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    PoreZeolite

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    ブレワイで100年の封印の中、ガノさんの意識と会話するゼルさんのほんの〜りガノゼル

    哀れみは甘い囁き 哀れだな、という声が私にかけられた。そこに嘲笑の色は薄く、心の底から私を哀れんでいるのだろうという、静かな声色だった。怨念と呪詛の渦巻く、世界の時の流れから隔絶された場所で、私に話しかけられる存在など、ひとつしか無い。まさか、と驚きを胸に、何が哀れだと思うのですかと問うてみた。相手が相手だ、返事など期待してはいなかった。しかし、それは私の頬を撫ぜ、そうだな、貴様という存在そのものを俺は哀れもう、と返答を寄越した。私が驚いたのは、返事が返ってきたことではなく、それの手が、私に触れたその手が、懐かしさすら感じるほどに優しかったからだった。そう、まるで、父と母がかつてそうしてくれたかのような柔らかい感触は、それが厄災と呼ばれ、現に私をその怨念と呪詛で囲う存在であることを、一時忘れさせるほどに甘いものだった。
     貴様もやはり、ゼルダなのだな、という声が、私の意識をそれに戻させた。その声は郷愁の念を感じる、実に人間じみたものだと気がついた私は、なんとも幼い声で貴様も?と返した。幼児があれは何、これは何と好奇心の赴くままに疑問を投げかけるかのような有様に、妙な羞恥で顔が赤らむのを感じた。それは低く笑うと、我らの魂は必ず巡り合う運命だということだ、とどこか寂しげな色を混ぜた声で答え、いや、呪いと言うべきだな、と自嘲を滲ませた。私は腹に怒りが、苛立ちが湧き上がるのを感じた。呪い。呪いだと。それはお前がもたらしているものだ。今こうして、私を捕らえているものだ。それを呪いと言わずしてなんと言う。そして、この苛立ちはそのまま言葉となってそれにぶつけられていた。
     それは確かに厄災ガノンであるというのに、私と言葉を交わしている存在はガノンの影のような存在に思えた。いや、もしかすると、厄災ガノンこそが、この存在の影なのかもしれなかった。彼は私の苛立ちを静かに最後まで聞くと、そうだな、俺こそが呪い、それもまた間違いでは無い、と肯定した。私は怒りで忘れていた羞恥が呼び戻ってくるのを感じた。感情に任せて激昂するなど、まだ眠りの中にいる彼にぶつけた時、やめようと誓ったはずなのに。私の羞恥を知ってか知らずか、呪いの主たる彼は口を開く。俺の怨みと呪い、それと我らの魂にかけられた呪いは、また別のものだろうよ。
     渦が、目の前にある。そこから伸ばされた渦の枝が、私の右手を取って、そこに輝くしるしを撫ぜた。その渦は私を傷つける、害するものであり、私を喰らい尽くせばハイラルを手にかけるものだというのに、頬を撫ぜた時同様に、ひどく優しい感触だった。渦を振り払うことは、できただろう。拒絶の意志は、ようやく目覚めた私の力がすぐに反映し、渦を裂いて祓ったことだろう。それができなかったのは、優しい感触から流れ込んできた、哀しみにも似たものがあったからだった。もう流すまいと決意していた、涙が滲む。必死で零れ落ちるのだけは堪え、揺さぶられる心の芯を探す。ゼルダよ、常に己の中に柱となるものを持つのだ。それが己を保つ芯となる。二度と聞くことの叶わぬ、父の言葉が有難かった。
     これが無い世界を、望んだ者がいた。この輪廻から解放されることを願った者がいたのだ。ほとんど呟きのような、寂しい声だった。それは誰だとか、いつの話なのかとか、可能なのかとか、聞きたいことはたくさんあった。けれども、私の唇は半開きで震えたままで、喉は空気の通る音だけを発し、結果、沈黙を保った。その願いが、私という存在、王家が今世に至るまで受け継いできた伝統、巫女という存在を根本から否定するものであることを、理解しなかったわけではなかった。ただ、無才と言われ、役立たずと陰口を叩かれた私は、過去にその願いに通ずるものを、想わなかったかと言えば嘘になる。私は、彼が語った誰かの寂しい願望を、比定するだけの勇気も気概も、持ち合わせてはいなかった。
     沈黙が続き、ずっと変わらない怨念と呪詛の唸る音だけが私たちを包む。いつの間にか、私の手から渦は離れ、彼の気配と意識は暗闇に溶けて消えていった。虚空に伸ばされたままの手に光るしるしがやけに眩しくて、私は瞼の下に瞳を隠し、ただ封じるだけという今の職務を全うすることに力を注いだ。もう少し話ができたらよかったのに、と残念に思う心を頭の奥の奥にまで仕舞い込む。ゼルダ、あなたは見たでしょう。厄災ガノンが狡猾であるところを。これも、あなたの心を堕落させるための罠なのだから、と言い聞かせる。そう、私にはやらなければならないことがある。太古の昔より戦ってきた存在との対話は、ある意味では魅力的なことかもしれないが、それよりも、私は私が残してきた、託したものに力を、そして心を注がなければならないのだ。
     深呼吸をひとつすれば、私は眩い光に包まれた。怨念と呪詛の唸り声も、水を挟んでいるかのように和らいでゆく。あの存外に静かな声も、懐かしさすら感じた優しい感触も、私の中から遠ざかってゆく。意識が光で満たされる前に、哀れだなという声がまた聞こえた気がした。
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    PoreZeolite

    MAIKINGハムナプトラガノリンの書きたいシーンだけ突発で書いた
    ちゅ~~~~~~して
    ハムナプトラガノリン 一体、この半分干からびた身体のどこからそんな力が湧き出てくるのだろう。リンクは腰に回された腕を振りほどこうともがきながら、空を覆わんとする瘴気に戦慄した。その瘴気に触れ、足下に広がっていた青々とした草木が萎び、慌てて飛び立とうとしていた羽虫がぽとりと落ちる。断末魔の叫びだろうか、甲高い鳴き声をひとつ響かせ、空を飛ぶ鳥すらも堕ちていった。この瘴気は生命力を根こそぎ奪う、あらためてその力、恐ろしさを目の当たりにしたリンクは、思わず抵抗を止めて唾を飲み込んだ。
    「全て朽ちよ、ハイラル」
     短い言葉の中に、ありったけの憎悪が込められた声が天地を震わせる。リンクは憎悪の中に、無視できぬ悲痛な叫びを聞いたような気がしたが、何故そう感じたのかはよく説明できなかった。強いて言うならば、心の奥底、魂が、蘇った魔王の声より何かを受け取ったからと言うべきであろうか。雲にまで届くかと思うほどに吹き上がった瘴気が、もや状のものから何かを形作ってゆく。それは間近で見ているリンクはもちろん、離れた場所で見上げるゼルダ達にも、何であるのかわかった。
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