noa/ノア
DOODLE[FengQing✈] 風信&慕情パイロットAU。バレンタイン風南のおまけ後日談。根回しのお返しを要求される風信機長。
夜、家に帰った風信は、コートを脱ぐのも早々に鞄のチャックに手を伸ばした。
いつもは、その日のレシートやら買った菓子やらすべて入れっぱなしのまま鞄を開けずに床に置いてそのままだが今日は違った。
鞄から箱を取り出し、ソファに腰かけて見つめる。口元が緩む。
ロンドンに彗星のごとく現れた若いショコラティエ。ベルギー仕込みの確かな技術とユニークで斬新なアイデアの融合——。ネットの記事の特集で読んでからずっと気になっていたそのチョコレートが今、自分の手の中にある。だが、そのショコラティエには悪いが、風信の心を今躍らせているのはその中身だけではない。
南風が自分に買ってきてくれたチョコレート。蓋を開けると甘い香りが誘うが、食べるのが勿体なくて蓋を戻す。しばらくその表面をぼんやりと指で撫でたあと、風信はチェストの上にそっと飾るようにその箱を置いた。
2193いつもは、その日のレシートやら買った菓子やらすべて入れっぱなしのまま鞄を開けずに床に置いてそのままだが今日は違った。
鞄から箱を取り出し、ソファに腰かけて見つめる。口元が緩む。
ロンドンに彗星のごとく現れた若いショコラティエ。ベルギー仕込みの確かな技術とユニークで斬新なアイデアの融合——。ネットの記事の特集で読んでからずっと気になっていたそのチョコレートが今、自分の手の中にある。だが、そのショコラティエには悪いが、風信の心を今躍らせているのはその中身だけではない。
南風が自分に買ってきてくれたチョコレート。蓋を開けると甘い香りが誘うが、食べるのが勿体なくて蓋を戻す。しばらくその表面をぼんやりと指で撫でたあと、風信はチェストの上にそっと飾るようにその箱を置いた。
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DONE[FengQing] 慕情なきあと、ある鬼を倒しにいく風信のお話。※原作軸ですが、原作とは連動していません。
「将軍……! もう無理です!」
悲痛な声に風信は振り返った。南陽殿の優秀な神官たちが地面に倒れ込んでいる。意識がない仲間を背負って自らも体を引きずるように後ずさる者。刀でなんとか体を支えている者。どの神官の顔も恐怖と諦めに歪んでいた。
風信は前を見ずに一気に二本の矢を射ながら叫んだ。
「わかった! 一旦、上天庭へ戻って援軍を——」
放たれた矢を受けて、鬼が叫び声を上げる。
「逃げるぞ!」神官の一人が風信の後ろを指さした。風信はくるりと振り向くともう一度矢をつがえながら後ろへ叫んだ。
「お前たちは戻れ!」
「将軍!」
神官たちの叫び声を置いて、風信はひらりと空中へ飛び上がった。
逃がしてなるものか。
こいつは俺の手で仕留めるのだ。
6656悲痛な声に風信は振り返った。南陽殿の優秀な神官たちが地面に倒れ込んでいる。意識がない仲間を背負って自らも体を引きずるように後ずさる者。刀でなんとか体を支えている者。どの神官の顔も恐怖と諦めに歪んでいた。
風信は前を見ずに一気に二本の矢を射ながら叫んだ。
「わかった! 一旦、上天庭へ戻って援軍を——」
放たれた矢を受けて、鬼が叫び声を上げる。
「逃げるぞ!」神官の一人が風信の後ろを指さした。風信はくるりと振り向くともう一度矢をつがえながら後ろへ叫んだ。
「お前たちは戻れ!」
「将軍!」
神官たちの叫び声を置いて、風信はひらりと空中へ飛び上がった。
逃がしてなるものか。
こいつは俺の手で仕留めるのだ。
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DOODLE[FengQing✈️]パイロットAUどうしても空きがなくて仕方なく玄真航空に乗ったら、見事に慕情の便だった風信機長。
「風信様ですね。お荷物はこちらお一つでしょうか?」
「は、はいっ……」
グラウンドスタッフに頓狂な声で答えてしまい、風信は思わず咳払いでごまかした。
