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    キツキトウ

    描いたり、書いたりしてる人。
    「人外・異種恋愛・一般向け・アンリアル&ファンタジー・NL/BL/GL・R-18&G」等々。創作中心で活動し、「×」の関係も「+」の関係もかく。ジャンルもごちゃ。「描きたい欲・書きたい欲・作りたい欲」を消化しているだけ。

    パスかけは基本的に閲覧注意なのでお気を付けを。サイト内・リンク先含め、転載・使用等禁止。その他創作に関する注意文は「作品について」をご覧ください。
    創作の詳細や世界観などの設定まとめは「棲んでいる家」内の「うちの子メモ箱」にまとめています。

    寄り道感覚でお楽しみください。

    ● ● ●

    棲んでいる家:https://xfolio.jp/portfolio/kitukitou

    作品について:https://xfolio.jp/portfolio/kitukitou/free/96135

    絵文字箱:https://wavebox.me/wave/buon6e9zm8rkp50c/

    Passhint :黒

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    キツキトウ

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    2024/4/24
     自分は、鉱物は何だか人みたいだなと思う時があるのです。

    ----------

    エブリスタ「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。「終煙奇譚」シリーズの一つ。

    #創作
    creation
    #怪談
    ghostStory
    #小説
    novel
    ##Novel

    終煙怪奇譚:「息する仮晶」.
    .


    「じゃあ、大人しくここでまっているのよ」
     吐かれた息は白く広がりついには消えた。
     赤い背は遠ざかっていき、その人にいつも纏わり付いていた強い匂いがそれに付いて消えていく。


     自分に向かって誰かがそう言っていたのだ。


              ✤     ✤     ✤


     屋根の下で、細く白い手を空に透かしては微かに白い息を天へ投げ、見上げていた視線をまた地に落とす。……クラリと頭が揺れた時、何かが視界の端に映り込んだ。
     もふもふとした何かが目の前を通る。もふもふとした白くてまん丸い毛玉達だ。ちょこんと目のような粒も見える。
     それはぴょんぴょんと跳ねてはピタリと止まり、止まった場所で次々にぶつかり合ってはひっついて、むきゅむきゅとおしくらまんじゅうをしだす。そして暫くすると一匹一匹と塵じりになっていき、やがてまた戻ってきては同じことを繰り返していた。
     雪が広がる景色の中を、それらは動き回っている。

     カサカサに乾いた唇を結ぶ。それを見つけて、ベンチにぺたりと座り込んではふるふると震わせていた身を起こして静かに近づく。
     小さな手はかじかんで赤く、指先が麻痺し始めた手を思わず塊になるもふ達に突っ込んだ。暖かそうだなと思ったのだ。指先が動かしづらくて細かな動きがとれず、そのままズボリと毛の塊の中に手を入れる。……何だか暖かい気がする。
     なぜだかじんわりと泣きそうになる。我慢できずに溢れた粒は白い地にぽたぽたと落ちて穴をあけた。
    「あたたかいね」
     止まらなくなった涙が顔に痕を付けていく。通り過ぎた箇所が寒さでじんじんと痛んだ。滲んでは明らかになり、また滲んでは明らかになる視界の中で、此方に気づいたそのもふもふ達は自分を見上げている。小さな毛玉達は塊に突っ込まれている手にきゅっとひっつくと、我が我がとまたおしくらまんじゅうを始めた。
     ぱちくりとした目が毛玉達をじっと見つめる。ぽかんと口を開けたまま毛玉達を観察した。
     すると毛玉達の一部が腕を伝って身体を登り、今度は頬や首元にぴたりと触れる。なぜか頬や首元にひっついた毛玉はとても冷たくて、突然現れた温度に身体が飛び跳ねる。ただ、触れ続けられていたら次第に暖かくなっていった。
     沢山の毛玉が自分にぎゅぎゅうとくっつく。なんでそうするのだろう。でもそうしていると、ずっと感じ続けていた寒さと寂しさが何処かへ消えた気がして、今度は毛玉達のその温かさで泣きそうになってしまう。
     毛玉達と一緒に其処へ留まる。

     そんな自分に背後から影が差した。
     自分より大きな毛玉だ。首を傾げたその大きな毛玉に、他の小さな毛玉達がきゅうきゅうと声を上げている。それを聞いていた大きな毛玉は此方に視線を流すと身を傾ける。
     潰される。そう思ったのは杞憂だった。
     ころりと転がるともふりと自分に触れる。柔らかな毛で包まれた身は所々が暖かく、所々が冷たく感じた。けれどそれもそのまま暖かさに変わっていく。それを眺めた毛玉達もきゅうとしゃべってはぴょこりと寄り添い、ぎゅっとみんなでそこにまとまる。自分の体は大きな毛玉を背にして沢山の毛玉達に囲まれた。
     目を瞬かせ、山が出来たその中で毛玉達の温かさに沈み込んで息をつく。暖かさに染まった身体は眠気を含み、瞼は静かに閉じられた。


