小さな木製の窓枠からこぼれ落ちた月の光が、部屋のベッドの上で眠る二人に注がれている。
ジャックの家の寝室で、二人は静かに眠っていた。ヘラクレスの大きな腕がジャックの背を抱き込むようにして包み、ジャックの手もそれに添えられている。
身に纏うものは何もなく、毛布がただ一枚かけられているだけ。
不意に、ジャックはぱちりと目を覚ました。
背中に感じる高い体温と体を包容する太い腕に、ジャックはヘラクレスを感じて目を薄める。
少しして、ジャックはふと思った。
ーー本を片付けるのを忘れている。
まだ少し微睡みの中にいた目がふっと冴える。ヘラクレスの腕からそろりと抜け出し、ジャックは彼を起こさないよう音を立てずベッドから降りた。チェストに置かれた乱れたままのシャツを羽織り、そのままふらりと部屋を出る。
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