何も悪いことなどしていないのに、なぜ空港カウンターでこんな犯罪者のようにどぎまぎしないといけないのだ。見ないようにしないようにしようとすればするほど目に入ってくるロゴから目を逸らす。いつもの南陽航空のロゴではなく目の前にあるのは——ライバルたる玄真航空のロゴ。
ツイていなかったとしか言いようがない。休暇先から急に呼び出されたものの、この休暇シーズン、直前で空いている便などない。同僚に頼み込んでみたものの、どうあがいても、南陽航空も他の航空会社も空きはなかった。ただひとつ奇跡的に空いていたのが、なぜか玄真航空だったというわけだ。
2749「は、はいっ……」
グラウンドスタッフに頓狂な声で答えてしまい、風信は思わず咳払いでごまかした。
何も悪いことなどしていないのに、なぜ空港カウンターでこんな犯罪者のようにどぎまぎしないといけないのだ。見ないようにしないようにしようとすればするほど目に入ってくるロゴから目を逸らす。いつもの南陽航空のロゴではなく目の前にあるのは——ライバルたる玄真航空のロゴ。
ツイていなかったとしか言いようがない。休暇先から急に呼び出されたものの、この休暇シーズン、直前で空いている便などない。同僚に頼み込んでみたものの、どうあがいても、南陽航空も他の航空会社も空きはなかった。ただひとつ奇跡的に空いていたのが、なぜか玄真航空だったというわけだ。
noa/ノア
DONE[FengQing] 現代で同棲しているフォンチンAUです(神官ではなく一般人です)。ある日、突然姿を消した慕情。
※全年齢、ネタバレなし
いなくなった慕情 家の中が、やけに静かだ。
日曜の朝、目を覚ました風信はむくりと体を起こした。
隣に慕情がいないのは珍しくない。たいてい彼のほうが早起きだ。だが、耳をすませても、何の物音もせず、人の気配が感じられない。
風信はジーンズを履きながら、寝室から顔を出した。やはり、しんと静まり返っている。
まあ、買い物かなにかに出かけているのだろう。特に気に留めず、風信は冷蔵庫から出した牛乳を口に流し込んだ。
だが、昼を過ぎて、夕方になり、陽が沈んでも慕情は帰ってこなかった。
メッセージを送るが、既読の表示はつかない。
今日は何か予定があっただろうか。部屋にかけてあるカレンダーを見るが、二人ともあまり書き込まないし、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードには、買い足すもののメモが残っているだけだ。
4449日曜の朝、目を覚ました風信はむくりと体を起こした。
隣に慕情がいないのは珍しくない。たいてい彼のほうが早起きだ。だが、耳をすませても、何の物音もせず、人の気配が感じられない。
風信はジーンズを履きながら、寝室から顔を出した。やはり、しんと静まり返っている。
まあ、買い物かなにかに出かけているのだろう。特に気に留めず、風信は冷蔵庫から出した牛乳を口に流し込んだ。
だが、昼を過ぎて、夕方になり、陽が沈んでも慕情は帰ってこなかった。
メッセージを送るが、既読の表示はつかない。
今日は何か予定があっただろうか。部屋にかけてあるカレンダーを見るが、二人ともあまり書き込まないし、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードには、買い足すもののメモが残っているだけだ。
noa/ノア
DONE新春SSおみくじ:第八番 [風信&慕情]現代の日本で年越しを迎えるふたり。謎設定。深く考えずにお読みください。
冬の冷たい空気に冷えた指先をこめかみに当て、この何百年繰り返し唱えた口令を唱える。
なんど年を超しても、同じことをやっている自分が可笑しい。
『なんだ、風信。私は下界で任務中なんだが』
そして、なんど年を越しても変わらない不機嫌な声が返ってくる。
「なんだかお前の声がききたくなった、と言ったら怒るか、慕情」
沈黙が返ってくるが、通霊は切れてはいない。
