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    PoreZeolite

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    PoreZeolite

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    ガノゼルゼル導入
    ケツ叩いてくれ

    がのぜるぜる 争いが無いことは一般的に良いことであり、歓迎されるべきことである。無駄に失われる命が無く、血も流れず、笑い声の溢れる世界とは多数の人間達が理想とするものである。
    「はあ」
     理想そのままの世界とまではいかなかったが、最善だろうと思われる形で争いが終息した世界に、小さいが長い溜息がひとつ零された。実に残念そうな響きに満ちていたその溜息は、歓喜と安堵に溢れていた世界には似つかわしくないように思えたが、発した人物が何者なのかを知ったならば、なるほどと納得がいくだろう。ゲルドの王の寝所に足を踏み入れられる者とは限られているが、寝台で好き勝手に寝そべる権利を得ている者はなお少ない。溜息の主はそうした限られた者のうちの一人であった。長身であるゲルド人のなかでも、王たる男は更に体格が良い。彼に合わせてあつらえられた寝台は小柄である溜息の主を難なく受け止め、つまらなさそうに身体を転がす動きに軋みひとつ聞かせなかった。
     溜息の主は人形であった。人形とはいえ、王であり主であるガノンドロフが血肉を分け与え、人格も自我も付けてやった生き人形である。その姿はハイラルに突如として姿を現した、ハイラル王妃ソニアの遠縁という娘の映し鏡であったが、その娘を知る者が見れば一目瞭然なほど、仕草も言葉も異なるものであった。ガノンドロフがこの人形を作り上げた時は、文字通り人形として使われていた。人格は無く、当然自我も無く、主の意思で操られるがまま動く、便利な斥候であり、諜報者であり、攪乱者であった。ハイラルを内側から壊す算段で作られた人形であったが、その役割が消え去った今、彼女は与えられた自我で退屈という感情を持て余していたのである。
     ひとまずは和平が敷かれた世界であったが、主であるガノンドロフは、大人しくそれを受け入れるような男ではなかった。彼は苛烈な性を持っていたが、同時に忍耐強くもあった。強硬手段を取り、ハイラルの力の源たるゾナウの秘石を奪い取り、抗う者を蹴散らしての勝利を描いていた男であったが、和平の上に築かれた安寧に溺れ、腑抜けになったハイラルのはらわたを食い破ってやるのも悪くは無いと拳を解いたのである。その考えに至るまでには短かったが、実行するに至ったのはひとえに人形のお陰と言えよう。否、厳密に言うならば人形と、その元となった娘の働きがあるのだが、それはガノンドロフにとって予想外の働きであったのだった。
     長い溜息を再び吐いた人形は、寝台の外へ放り出した脚を上下させ、やわらかな布の音を連続で立てる。彼女は主の道具として生み出されたのだ、道具は使われなければしまい込まれるだけである。今がその状況であり、またただの道具ではなく意思のある人形は、使われないことを不満だと、退屈なのだと思っていたのである。
     彼女の願望は主のために動くこと、使われることであったが、自我を与えられてからは異なる欲望の洪水に溺れることとなった。元になった娘、ゼルダが持っている好奇心や探究心までも写し取ったのか、目をきらきらと輝かせた人形は心ある瞳に映るもの全てに興味を持った。とりわけ気に入ったのは、己の源流であるゼルダである。造形は同じであるというのに、あの子はなんて綺麗なのだろう。内側から輝くような肌に包まれた魂は、造りものである自分は持たないものだ。羽虫が炎に惹かれてふらりふらりと飛んでゆき、羽を焼かれて堕ちゆくように、私もあの子に惹かれて焼き落とされてしまうのかしら。それはなんと、甘美なことでしょう。人形はゼルダの姿を見かけるたびに、そうして胸の奥を熱く燃やしてため息をついていた。
     一方、当のゼルダはというと、人形に対して嫌悪ではなく憐憫の情を向けていた。都合よく生み出され、道具として使われ、気まぐれに心を与えられた被造物、それが彼女にとっての人形であった。人形なりの生き方、在り方を憐れむ傲慢な感情であることを、聡明な彼女は知っていたしその葛藤に少なからず苦しんだ。しかし、無邪気とも言える表情で己を慕う様子を見せる人形に、ゼルダはその優しい傲慢さを捨てきれずにいたのである。
     和平を敷く折に、人形の処遇をどうするのかは当然問題となった。ガノンドロフにとって、人形は気に入っている道具ではあるがまた作り直せるもの、悲哀を滲ませたラウルを前に、彼は平然とあれは消してやろうと言い放った。それに待ったをかけたのは何を隠そうゼルダである。一悶着はあったものの、生あるものを軽々しく消すべきでは無いという彼女の優しい傲慢さと、上機嫌な人形のここにいたいという欲望が、今日に至るまで人形が存在している理由であった。
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    PoreZeolite

    MAIKINGハムナプトラガノリンの書きたいシーンだけ突発で書いた
    ちゅ~~~~~~して
    ハムナプトラガノリン 一体、この半分干からびた身体のどこからそんな力が湧き出てくるのだろう。リンクは腰に回された腕を振りほどこうともがきながら、空を覆わんとする瘴気に戦慄した。その瘴気に触れ、足下に広がっていた青々とした草木が萎び、慌てて飛び立とうとしていた羽虫がぽとりと落ちる。断末魔の叫びだろうか、甲高い鳴き声をひとつ響かせ、空を飛ぶ鳥すらも堕ちていった。この瘴気は生命力を根こそぎ奪う、あらためてその力、恐ろしさを目の当たりにしたリンクは、思わず抵抗を止めて唾を飲み込んだ。
    「全て朽ちよ、ハイラル」
     短い言葉の中に、ありったけの憎悪が込められた声が天地を震わせる。リンクは憎悪の中に、無視できぬ悲痛な叫びを聞いたような気がしたが、何故そう感じたのかはよく説明できなかった。強いて言うならば、心の奥底、魂が、蘇った魔王の声より何かを受け取ったからと言うべきであろうか。雲にまで届くかと思うほどに吹き上がった瘴気が、もや状のものから何かを形作ってゆく。それは間近で見ているリンクはもちろん、離れた場所で見上げるゼルダ達にも、何であるのかわかった。
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