「てけてけって知ってる?」
電車の中で、女子高生二人組の片方がもう片方に話しかける。話しかけられた方は何それ?と、言って、怪訝な顔をした。
「都市伝説だよ。都市伝説。なんかこの近くで、上半身だけの女子高生が襲ってくるって話。で、上半身だけで走ってくるから、てけてけらしいよ」
話しかけた方は得意げに話すが、聞いてた方は更に眉をひそめ、何それと、先ほどより些かトーンを下げて返した。近くで聞いていた銀時もなんだそれと、聞いてた方と同じ感想を抱いた。上半身だけで走ってくるから、てけてけとはどういうことだろうか。いや、まず上半身だけの女子高生がいてたまるか。そんなの見る前から異常すぎて、近づくのか?
銀時は怪談が好きではない。怖いというよりつまらないからだ。決して怖いわけではない。断じて。現実味がない話、作り話だと分かっているのだ。それでも何故か、手が震えるのは今が電車内の冷房が効きすぎてるからだと、銀時は思い込む。