「最近信徒が増えてきた東の異国に来ているのだが、この国は年越しだというのに花火の一つもあがらない」
通霊の向こうで、はん、と鼻を鳴らす音がする。
『お前は本当に、花火だの爆竹だの賑やかしいのが好きだな』
「だって、年越しにはやはり目出度く賑やかにいきたいだろ? なのに、さっきから静まりかえっていて、なにやら陰気な鐘の音が何度も——」
1796なんど年を超しても、同じことをやっている自分が可笑しい。
『なんだ、風信。私は下界で任務中なんだが』
そして、なんど年を越しても変わらない不機嫌な声が返ってくる。
「なんだかお前の声がききたくなった、と言ったら怒るか、慕情」
沈黙が返ってくるが、通霊は切れてはいない。
「最近信徒が増えてきた東の異国に来ているのだが、この国は年越しだというのに花火の一つもあがらない」
通霊の向こうで、はん、と鼻を鳴らす音がする。
『お前は本当に、花火だの爆竹だの賑やかしいのが好きだな』
「だって、年越しにはやはり目出度く賑やかにいきたいだろ? なのに、さっきから静まりかえっていて、なにやら陰気な鐘の音が何度も——」
noa/ノア
DONE新春SSおみくじ:第壱番 [風信&慕情 現代AU]現代に暮らす風信と慕情。慕情が柚子ジャムをつくるお話。
年明けの休日の朝、目覚めた風信はひくひくと鼻を動かした。
ベッドから出てキッチンへ行くと、長い髪を束ねた姿がガス台に向かっていた。
「おはよう、慕情」
あくびをしながら声をかける。
「ん」
振り向くことなく返ってくる声はいつもどおりだ。
「なに作ってるんだ?」風信は後ろから覗き込んだ。
慕情は鍋の中身をヘラでゆっくりかき混ぜている。立ち昇る湯気はふわりと甘酸っぱい。
「謝憐からユズが大量に送り付けられてきた」
「ユズ?」
「ああ。なんか庭でいっぱいできたらしい」
「へえ」
「で、あまりたくさんあるから、ジャムにでもしておこうかと」
「なるほど」
鍋の中の深い黄色。その表面では、ふつふつと泡が現れては消える。
ヘラを持ち上げ、黄金色がポタリとゆっくり垂れるのを確認し、慕情が火を消す。風信はそれを見て、横に立ててあるスプーンをさっと取った。だが鍋の上に持って行ったところで、その手首をがしりと掴まれた。
1315ベッドから出てキッチンへ行くと、長い髪を束ねた姿がガス台に向かっていた。
「おはよう、慕情」
あくびをしながら声をかける。
「ん」
振り向くことなく返ってくる声はいつもどおりだ。
「なに作ってるんだ?」風信は後ろから覗き込んだ。
慕情は鍋の中身をヘラでゆっくりかき混ぜている。立ち昇る湯気はふわりと甘酸っぱい。
「謝憐からユズが大量に送り付けられてきた」
「ユズ?」
「ああ。なんか庭でいっぱいできたらしい」
「へえ」
「で、あまりたくさんあるから、ジャムにでもしておこうかと」
「なるほど」
鍋の中の深い黄色。その表面では、ふつふつと泡が現れては消える。
ヘラを持ち上げ、黄金色がポタリとゆっくり垂れるのを確認し、慕情が火を消す。風信はそれを見て、横に立ててあるスプーンをさっと取った。だが鍋の上に持って行ったところで、その手首をがしりと掴まれた。
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DONE[FengQing ✈️] パイロットAU、機体のトラブルの回のその後。今回はフォンチン。 星が瞬く澄んだ空を吹き抜ける風が、風信のコートの襟を揺らす。だが風信は手すりに腕を置いてもたれかかったまま、風が弄ぶのに任せていた。
空港にはいくつか展望デッキがあるが、もっぱら人気なのはやはり滑走路が見えるところだ。反対側の街が見えるだけのこのデッキは、特にこの時間だともう誰もいない。
外の空気を吸いたかったが、滑走路を見る気分には到底ならない。
大きく溜息をついて腕に顔を埋める。
故障した前輪が滑走路の摩擦に耐えかね、機体の鼻先がガクンと落ちた時の衝撃を思い出し、体が不意に縮こまる。
そうか、俺は怖かったのか。
今やっと、そのことに気づく。
