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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▷ルルハワネタ④

    ##夏の話
    ##第三者がいる話
    ##3001-5000文字

    修羅場おまけ▽「修羅場」の続き
    ▽ヌオルタはぐだおが好き
    ▽ヌオルタ視点です
    ▽ぐだキャスギル





    「………………寝た?」
    「ええ。二人共早々に夢の中、ってヤツですね」
    「よほどお疲れだったんでしょう……ギルガメッシュ王も、慣れない作業をしてくださってましたし」
    「いけませんね、つい他人も自分のように出来ると思ってしまいます」
    「金ピカ王も案外脆弱よなぁ。この程度、鬼である吾は屁でもないわ」
     英雄王は貴様と違って頭も使っているからな、などと牛若丸が煽り茨木童子が牙を剥こうとするのを宥めるマシュとロビンのいつものやつを聞き流しながらジャンヌ・オルタは溜め息を吐く。喧嘩になる前に「先輩が起きてしまいます」の一言で二人共静かになるから愉快ではある。
     ちらりとベッドへ目をやると、ここからでは二人の枕元は見えない。ただ、二人がかぶっているふとんがこんもりと山になっているから、仰向けではなく横を向いているのだろう、と推測する。
    「……二人共仲良く寝てるぜ」
    「なによ」
    「いや? 気になってるのかと思ってな」
    「別に気になりませんけど」
    「そうかい」
     そりゃ悪かったな、と呆れたように肩を竦めるロビンフッドを睨めつけて、原稿に向かう。からかうような、心を見透かしたような物言いは好きではない。後頭部に視線を感じるが、黙殺する。
    「なによ。邪魔するなら燃やすわよ」
    「……英雄王は部屋に返しても良かったんじゃねえの?」
     ぴた、と手が止まる。視線はまだ感じている。けれど顔は上げない。ひと呼吸置いて、再び手を動かす。
    「そんなの、非効率的でしょう。まとめて寝てもらった方が起こすのも手間が省けるわ」
    「……そういうことにしておこうかね」
    「アンタ、ホント腹立つわね……」
     少し燃やそうか、などという考えが過ぎるが理性で抑える。バーサーカーに変じていようが理性はあるのだ。
     この夏の間、結果的にではあるがそれなりの長期、あのマスターと生活を共にした。もちろんふたりきりではないしそれどころではない状況も数多くあったが、この夏の間、マスターの思考の中心にいたのは己であろうという確信がある。散策ついでの戦闘であれ本作りであれ、その中心にいたのはジャンヌ・オルタだ。まあ、他のことを考える余裕、割となかったし。
     思っていたのとはだいぶ違うが、共にした時間であることに変わりはない。だからこれで充分だ、などとは言うつもりもないが、少し温情をかけるくらいいいと思ったのだ。本作りを手伝うと言った英雄王の考えが己の想像するものであるなら、その気持ちはちょっとだけ解る。
    (…………いや、別に私はアイツのことなんて何とも思ってませんけど!)
     ガリ、と表面を滑ったペン先が想定外の線を引いて、ジャンヌ・オルタは舌打ちをしながらアンドゥボタンを押した。

