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    ハムナプトラガノリンの書きたいシーンだけ突発で書いた
    ちゅ~~~~~~して

    ハムナプトラガノリン 一体、この半分干からびた身体のどこからそんな力が湧き出てくるのだろう。リンクは腰に回された腕を振りほどこうともがきながら、空を覆わんとする瘴気に戦慄した。その瘴気に触れ、足下に広がっていた青々とした草木が萎び、慌てて飛び立とうとしていた羽虫がぽとりと落ちる。断末魔の叫びだろうか、甲高い鳴き声をひとつ響かせ、空を飛ぶ鳥すらも堕ちていった。この瘴気は生命力を根こそぎ奪う、あらためてその力、恐ろしさを目の当たりにしたリンクは、思わず抵抗を止めて唾を飲み込んだ。
    「全て朽ちよ、ハイラル」
     短い言葉の中に、ありったけの憎悪が込められた声が天地を震わせる。リンクは憎悪の中に、無視できぬ悲痛な叫びを聞いたような気がしたが、何故そう感じたのかはよく説明できなかった。強いて言うならば、心の奥底、魂が、蘇った魔王の声より何かを受け取ったからと言うべきであろうか。雲にまで届くかと思うほどに吹き上がった瘴気が、もや状のものから何かを形作ってゆく。それは間近で見ているリンクはもちろん、離れた場所で見上げるゼルダ達にも、何であるのかわかった。
     干からびた巨大な手だ。不完全なガノンドロフの半身から切り取ったように、その手は彼のものをそっくりそのまま写し取っていた。絶句するリンク、そしてゼルダ達の前で、これが幻などではないと見せつけるように、巨大な手は大地に爪を立て、土を抉る。驚愕から遅れてやってきた恐怖に身を竦ませる面々へ、更なる恐怖を与えんと、巨手はわざわざ指を使って這いずるように近づいていった。
    「だ、だめだ、やめろ!」
    「案ずるなリンク、お前を害する者はこれから我によって朽ち果てるのだ」
     巨手が向かっている先がゼルダ達の元であると認識したリンクは、慌ててガノンドロフの胸へ拳を叩きつけながら抗議する。しかし、ガノンドロフは意に介さず、それどころか見当違いの返答を寄こし、手を止める気配を見せはしない。命を、モノを朽ち果てさせる瘴気を放つ禍々しさとは裏腹に、リンクへと向ける視線は甘やかで、表情も柔らかいことが、より一層彼の持つ狂気を際立てているようで怖気が走った。だが、そうして身震いしている間にも、巨手は止まること無くリンクの大切な者達を害そうと指を動かしてゆく。節足動物の脚のような不気味さで迫る巨手は、瘴気をまき散らしながらゼルダの前へと辿り着いた。
     魔王の巨手を前に護衛の兵士、それからゼルダ自身も、恐怖を抑えつけて携えていた弓を構えて矢を放つ。ただの矢ではなく、先端に貴重で硬い鉱石を使った、魔力の籠もった強力な矢である。大型の魔物、ライネルとて怯ませることのできる矢を一斉に放たれたのだ、たとえ魔王の分身といえる巨手であっても、体勢を立て直す程度の時間は稼げよう。そう期待を込めて放たれた矢であったが、結果は虚しく、彼女たちを絶望に染めるものであった。瘴気の巨手は鉱石の矢を確かに受けたが、砂埃でも付いたかのように軽く払い落としてしまったのである。次の矢をつがえる間にも巨手は鋭い爪を大地に深々と突き刺しながら進み、ついには指先を持ち上げ弓を構える彼女達の真上へと覆い被り、今にも握り潰そうと節くれ立った関節を曲げ始めた。
    「んっ…」
     己の声にも拳にも耳を貸さず、期待していた鉱石の矢も聞かず、このまま為す術無く大切な者達を失うのかと心臓を潰さそうだったリンクであったが、ふと、ひとつの案が浮かび上がった。ガノンドロフは、蘇ったその時から己に強い執着を見せていた。リンク。彼の口から呼ばれる己の名前は、確かに己のものであるというのに別人を差しているかのような甘い響きだった。真相は知らないが、おそらく彼はリンクという、己と同じ名で、同じような見目の者を愛していた、否、今も愛しているのだろう。おぞましいまでの執着を抱え、目に映る全てのものを朽ち果てさせ、己を、リンクという名の者を、誰も害させぬようにするほどに。
     不本意であるが、ガノンドロフの最上が己であれば、己が全力を振り切って制止すれば止まるのかもしれない、そう結論づけたリンクは緩まぬ腕の拘束の中で覚悟を決めた。言葉は届かぬ、まともな会話も成立しない、拳程度では気をそらせない。ならば、どうあっても攻撃の気が散り、こちらに意識が向くようにすればよい。全力を振り切る、どうあってもこちらに意識を向ける、ふたつを組み合わせてリンクが導き出し、実行したものがガノンドロフへの口付けであった。
     結論から言うと、リンクの行動は最適解であったといえよう。リンクのやわらかな唇が、半分朽ちて歯列すら剥き出しになったガノンドロフの唇に触れた直後、瘴気の手はおろか広がり続けていた瘴気すらも霧散していった。目を閉じ、極力心を無にしてこみ上がる吐き気に似た嫌悪に耐えていたリンクは、細目でゼルダ達の無事を確認すると、そっとガノンドロフから離れようとした。
    「ふっ、ん、んっ!」
     離れかけた唇を、リンクの後頭部に回された手が頭ごと許さなかった。再び合わさった唇、そこを割開かれ、捻じ込まれた舌、掻き回される口内の感覚に目を見開いたリンクは、己を射貫くガノンドロフの視線に抵抗を忘れてしまう。全てを憎悪し、朽ち果てさせ、邪悪な力を振るう魔王の瞳には、リンクが無視できぬほどの悲しみと、とろけるような愛おしさで満ちていたのだ。その色を、己は知っている。この感覚を、身体は覚えている。半分朽ちた身体でも伝わる熱は、魂が覚えている。口付ける前まで嫌悪でいっぱいだったリンクの心には、いまや別のものが滑り込んで居座り、一時、彼を支配した。
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    PoreZeolite

    MAIKINGハムナプトラガノリンの書きたいシーンだけ突発で書いた
    ちゅ~~~~~~して
    ハムナプトラガノリン 一体、この半分干からびた身体のどこからそんな力が湧き出てくるのだろう。リンクは腰に回された腕を振りほどこうともがきながら、空を覆わんとする瘴気に戦慄した。その瘴気に触れ、足下に広がっていた青々とした草木が萎び、慌てて飛び立とうとしていた羽虫がぽとりと落ちる。断末魔の叫びだろうか、甲高い鳴き声をひとつ響かせ、空を飛ぶ鳥すらも堕ちていった。この瘴気は生命力を根こそぎ奪う、あらためてその力、恐ろしさを目の当たりにしたリンクは、思わず抵抗を止めて唾を飲み込んだ。
    「全て朽ちよ、ハイラル」
     短い言葉の中に、ありったけの憎悪が込められた声が天地を震わせる。リンクは憎悪の中に、無視できぬ悲痛な叫びを聞いたような気がしたが、何故そう感じたのかはよく説明できなかった。強いて言うならば、心の奥底、魂が、蘇った魔王の声より何かを受け取ったからと言うべきであろうか。雲にまで届くかと思うほどに吹き上がった瘴気が、もや状のものから何かを形作ってゆく。それは間近で見ているリンクはもちろん、離れた場所で見上げるゼルダ達にも、何であるのかわかった。
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