安全に止めるためにやるべきことで頭は一杯で、その時は本当に恐怖など感じなかった。体に伝わる全ては、心に行くのではなく、頭で処理されていた。それに、怯えているだろう副操縦士の横で、動揺など顔に出すわけにはいかない。
2263空港にはいくつか展望デッキがあるが、もっぱら人気なのはやはり滑走路が見えるところだ。反対側の街が見えるだけのこのデッキは、特にこの時間だともう誰もいない。
外の空気を吸いたかったが、滑走路を見る気分には到底ならない。
大きく溜息をついて腕に顔を埋める。
故障した前輪が滑走路の摩擦に耐えかね、機体の鼻先がガクンと落ちた時の衝撃を思い出し、体が不意に縮こまる。
そうか、俺は怖かったのか。
今やっと、そのことに気づく。
安全に止めるためにやるべきことで頭は一杯で、その時は本当に恐怖など感じなかった。体に伝わる全ては、心に行くのではなく、頭で処理されていた。それに、怯えているだろう副操縦士の横で、動揺など顔に出すわけにはいかない。
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DOODLE[Fengqing] 1111の日なので、ポッキーゲーム(らしきもの)をする风情。よくわかっていない武神二人がポリポリしてるだけ。
(よくわかってる武神も約一名いますが)
#Fengqing
1111の日「つまり……」
腕組みをした慕情が、厳かな顔で口を開いた。
「この細長い菓子を両端から同時に二人で食べる遊戯、とそういうことか?」
「あ、ああ」風信が頷く。
「……やってみるか」
「……そうだな」
数百年も生きていると、目新しいことというのはなかなか巡り会えない。向かい合いながら、不思議と二人とも「やってみても良いかもしれない」という気になったのだ――俗に「魔が差した」とも言うが。
「だがしかし」
慕情がチョコレートのかかった長細い一本を袋から取り出す。慕情の長い指に弄ばれていると、それはまるでスーパーの駄菓子ではなく、貴人の髪を結う櫛のように見えるから不思議だ。
「いくらお前の口がでかいといっても、この長いものの両端をいちどきに口に含むのは容易ではないのではないか?」
2288腕組みをした慕情が、厳かな顔で口を開いた。
「この細長い菓子を両端から同時に二人で食べる遊戯、とそういうことか?」
「あ、ああ」風信が頷く。
「……やってみるか」
「……そうだな」
数百年も生きていると、目新しいことというのはなかなか巡り会えない。向かい合いながら、不思議と二人とも「やってみても良いかもしれない」という気になったのだ――俗に「魔が差した」とも言うが。
「だがしかし」
慕情がチョコレートのかかった長細い一本を袋から取り出す。慕情の長い指に弄ばれていると、それはまるでスーパーの駄菓子ではなく、貴人の髪を結う櫛のように見えるから不思議だ。
「いくらお前の口がでかいといっても、この長いものの両端をいちどきに口に含むのは容易ではないのではないか?」
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DOODLE妖魔慕情のいるフォンチンSSいちおうハロウィン風味。
仙楽妖魔むーちんにやられて、即興で書きました。
あの日の妖魔 ここはどこだろう。
ぼんやりとしていた視界が次第にはっきりとしてくる。慕情は目を瞬いた。
少し薄暗い室内に、窓から差し込む光。その窓の外には大きな楓が風に葉を揺らしている。
何百年もの時を隔てても忘れることのない部屋。殿下につき従っていたころの控えの間。
「懐かしいな」
不意に後ろから声が聞こえて慕情はさっと振り返る。この部屋の思い出とともにあったといっても差支えないであろう人物――。
「風信、いったい――」
だがそこで慕情の言葉が途切れた。その視線が自らに落ちる。
その身を包んでいるのは、いつもの自分の衣ではなかった。
烏が如き真っ黒な布地。腕の袖口を縛るのは濃い緑色の布。同じ色の帯が腰を囲み、その下には鎖のような装飾が弧を描く。
