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    リゲル

    愛に苛まれる

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    リゲル

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    ゲロ甘盗賊団 ネロが子分以上相棒未満
    頭を楽にして読んでください。

    #ブラネロ
    branello

    わがままシェフおすすめ「ボスー、上出来だろ、ん。見てくれ」
    「おー、ちがいねえ。こんなぷりっぷりのでっかい肉をよ、器用なことにとろっとろに煮て、俺様の上等なワイン丸々一本ぶち込んだ気前の良さには、北の精霊だってイチコロさ。で、誰だ、こんなべろべろんなるまで飲ませたの」

    「見つけたらもう酔ってて…」
    「…そうか。ワインは?」
    「…っす、それも、既に握られていて…」
    「はは」
    「…お怒りですか?」
    「怒ってねえよ、おら。いったいった」
    「ど、どこに」
    「マスでも掻いとけ、俺様が許すまで入るな」

    事件現場であるブラッドリー・ベインの部屋を後に、子分たちは一心不乱に散っていった。そこまであほなやつらじゃないからこれくらいでいいだろう。問題は、ヘラヘラ笑いながら、まだ何も知らない真っさらな顔をしているこいつだ。赤ん坊のようにきゃっきゃっして、危なっかしい身動きで料理の入った鍋だけをガッツリ掴んでいる。

    「ネロよぉ、えらい上機嫌だな」
    「ん、っ…ふ、わりぃ、ちょと飲んでた」
    「吐くなよ」
    「…ッん、うん、えとな、ボスにあげたくてさ、」
    「元々俺様のもんだかな」
    「部屋に置いてあったの使っちゃった、すんません」
    「……まあ、お子ちゃまの手の届くところに置いといた俺も反省だ。今夜の晩酌用だったぜ」

    ブラッドリーは、本当に怒ってはいなかった。盗めるものは全部盗めって教えたんだ、油断してたのは自分の方なので、やりきったこの泥棒猫は逃してやるしかない。ただ健気なことに、それは本人が浴びるためではなくブラッドリーに捧げるためだったらしく、確かに美味しそうな匂いがさっきから充満していた。アルコールの匂いはほぼ飛んだが、上質な渋みと酸味が、脂っ気の多い肉汁の刺激に混ざった、文句なしに美味しそうな何かを見つめる。おれのものだ、食わなくてどうする。

    「寄越せ、全部俺のもんだからな?」

    ネロは嬉しそうに目を細めて微笑んだ。フラフラなステップで食器やカトラリーをずらりと出して、一瞬にしてディナーの晩餐会を開く。招待されたのはどうやらブラッドリーの方らしい。

    メスの宇宙鶏は、死ぬまで卵を得られるので、その肉を食べられる機会は北じゃ滅多にない。しかし後の卵を舐めるより、今すぐ肉に齧り付きたいから盗賊になったんだ! うんと堪能しなくちゃ宝の持ち腐れだ。これは…、シチューにしては汁っけが少なく、焼き物にしては多い。その戸惑いに目敏く気付いたのか、ネロは焦り気味で声を上げた。

    「あ、パンを浸して、まず汁を味わって」
    「肉からいきたいんだよ」
    「だめです、手ぇ汚れるし、もったいない」

    今更そんなんいいだろ、と答えたかったが、ネロの流るるような身動きに流石のブラッドリーもポカンとする。
    ネロは、子供を宥めるような手つきでパンを千切り、そのまま汁まで直行した。葡萄酒色に染まったパンが、ブラッドリーに差し出される。

    「はい、あーん」
    「大丈夫か?」
    「なにが? おいしいに決まってるだろ」
    「図々しい……」

    口元にグイグイ当てられるパンをずっと拒むのも滑稽だったので、ブラッドリーはパン一切れを存分に味わう羽目になった。

    「むぐ、ん…、うん? うまっ」
    「だろ、へへ」

    へにゃりと笑いながら、ネロはもう次のパンを浸そうとしていた。給仕のようにちょこんと立ったまま、上半身だけ低くして、器用にもひとの口にパンをねじ込んでやがる。態度がでかいのか控えめなのかわからなくて、変で面白えやつだと改めて思った。