    ***

     一時間後。そろそろ起こすわよ、というジャンヌ・オルタの冷えた声を合図に、ロビンフッドは飲料の買い出しを提案し、マシュと牛若丸がそれに付き添うと申し出た。茨木童子はいつの間にか床で丸くなっていたから放置して、ジャンヌ・オルタはベッドへ向かう。さて、どうやって起こしてやろうか。いきなりふとんをはぐ?芸がないわね……などと呟きながら、机からは見えなかった枕元へ回り込み、
    「なっ………………」
     ずさっ、と一歩後退する。「なっ、なっ、」と何度か言葉にならない声を発して、思わず周囲を見回す。買い出し組はしばらく戻らないだろう、茨木童子も……むにゃむにゃ口を動かして涎を垂らしている。こちらもとうぶん目を覚ましそうにない。
     この部屋で意識があるのは今己一人だ。
    (なによコレ、なんなのよコレ、いつもこんなんなワケ)
     動揺するジャンヌ・オルタの視線の先には、まだ眠り込んでいる立香とギルガメッシュがいる。それはそうだ。起こしていないのだから。そんなことはどうでもいい。ジャンヌ・オルタの動揺の原因は、立香の二の腕に頭を乗せて身を寄せるように眠っているギルガメッシュと、腕枕をする腕でその頭を大事そうに抱えている立香、と、ギルガメッシュの顔の傍に添えられた、がっつり指の組み合わさった二人の手。
    (いや、うん、知ってたわよ こいつらの関係! 知ってたけど、知ってたけどだから何)
     知っているから尚更二人の寝姿に言外の意味を見出してしまうのだが、顔面くまなく真っ赤に染めたジャンヌ・オルタがそこに気づくことはない。
     一人百面相をし、わたわたと無意味に両手をばたつかせるなどおかしな挙動のジャンヌ・オルタの前で立香とギルガメッシュは実に幸せそうに安らかに眠っている。
    「んん……」
     と、立香が呻くようにくぐもった声を漏らしたかと思えば、身じろいでギルガメッシュの頭を更に引き寄せた。もう充分くっついていると思うのだが、それでもまだ残っていた空間が詰まり、立香の鼻先がギルガメッシュの金髪へ埋まる。まるで額にくちづけでもしているような――
    「なんだ、起こさないのか? ならば吾が起こしてやろう!」
    「ッギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
     ジャンヌ・オルタの絶叫に、本人以外の全員がビクッと身体を跳ねさせた。
    「ななななななななななに オルタ 敵」
     飛び起きた立香が叫び、それと同時にベッドの周囲の空間が歪み、波打つ黄金の光がいくつも現れる。これは、ギルガメッシュの宝具、 
    (あ、ヤバイ)
     原稿、終わった―――― 
    「――タンマタンマタンマ おたくら何やっちゃってんの」
     バン、とドアを開けて飛び込んできたロビンフッドの慌てた声で、このループを諦めかけていたジャンヌ・オルタは我に返る。
    「てっ、敵じゃない! 敵じゃないわ」
    「て、敵じゃない……?」
    「違うわよ! ちょっと驚いただけよ!」
    「ちょっと、驚いた、だけ、だと……?」
     状況を把握できていない寝起きの立香に、叫ぶように言い放つジャンヌ・オルタを絶叫の原因になった茨木童子は信じられないものを見た驚きに満ちた目で見る。
    「なによ! 悪い 驚いたのよ!」
    「そ、そう? ならいいんだけど……王様、大丈夫らしいです」
     立香に言われ、こちらも寝起きで状況が解っていないギルガメッシュも腑に落ちない表情のまま宝具を収める。もし本当に敵襲だったら、あの全てから例の財宝が射出されていたのだろうか。真っ先に原稿の心配をしたが、部屋も無事ではなかっただろう。
    「……よく解りませんけどね、なんでもないならちょいと休憩にしましょうや」
     マスターもお目覚めのようですし、とロビンフッドが親指で品物の入っているらしい袋を示す。見るからに大きい。買ってくるのは飲料だけではなかったのか。
    「え、ええ、そうね! そのために買い出しに行ってもらったんですから。立香も目が覚めたんならなにか食べなさい。もたないわよ」
     うん、と返事をする立香の声を背にして足早に机に戻る。その立香へ、ロビンフッドがマシュ達を迎えに行ってくると告げていた。どうやらまだ購入したものがあるらしい。買い過ぎではないだろうか。などと思考して、ひと呼吸。
    (びっっっっっっっっっっくりした……)
     茨木童子は寝ているからと油断した。誰もいないからと油断した。幸せそうな二人の寝顔に油断した。そういえば、二人に気づかれていないだろうか。結果的に出歯亀めいたことをした気がする。不可抗力だが。見たくて見たんじゃない。
     ちら、と、こっそり様子を窺う。袋の中の食料を見ている立香が呑気に嬉しそうな笑顔を浮かべている。あの様子では気づいていないだろう。その傍らに腕を組んで立ち、背を丸めて立香の手元を覗き込んでいるギルガメッシュは、……どうなのか解らない。そもそもこちらは何を考えているのか理解の及ばないところもあるし、表情や態度で読み取れることの方が少ない。文句があるなら直接言ってくるだろう。
     三人から視線を伏せ、はあ、と溜め息をついたところで視線を感じてまた戻す。と、血よりも、炎よりも紅い双眸がこちらへ向いていた。正真正銘の全てを暴く瞳だ、と解っていても目が逸らせない。
     文句があるなら言いなさいよ、と睨んでみれば真紅が笑みの形に湾曲する。訝しむジャンヌ・オルタにギルガメッシュは唇の端も吊り上げ、
    『い』
    『う』
    『な』
     と、唇の形だけで言い、目を剥くジャンヌ・オルタを一瞥すると再び立香を見下ろして、そのサンドイッチはよこせといけしゃあしゃあと言い放った。そこへマシュ達を引き連れたロビンフッドが帰還し、室内は騒々しさを増す。
     その光景はどうということもないいつもの光景だが、小さく舌打ちをして、長めに息を吐く。こんなこと――かの英雄王が、惚れた相手に寄り添いたい、もしくは、寄り添っていられるだけで幸せだと考えているなど知ったところで何の得にもならないし、知りとうなかった。
    (……人間みたいなことしてんのね)
     英霊であることもサーヴァントであることも王であることも捨ててないし捨てられないし、捨てたいとも思ってないだろうし、マスターだってマスターのままなのに。
    「オルタ」
     顔を上げる。澄んだ明るい蒼色がこちらを見ている。
    「コレ、オレ達だけじゃ食べきれないから、オルタも食べてくれない?」
    「はいはい、アンタ達見境なく買い過ぎなのよ。計画性を持ちなさい」
     机を離れて皆の方へ。どれにする?と問いかけてくる立香は見るからに浮かれている。いたく楽しそうだ。こんなことでそんなに楽しそうに笑えるなんてまるで子どもじゃない。ねえ。
    (でも、そういうとこが好きなんでしょ。あーあ)
     訂正。案外解りやすいわ、英雄王。
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