2130ぼんやりとしていた視界が次第にはっきりとしてくる。慕情は目を瞬いた。
少し薄暗い室内に、窓から差し込む光。その窓の外には大きな楓が風に葉を揺らしている。
何百年もの時を隔てても忘れることのない部屋。殿下につき従っていたころの控えの間。
「懐かしいな」
不意に後ろから声が聞こえて慕情はさっと振り返る。この部屋の思い出とともにあったといっても差支えないであろう人物――。
「風信、いったい――」
だがそこで慕情の言葉が途切れた。その視線が自らに落ちる。
その身を包んでいるのは、いつもの自分の衣ではなかった。
烏が如き真っ黒な布地。腕の袖口を縛るのは濃い緑色の布。同じ色の帯が腰を囲み、その下には鎖のような装飾が弧を描く。
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DONE[FengQing] 中秋の満月の光のもと、初めて口づけを交わす風信と慕情。月の雫 これほど月の光が似合う顔を、風信は他に知らない。
窓から差し込む満月の光が、目の前の白い肌を照らす。そのすらりとした鼻梁、細いが意志の強い眉、そして、長く密度のある睫毛が縁どる双眸。
陽の光より冷たく淡い光が、それらに遠慮がちな陰影をつくる。どんな神像でも叶わないその美しさに溜息をつきたくなる。
だが、二人の間の空気は弓の弦のように張り詰めていた。
微かな息が掠めるほど顔を近づけ合って、二人がすることと言えば、いつものように舌戦を繰り広げるか、それとも――。
おそらく前者ではないとわかっていながらも、風信は身を固くすることしかできない。
何故なら――
他人と唇をくっつけるなんて気色の悪い――そう言い捨てた目の前の人物に思い切り跳ね除けられ、壁にヒビが入るほど背をぶつけて痛い思いをしたのは記憶に新しいからだ。
4404窓から差し込む満月の光が、目の前の白い肌を照らす。そのすらりとした鼻梁、細いが意志の強い眉、そして、長く密度のある睫毛が縁どる双眸。
陽の光より冷たく淡い光が、それらに遠慮がちな陰影をつくる。どんな神像でも叶わないその美しさに溜息をつきたくなる。
だが、二人の間の空気は弓の弦のように張り詰めていた。
微かな息が掠めるほど顔を近づけ合って、二人がすることと言えば、いつものように舌戦を繰り広げるか、それとも――。
おそらく前者ではないとわかっていながらも、風信は身を固くすることしかできない。
何故なら――
他人と唇をくっつけるなんて気色の悪い――そう言い捨てた目の前の人物に思い切り跳ね除けられ、壁にヒビが入るほど背をぶつけて痛い思いをしたのは記憶に新しいからだ。
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DONE[FengQing] 69さんの「風信ぬいを丁寧に揉み洗いして逆さづりで干す慕情」を書かせていただきました。揉まれて干されて「なんだあれは?」
任務を終えて村はずれの街道を歩いていた慕情は、道端に何か落ちていることに気づいて足を止めた。
「人形?」
拾い上げたそれは、布で作られていて、丸っこい頭に、頭と同じくらいの高さの小さな体がついている。慕情は手の中のそれをまじまじと見つめた。その姿にどことなく見覚えがあったからだ。
「……風信?」
ぐっと引き結んだ口。くりっと大きな目と太めの眉。衣装もちゃんと風信の茶色の着物に赤い胸当てと、見慣れた姿をしている。
だれかの落とし物だろうか。だが、すでにそこに持ち主の気は感じられない。泥や砂ぼこりで汚れた見た目からしても、随分長いことそこに打ち捨てられていたのだろう。よく見ると、荷車にでもひかれたのか片脚がつぶれ黒く汚れている。
2297任務を終えて村はずれの街道を歩いていた慕情は、道端に何か落ちていることに気づいて足を止めた。
「人形?」
拾い上げたそれは、布で作られていて、丸っこい頭に、頭と同じくらいの高さの小さな体がついている。慕情は手の中のそれをまじまじと見つめた。その姿にどことなく見覚えがあったからだ。
「……風信?」