    「肉食べて」
    「食べるな食べろうるせえよ」
    「食べてよ!」

    こんな幼稚な口喧嘩なんて、いつが最後だったか思い出すことも出来ない。渋々と肉を齧ってみるも、またそれが格別に美味くて、もう笑っちまった。負けだ負け、酔っ払った我儘坊主に勝ったところで何が得られる。

    「ボスの、一口デカくてすき」
    「は? おい、食べづらくなるだろうが」
    「はじめて作ったのも食べてくれるからすきだ」
    「無駄にしてどうすんだ」
    「…無駄にしないから、つい作っちゃうんだよ」

    とんでもない論理だ。気が気じゃないブラッドリーを、ネロは心から嬉しそうに、楽しそうに笑っていた。掠れるような無邪気な笑い声は、心臓の内側を擽るから、堪らない。皿に滲む汁がうまい。酒と肉汁を吸ってふやけたパンがうまい。繊維が溶けてなくなるほろほろの肉がうまい。頬の内側が痺れて、落ちそうで、眩暈がする。

    「ん。また作る」
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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    44_mhyk

    DOODLEねこさわ無配に絡めた妄想語りです。(フォ学パロブラネロ♀)

    カフェ「サンセット・プレイリー」の常連さんになって、カウンターでブラネロが初めて店に入ってくるところに出くわしたいなというただの語りです。
    カウンターの端っこの定位置でモーニング待ってたら、「ここかぁ、なかなか雰囲気悪くねえな」って言いながら店の扉を推し開いて背の高いやんちゃそうな顔の整ったメンズが入ってきて、そのすぐ後ろにいた灰青色の髪の女の子を先に店内に入れるよね。
    「珈琲もだけど飯がとにかく美味いらしいんだ」ってちょっと男の子みたいな口調の彼女が嬉しそうに言うよね。
     それを見た銀と黒の髪の男の子がおう、楽しみだなと子供みたいな笑顔を見せるのを目の当たりにしてウッって心臓貫かれたい。
     垂れ目の元気ないつもの店員さんが「カウンター席でいいッスか~?」って彼女たちに言って、偶然傍の席になる。
     すぐ隣からどちらの香りともつかないいい香りがふわっと漂う…食事の邪魔にならない程度のさりげない抑え目の香りが。
     それを吸い込みながら珈琲を飲んでああ…今日はいい日や…ってかみしめたい。

    「何食うんだよ」
    「うーん、これとこれで迷ってる…(モーニングメニュー指差しつつ)」
    「んじゃ二つ頼んで分けたらいいだろ」
    「冗談じゃねえ、てめえ半分こじゃなくてどっちも8割食うじゃねえか」
    「半分にするって。足りなきゃ追加すりゃいいだろ。す 675

    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了1回目。全員かっこよかったけどとりあえず推しカプブラネロのみに特化します。
    1127少しだけ追記。
    まず、全体を通して。
     ブラッドリーはネロを信頼していて、ネロはブラッドリーを信頼してた。
     間違いなくこの戦いの間、二人は「元」なんかじゃなかった。バディだったよ、まぎれもなく。
     ネロの怒りを尊重し、最高位の強化魔法を撃ち込んだブラッドリー。
     多分、ブラッドリーの方が簡単に仕留められるのだろうに、その役目を、ネロにまかせた。ネロの心を大切にした。信頼して、任せて、見守った。
     もう、涙とまらなかったです。
     信頼しているからこそ、正面を向いて胸に魔法の弾丸を受け止めることができる。
     ネロ、ちゃんと、つながってるよ。もう、たまらなかった。

     ネロも、光さえあればブラッドリーが撃ち抜ける、と、ブラッドリーを信頼してた。
     くしゃみで飛ばされて笑っちゃったけど、繰り返して戻ってくるとは思ってなかったし、何より、間に合う男…私の推し死ぬほどかっこよかったです…。(放心状態)

     ブラッドリーが、頑張ったちっちゃいの二人に男前な面と声をかけたのが本当に、兄貴っぽくて、あたたかくて、ああ、ブラッドリーって、北の無法者たちが惚れた男って、こういう男なんだ、と、つくづく感じた。

     そして最 1376