽや懐炉のようにほかほかと温かくて、触れた場所からじんわりと伝わってくる熱さは何よりも心地がいい。
    (……眠くなってきたな)
    「ミスラ、重いですよ」
     何やら抗議の声が聞こえてきたが、面倒なので無視をする。そのままぬくぬくと暖まっているうちに、いつの間にか晶の説明は終わったようだ。
    「……以上になります。それじゃあ早速行きましょうか。ミスラ、お願いできますか」
    「はあ。どこへ繋げばいいんでしたっけ」
    「たった今、説明したばっかりじゃないですか!」
    「聞いてませんでした」
    「もおー!」

     ぎゃあぎゃあと言い合う二人を前に、ネロとファウストはそっと顔を見合わせた。
    (なあ、先生……。さっきのあれ……)
    (気にするな。考えるだけ無駄だ)
     言いたいことは何となく伝わったようで、同時に「はあ……」と溜息を吐く二人に、シノがきょとんと小首を傾げる。
    「どうしたんだ、二人とも? 行く前から疲れてるのか」
    「シノ! 失礼だろう。でも先生、ネロ、何か気になる点がありましたか?」
    「いやー、気になる点っていうか……」
     むしろ、あんな様子を見せつけられて何で平静でいられるのか。
     そもそも、あの状態でなぜ、何事もなく打ち合わせを続けられるのか。
     色々と言いたいことがありそうなネロの肩にぽん、と手を乗せ、小さく首を振るファウスト。
    「何でもないよ。大丈夫だ。万が一のことがあっても、ミスラが同行してくれるんだ。心配はないだろう」
    「ふん。俺一人だって十分だけどな」
     途端に対抗心を燃やし始めるシノに、「またお前はそういうことを」とぼやくヒースクリフ。
     二人がお決まりの小競り合いを始める前に、ようやく場所を把握したらしいミスラが短く呪文を唱え、六人の前に《空間の扉》が出現する。
     躊躇なくそのドアノブに手をかけたミスラは、「さあ行きますよ」と扉を開けた。
     途端に吹き込んでくる風雪に、ひえっと悲鳴を上げる晶。
    「吹雪いてる!? まだそんな季節じゃないはずなのに……」
    「ははあ。こりゃまじで、伝説の雪狼とやらが一暴れしてそうだな」
    「感心している場合か! 防寒魔法をかけなさい。動けなくなるぞ!」
     ファウストの言葉で、慌てて呪文を唱え出す魔法使い達。一方、すでに防寒魔法を発動させていたミスラは、暖かさにほっこりしている晶の肩を抱き寄せると、その耳元に囁いた。
    「俺から離れないで。あなた弱いから、すぐに凍死しますよ」
    「ひっ……! 絶対離れません!」
     腕にしがみついてくる晶の、その必死さと暖かさに、満足げな笑みを浮かべる。
     そうしてミスラは扉をぐいと開け放つと、白い雪原に足を踏み出した。
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