ぐっと引き結んだ口。くりっと大きな目と太めの眉。衣装もちゃんと風信の茶色の着物に赤い胸当てと、見慣れた姿をしている。
だれかの落とし物だろうか。だが、すでにそこに持ち主の気は感じられない。泥や砂ぼこりで汚れた見た目からしても、随分長いことそこに打ち捨てられていたのだろう。よく見ると、荷車にでもひかれたのか片脚がつぶれ黒く汚れている。
noa/ノア
DONE[FengQing]Twitter/Xに上げてたやつ。謝憐にお薬を渡す時の慕情の「ん−っ」が良いという話になったので、色々なシーンを妄想してみた落書き。
文字では上手く表現出来なかったので、各自アニメむーちんの声で再生して下さい🙏
愛しき唸り声 静かなのに横柄なその足音が近づいて来たかと思うと、がらりと風信の執務部屋の扉が開いた。
「慕情、なんの用……」
「ンっ」
顔を上げた途端に、鼻先に巻紙を突きつけられ、風信は思わず顔を引きながら受け取る。
「この間の件の報告書だ。大筋はまとめておいたから、お前の方で書き足して提出しろ」
腕組みをし、窓の外を見ながら慕情が言う。
「もう出来たのか」
「お前に任せたら三百年はかかるからな」
当てつけがましい言葉は無視し、風信は巻紙を机に置いた。
「ああ、そういえばさっき殿下から受け取ったんだが、お前と分けろと……」
机の上の雑多な山をかき分け、箱を取り出す。
「何だそれは?」
慕情が警戒心もあらわに聞く。
「知らん。俺もまだ開けてない」
2124「慕情、なんの用……」
「ンっ」
顔を上げた途端に、鼻先に巻紙を突きつけられ、風信は思わず顔を引きながら受け取る。
「この間の件の報告書だ。大筋はまとめておいたから、お前の方で書き足して提出しろ」
腕組みをし、窓の外を見ながら慕情が言う。
「もう出来たのか」
「お前に任せたら三百年はかかるからな」
当てつけがましい言葉は無視し、風信は巻紙を机に置いた。
「ああ、そういえばさっき殿下から受け取ったんだが、お前と分けろと……」
机の上の雑多な山をかき分け、箱を取り出す。
「何だそれは?」
慕情が警戒心もあらわに聞く。
「知らん。俺もまだ開けてない」
noa/ノア
DONE[FengQing]神官が下界で暮らすようになった世界のFengQing現代AU。※未邦訳ネタバレなし
(未邦訳部分まだ全部読み終わっていないので、似たような展開があったらすみません)
神は何処に「それ、全部食べるのか?」
隣から投げかけられた玄真将軍の氷のように冷たい視線から護るように、風信はハンバーガーとポテトののったトレーを腕で引き寄せた。
「悪いか? 腹が減ったんだ。あんなに歩いたから」
風信のいつもの服装をみかねた慕情に街へ連れ出されて歩くこと数時間。
店から店へ、あっちの売り場からこっちの売り場へ。
風信も店に服を買いに行ったこともあるが、あまりに多すぎて何がなんだかわからなくなり、何も買わずに疲労だけ持って帰るのが常だった。
物心ついてからこれまでずっと、与えられた服、決まった数着を着ていればよかったのに。
だから慕情が見繕ってくれるとなって風信の心は踊ったが、しかしそれは思った以上にハードだった。
2915隣から投げかけられた玄真将軍の氷のように冷たい視線から護るように、風信はハンバーガーとポテトののったトレーを腕で引き寄せた。
「悪いか? 腹が減ったんだ。あんなに歩いたから」
風信のいつもの服装をみかねた慕情に街へ連れ出されて歩くこと数時間。
店から店へ、あっちの売り場からこっちの売り場へ。
風信も店に服を買いに行ったこともあるが、あまりに多すぎて何がなんだかわからなくなり、何も買わずに疲労だけ持って帰るのが常だった。
物心ついてからこれまでずっと、与えられた服、決まった数着を着ていればよかったのに。
だから慕情が見繕ってくれるとなって風信の心は踊ったが、しかしそれは思った以上にハードだった。
mo49ko
DOODLE※風情 JP / ENfengqing week day 3
お題:料理 (cooking)
元ネタは以前バズってたやつです!!