     ゆっくりと目を開けていく。
     目が覚めると広がっていた白は消え、自分が居た原には点々と黄色い花が咲き、それに混じって綿毛が成っている。自分を囲んでいた毛玉達は一人たりとも其処にはおらず、何処かへと消えてしまっていた。悲しさに胸が圧迫される。何度辺りを見渡しても、何度目を凝らしても、あの毛玉達は一人たりとも顔を出してくれない。
     身体の傍にある丸い綿毛で、毛玉達を思い出してしまった。泣きだしそうな顔を携えて綿毛に手を伸ばす。
    「?」
     すかりと手がそれを通り過ぎていった。掴もうと何度か動かすけれど、一向に掴む事が出来ない。隣の黄色も掴もうとするが、なぜか掴めない。何かの声が聞こえた気がして顔を上げる。少し向こうに何かが寝転がっていた。
     心が躍る。あの毛玉達が居たのかと。
     けれど期待は萎み、其処に居たのは草原に寝転がって日向ぼっこをしていた猫だった。自分が傍に来たのに、一切起きようとしないので、試しにその温かそうな背に手を伸ばす。だが、眉がへの時に曲がるだけだった。
     折角見つけたのに触れる事が出来ない。あの毛玉達も傍には居ない。
     じわりと水気が目に染みだす。しかたなく、あの時の様な気持ちを抱え、色が欠けて木の目が見えているベンチに腰を掛ける。
    「あれ?」
     またはてなが浮かぶ。
     ぺしぺしとベンチを叩くと首を捻った。ベンチは触れるのだ。何だかそれが無性に悲しい。なんで猫には触れないのだろう。あの背を撫でて温度を確かめたいのに。
     寂しさが増し、やがて眠気が瞼を落とし始めたのでベンチの上に寝転がった。


     毛玉達はさみしさでお互いひっついてはおしくらまんじゅうをしていたのだろうか。だって、自分の中にあったさみしさは互いに触れて温度を知ったら消え去ってしまったから。


              ✤     ✤     ✤


     もうあの手ざりを味わえないのかもしれないと思っていたら、新しく雪が降るとまた姿を見せた。嬉しくて、駆け寄ったのを覚えている。

     何処かへ行ったままの誰かのにおいも、与えられるごはんの味も、怖い人が来る家の場所ももう知らない。遠い記憶の中で繋いだ手の温度も忘れてしまった。
     温度を忘れてしまった手をまた空に透かす。景色を透過させた自分の身体を引きずり、今日も自分は此処に座り込んだ。
     今日もバス停で待つ。
     ずっと待っていた誰かの事などもう覚えていない。だけど今は別の楽しみが出来ていたから寂しくも無い。
     楽しそうに足が揺らされる。また雪が降ったのだ。
    「また、あのこたちでてくるかな? またぎゅってしたいな」


     冬にたんとさみしさを消化して、溜めこんだ温かさを春からまた消化していく。
     酷く冷たい景色の中、今日も小さな白い毛玉が錆びれたバス停のベンチに佇んでいた。




     副読。


              ✤     ✤     ✤


     雪が与えた温度は確かに其処にありました。
     何かの生物なのか、目だけでは分かりづらい何かなのか、或いは雪の精なのか。考える事を辞めた人間達ではきっと辿りつけない正体が不明な何か。けれど、少なくとも小さな毛玉達は「ないていたの」「このこないていたの!」と大きな毛玉に説明していた。それを自分は覚えている。

     目の前の男に語りながら、語り手はそっと目を閉じた。

    「こうして詠む事は私の役割で本分ではありますが、そうしていて時折思う事が多いのです。人とは違った者達よりも、人の方が余程恐ろしいと。そう感じてしまう事があるのもまた、一つの事実なのです」




              - 了 -


    ----------

    エブリスタの企画「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。お題は「雪の思い出」。

    ※ポイピクの仕様上で、拡大するとなぜか題と本文が詰まって読みづらいので、出だしに点をうっています。特に本文とは関係が無いので気にしないでください。


    ● 何の変哲もないただの戯言
    自分も時折鉱物は人みたいだなと思う時がある。環境、含む物質、自身の変化、自身の色。同じ種類・同じ鉱物でもそうした事で様々な種類や姿や性質を持つ鉱物。そしてまた別のものを見れば同じ性質なのに姿が違う事もある。鉱物は奥深くもあると思うし、面白さもある。

    それは鉱物だけでなく、温度で姿を変化させ、人を含む多くの生物への助けや、人が何かを成す為・物を動かす為のとても強いエネルギーにもなるから水一つとっても面白さを含むから自然は面白い。

    そもそも水と、食べられる鉱物である塩がないと人も生きていけない。水が含む記憶は面白いし、塩が人体をどう助けるのかもまた興味深い。世界の中で生きる人という中にも「世界」が存在しているなと常々思う。
    自然造形美と自然の不思議。時々人の物差しで意味と在り方を押し込められたり、悪用されていると悲しくなる時がある。

    ●仮晶(かしょう)
    仮像ともいい、その鉱物の組成成分が別のものへ置き換わり元々あるものとはまったく違う鉱物に変化しても、元の結晶の形が変わらずに残るものをさす。
    引用、参考:https://mineral.imagestyle.biz/yougo.html
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