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    ちせとはる(左右不定)/ 匋依 / 箱▷https://odaibako.net/u/hrlayvV

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    マッ*に行くふたり。学生時代からの縁だったらいいなあ。

    ##ちせとはる

    ミスター・フライドポテトのゆくえ 甘い風貌をしているわりに、九頭竜智生の食事は豪快である。
     ふたりの通う高校のすぐ近くに存在するファーストフードのチェーン店、外の通りが一望出来るカウンター席、ガラスに映る智生が大口を開けて期間限定のハンバーガーにかぶりつく様子を、頬杖をつきながら晴臣はぼんやりと眺めている。細いくせに、世間一般の男子高校生と変わらないような量を食べることもすこし意外だったりするのだ。最早『行きつけ』になりつつあるファーストフード店ではセットに加えて単品のハンバーガーを必ず注文するし、彼曰く『調子が良い時』にはそこにポテトも追加される。今、彼の前に置かれた柚葉色のトレーには、手付かずのふたつめのハンバーガーとコーラ、Mサイズのポテトが堂々と鎮座している。どうやら今日は『調子が良い』日に分類されるようだった。
    「お腹空いてねえの?」
     もぐもぐと口に含んだハンバーガーを咀嚼しながら、智生が唐突にこちらに顔を向けてそう言った。視線は晴臣の前に唯一置かれたアイスコーヒーに注がれている。ふっとくちびるを緩め、晴臣は静かに首を横に振る。――お前がそれだけ食うから、俺は食べなくて良いんだよ、と。いつもひそかに思っている戯言を、晴臣は今日も大人しく飲み込んだ。
    「はい」
     そんな晴臣の胸中など知る由もない彼は、にこにこと機嫌の良さそうな笑みを浮かべ、空いている方の手で自身のポテトをひとつ摘むと晴臣の口元へ近付けた。
    「……」
     ポテトと智生を交互に見て晴臣はちいさく息を吐く。それからくちびるを開いて大人しくそれを口に入れた。途端、口内に広がる特有の塩気と油の風味。店内の強過ぎる冷房に晒され表面はすこし冷めていたけれど、それでもそれなりに美味しく感じられるから不思議なものだと思う。
    「おいしい?」
    「……ん」
     晴臣の反応を智生は満足そうに眺めていた。花が開いたような笑みを零して「なら良かった」と嬉しそうに言葉を落とす。
     ――美しい宝石を取り出して何度も丁寧に磨き上げるように、彼は一連のやりとりを飽きもせず毎日くりかえした。放課後、ふたりで寄り道をして、自身の皿の上のものを晴臣にひとくち分差し出し「食べて」と甘えた表情を浮かべる。そんな彼に対して呆れたように息を吐きながら、結局、晴臣は智生の我儘に従ってしまうのだ。……甘えているのはどちらだろう、と。時折ぼんやりとそんなことを考えてはくだらない思考に嘲笑した。――そういう毎日を彼とふたりで重ねている。
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