"rice rice baby" by luckymoonly: https://archiveofourown.org/works/58532857 5
noa/ノア
DONE[FengQing]FengQingWeek2024のDay2のお題「Body Swap(入れ替わり)」を使わせていただきました。その術を使って同時に法力を交換すると、相手の能力も得られる、という術を試してみる二人です。
※ご都合主義と捏造満載です。
Body Swap「で、なんで俺たちなんだ?」
怪訝な顔をする風信に、慕情も不満げな表情を隠さない。
「帝君曰く、この術は力が強く法力も強い武神で試さないといけないらしい」
「それなら他にもいるだろ。裴将軍とか泰華殿下とか……」
「知らん! 帝君曰く、大体同じくらいの力で、その……気心が知れてる者同士がいいらしい」
後半部分に関して、帝君の認識ににわかに不安を抱いた風信は眉尻を下げた。
「き、危険はないんだろうな……?」
「私に聞くな! 帝君曰く……」不本意さを強調するかのように慕情は三たび繰り返す。「おそらくそれ程危険な事態にはならないだろうと」
「おそらく……それほど?」
「なんだその情けない顔は。とりあえず命令だ。さっさと片付けるぞ」
4273怪訝な顔をする風信に、慕情も不満げな表情を隠さない。
「帝君曰く、この術は力が強く法力も強い武神で試さないといけないらしい」
「それなら他にもいるだろ。裴将軍とか泰華殿下とか……」
「知らん! 帝君曰く、大体同じくらいの力で、その……気心が知れてる者同士がいいらしい」
後半部分に関して、帝君の認識ににわかに不安を抱いた風信は眉尻を下げた。
「き、危険はないんだろうな……?」
「私に聞くな! 帝君曰く……」不本意さを強調するかのように慕情は三たび繰り返す。「おそらくそれ程危険な事態にはならないだろうと」
「おそらく……それほど?」
「なんだその情けない顔は。とりあえず命令だ。さっさと片付けるぞ」
noa/ノア
DONE[FengQing]花怜のアイスクリームCMが可愛かったので、風情の二人にも食べてみてもらいました。玄真将軍の舐め方がやけに色っぽくて困る風信がいるだけで、特に中身はありません。
※二人は神官ですが、地上は現代っぽいです。設定は適当です。
アイスクリーム「慕情」
自室での執務中、突然背後から聞こえた声に、慕情は筆を止めて溜息をついた。
「風信、なんだ。今忙しいのだが」
「ちょっと聞きたい事があるんだが」
「何だ? 用なら通霊で言えばいいだろう? 通霊では言えないようなことか?」
背を向けたまま慕情が尋ねるが、答えが返って来ない。
仕方なく振り返ると、部屋の入口に、風信が目を泳がせながら立っていた。
「なんだ。さっさと言え。私はお前と違って暇ではない」
いつもならこんな売り言葉でも食いついてくるところだが、今日は違うらしい。
「通霊で言えないような大事か? いったい……」
慕情の表情が怪訝になる。
風信は意を決したように口を開いた。
「ア……アイスクリームというのを知ってるか?!」
4775自室での執務中、突然背後から聞こえた声に、慕情は筆を止めて溜息をついた。
「風信、なんだ。今忙しいのだが」
「ちょっと聞きたい事があるんだが」
「何だ? 用なら通霊で言えばいいだろう? 通霊では言えないようなことか?」
背を向けたまま慕情が尋ねるが、答えが返って来ない。
仕方なく振り返ると、部屋の入口に、風信が目を泳がせながら立っていた。
「なんだ。さっさと言え。私はお前と違って暇ではない」
いつもならこんな売り言葉でも食いついてくるところだが、今日は違うらしい。
「通霊で言えないような大事か? いったい……」
慕情の表情が怪訝になる。
風信は意を決したように口を開いた。
「ア……アイスクリームというのを知ってるか?!」
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DONE[FengQing]映画ホビットで弓を折られた射手が息子の肩を借りて矢を射るシーンが大好きなので、風情にもやってほしくて書いてみました。慕情が風信の弓の一部になるという…弓 炎がすべてを焼き尽くしていく。
山を、町を、人々を。
黒煙に覆われた空に、黒光りする竜が長い体をくねらせる。その口から吐き出された炎が嘲笑うように大切なものたちを焼くのを、人々は身を振るわせて見ていることしかできない。
嗚呼、神よ、助けてくれ!
