アイスクリーム「慕情」
自室での執務中、突然背後から聞こえた声に、慕情は筆を止めて溜息をついた。
「風信、なんだ。今忙しいのだが」
「ちょっと聞きたい事があるんだが」
「何だ? 用なら通霊で言えばいいだろう? 通霊では言えないようなことか?」
背を向けたまま慕情が尋ねるが、答えが返って来ない。
仕方なく振り返ると、部屋の入口に、風信が目を泳がせながら立っていた。
「なんだ。さっさと言え。私はお前と違って暇ではない」
いつもならこんな売り言葉でも食いついてくるところだが、今日は違うらしい。
「通霊で言えないような大事か? いったい……」
慕情の表情が怪訝になる。
風信は意を決したように口を開いた。
「ア……アイスクリームというのを知ってるか?!」
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