俺、ちさひさ推しかも 俺はみことお推しだ。そうなのに。みことお以外のカップリングに興味は全くなかった。それがこの前までの俺。今の俺は三言と遠流がくっついているのにそれに感謝する余裕が無かった。少し下に視線を向けるとにこっとした顔と目が合う。耐えられなくって俺は目を逸らした。みことお同人誌を楽しもうとしていた俺を見つけた千慧によく分からないけど、告白をされた。その時は千慧があっさりと帰ってしまったので問題はなかったんだけど(寝付けないという問題はあったけど)それからが問題だった。千慧がめちゃくちゃにアプローチをしてくる!
登校する時には隙あらば俺と手を繋ごうとしてくる。上目遣いで見られると、ちょっとドキドキしてしまうので本当にやめてほしい。家に遊びに来る時も千慧のアプローチは止まらない。三言と遠流がいる時は普通なのに。この間なんか、壁ドンをされた。俺と千慧の身長差的にほのぼのするだけだと思ったのに。比鷺好きだよ、なんて言う千慧がなんだかかっこよく見えて、俺はすごく困っている。一番困ってるのは、スイーツを食べる時にあーんってしてくる事だ。あのスイーツ大好き千慧が、俺に一口だけとはいえ分けてくれるのだ。流石の俺も千慧が冗談でも揶揄いでもなく俺の事を本気で好きだと言ってくれていると気付いている。……そして、俺も多分。
「ねぇ比鷺。今日も一緒に帰ろ」
「わざわざ約束しなくてもいいでしょ。毎日帰ってるんだから」
可愛くない事を言う俺を仕方ないなぁと見てくるその瞳に愛おしそうなものを見る視線が混じっている事ぐらい分かっている。千慧は幼馴染だ。だから、俺がどんな事を思っているのかはちょっとぐらいは理解しているのだろう。俺も千慧の事が好きになっている。けれど、関係を変えるのが怖くて何も言えない。幼馴染四人で仲良くしたまま、千慧と恋人になるのはどうしたらいいんだろう。たくさん読んだみことお作品も参考に出来なかった。
「……僕は、ちゃんと待てるからね。大人だから」
俺の不安を見透かした発言をした千慧は格好良かった。ちょっとドヤ顔してるところも可愛い。まだ返せない言葉の代わりに俺はそっと手を繋ぐ。今はこれしか出来ないけれど、いつか千慧に好きだと言えるようになりたかった。