その幾千もの悲痛な叫びに呼ばれ降り立った神官たちも、竜の強大な力の前に散っていった。
もうだめだ―人々の心に絶望が広がったその時―
ひと際大きな雷鳴が響き、真っ黒な空を明るく照らすほどの稲妻が二本、空を走った。
その光の中、降りてくる二つの姿を見たのは国師達だけだったが、人々も思わず空を仰ぎ見る。
ひと際高い屋根の上に降り立った風信と慕情は、目を合わせて無言で一つ頷くと、身を翻して二手に分かれた。
2683山を、町を、人々を。
黒煙に覆われた空に、黒光りする竜が長い体をくねらせる。その口から吐き出された炎が嘲笑うように大切なものたちを焼くのを、人々は身を振るわせて見ていることしかできない。
嗚呼、神よ、助けてくれ!
その幾千もの悲痛な叫びに呼ばれ降り立った神官たちも、竜の強大な力の前に散っていった。
もうだめだ―人々の心に絶望が広がったその時―
ひと際大きな雷鳴が響き、真っ黒な空を明るく照らすほどの稲妻が二本、空を走った。
その光の中、降りてくる二つの姿を見たのは国師達だけだったが、人々も思わず空を仰ぎ見る。
ひと際高い屋根の上に降り立った風信と慕情は、目を合わせて無言で一つ頷くと、身を翻して二手に分かれた。
noa/ノア
DONE[FengQing]初書き天官賜福&风情。6月に思いついたので、初書き冒頭でいきなりプロポーズしてしまいました。この世界の設定がまだよくわかっていないので、いろいろ捏造しているかもしれません。
※風信の過去に一瞬触れますがそれほどネタバレはないと思います
契り「なぁ……慕情」
重たい瞼を持ち上げ、絞り出すように名前を呼ぶ声も、目の前のその顔を向けさせることはできない。だが、次の言葉は違った。
「……結婚してくれ」
思わず顔を上げた慕情は、まるで風信の顔から妖魔が現れたかのように、ぎょっとした顔で見つめた。しばし静止したのち、やっと口を開く。
「この程度の傷で正気失うなんて無様すぎるぞ」
「正気を失ってなどいない」
どこまでも真剣な顔で風信は答えた。
さっきまでの戦闘が嘘のように、あたりは静まり返っている。
簡単な任務のはずだった。
二体の妖魔の討伐。等級からいって、一人一体ずつ片付ければ良いだろうと二手に別れた。風信が相手にした方は多少すばしっこかったが、相手の急所を素早く見抜き、寸分たがわず命中させた矢で妖魔は雲散霧消した。だが、拍子抜けしたような気分で慕情の方を見に行こうかと思ったその途端、突然目の前に、倒したはずの妖魔が再び現れたのだ。
3751重たい瞼を持ち上げ、絞り出すように名前を呼ぶ声も、目の前のその顔を向けさせることはできない。だが、次の言葉は違った。
「……結婚してくれ」
思わず顔を上げた慕情は、まるで風信の顔から妖魔が現れたかのように、ぎょっとした顔で見つめた。しばし静止したのち、やっと口を開く。
「この程度の傷で正気失うなんて無様すぎるぞ」
「正気を失ってなどいない」
どこまでも真剣な顔で風信は答えた。
さっきまでの戦闘が嘘のように、あたりは静まり返っている。
簡単な任務のはずだった。
二体の妖魔の討伐。等級からいって、一人一体ずつ片付ければ良いだろうと二手に別れた。風信が相手にした方は多少すばしっこかったが、相手の急所を素早く見抜き、寸分たがわず命中させた矢で妖魔は雲散霧消した。だが、拍子抜けしたような気分で慕情の方を見に行こうかと思ったその途端、突然目の前に、倒したはずの妖魔が再び現れたのだ。
ルル🏹⚔️
DONE風情韻事3【林檎】ドロライ企画に参加させていただきました🖋️
お疲れ慕情を労わる風信。ドストレートな愛情表現に疲れも癒えていきます🍎🍎🍎花怜も来てくれました🥰
お題からお話作るのは初めてでしたが、楽しかったです。気が付けば6本書いてました。また機会があれば✨ 4
ルル🏹⚔️
DONE風情韻事3【君を呼ぶ】ドロライ企画に参加させていただきました🖋️
800年間、風信慕情って名前で呼ぶのはお互いだけだったんじゃないかなぁ🏹⚔️
弱気になったり惑ったりするとき、名前を呼んでくれる人がいれば自分は自分だと思えたり、呼んだ方も相手を通して自分を再認識して、上手くやっていけるような気がする。そんな場面です。 4