海霧に霞む哀慕のカルタ・ナウティカ 序
金銀財宝、宝石、誰かの命。2人一緒に大海原を駆けずり回って、奪って奪って奪いつくした。相手が命を懸けてでも守りたいものを、こちらも命を懸けて奪う。魂と魂がぶつかり合い、心地よい高揚感に包まれる。なぁ、×××。俺はてめえと一緒ならどこまででも行ける。だから―――、
1話
「こんにちは、賢者様。なにやら悩ましげなお顔をなさっていますね」
食堂で依頼書とにらめっこしている賢者に声をかけたのはシャイロックだ。
「実は、西の国と北の国の国境付近の海域で漁船の連続行方不明事件が発生しているそうで…」
「そりゃ大変そうだな」
ネロがお疲れ、賢者さんと声をかけて紅茶の入ったティーカップとブリティッシュスコーンの乗った皿を賢者の前に置いた。
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