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    えんどう

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    えんどう

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    ▽人理修復終わった頃のちょっといかがわしい話

    ##3001-5000文字

    手を出してもらえない王様▽人理修復終わった頃の話
    ▽ちょっといかがわしい
    ▽ぐだキャスギル






     すべてが順調だった、とは言えないが立香たちの長いような短いような人理修復の旅は一応の終わりを見せた。人理焼却は破却され、人類史はこれからも存続する事が確定した。そんな久方振りに訪れた安寧の中で、ギルガメッシュは(立香の)自室にてその帰りを待っていた。出撃からの帰りを待っているのではない。単純に、立香が風呂から戻るのを待っている。
     人理修復後、カルデアのサーヴァントたちはお役御免とばかりに座へと帰還する者と、見た目だけならまだまだ頼りなく見える立香の行く末を案じカルデアに留まる事を選んだ者とに別れた。カルデアに残ったその誰もが立香を気にかけている者である事からも察するにあまりあるが、人理修復後の立香は引っ張りだこだった。やれ祝いだ宴だ飲み会だ酒だ呑めないなら飯だと連日連夜大騒ぎで、それに引きずり回された立香は自室に戻ってもただいまとおやすみなさいを言うだけですぐに泥のように眠ってしまうばかりで、せっかく想いが通じたのいうのに睦み合うなど夢のまた夢に思えた。
     そんな立香もようやく解放され、大騒ぎも落ち着きを見せたのがようやく、ようやく今日の事だった。あれから既に一週間は過ぎている。正確に言えば十日ほど過ぎている。つまり、あの日以来、今宵やっとふたりきりで夜が過ごせるのだ。これを期待せずしていつ期待しよう。――否、期待などしていない。そんな生娘のような事をこの我がする筈がない。とギルガメッシュは思っているものの、先程から立ち上がっては部屋の中を歩いてみたり、ライブラリから持ち出したものや作家陣やスタッフから強奪捧げられた書や書類を読み始めたかと思えばすぐに放り投げたり、蔵から石板を出しては文字もロクに追わずにしまい、宝を出しては一瞥してしまうなど、落ち着いていないのは明らかだった。
     立香はまだか、と叫びたいのを堪えつつ部屋を三周ほどした時、ガチャンと解錠される音と空気の抜けるような音をさせて扉が開いた。開く直前にベッドに飛び込んだギルガメッシュはあたかもそこで寛いでいた風を装う。が、室内へ入った立香は部屋に残る勢いのようなものを感じて首をひねった。しかし目の前のギルガメッシュは寛いでいる風なのである。どこからどう見ても寛いでいる。王がそのようにするのだから間違いなどない。立香も気のせいと断じてベッドへ歩み寄った。まだ湿る髪をタオルで拭きながら、ベッドの縁へ腰を下ろす。
    「……ギルガメッシュ王」
    「なんだ」
     タオルの隙間から覗き見るような立香に先程の行動が気づかれていないようでギルガメッシュは安堵する。いま立香の上半身はインナーのみで、鍛え上げられたとは言えないが長旅で培われたのであろう筋肉が浮いて、なかなかに男らしい背中を晒していた。今からこれに抱かれるのだ、と思うと期待に胸が――否、期待などしていない。断じて。
    「お待たせしてすみません」
    「誰が貴様など待つか。今眠りに就こうとしていたところよ」
     散らばっている書籍や書類の数でなかなかの時間を過ごしていたことは明白なのだが、そう言われては立香は困ったように眉尻を下げて笑うしかない。
    「そんな事言わないでくださいよ。せっかくやっとふたりきりになれたのに」
     言いながら、ベッドの重しになっている紙類たちをひとまとめにしていく。その様子を眺めながらなんと立香も同じ気持ちであったのかとギルガメッシュは感慨に浸――ってなどいない。断じて立香とゆったりした時間を過ごせる事に喜びなど感じていない。いないったらいない。
     まとめた書籍と書類をテーブルに積み上げて置き、立香はベッドへ乗り上げる。そのままギルガメッシュの身体を跨ぎ、明かりを遮りながら見下ろした。水面の色をした深く澄んだ蒼い瞳がギルガメッシュを映す。
    「……もう少し、起きてられますか」
    「……立香がどうしてもと言うなら、考えてやらん事もない」
     目も意識も隅々まで冴え渡っている。今エマージェンシーコールが鳴り響いてもすぐに飛び出せる。そんな空気の読めない事をされたら現地で何をするか解らないが。それに、元々睡眠を必要としない身体だ。それでも眠るのはただ習慣的に眠っているだけだ。立香もそれは解っているはずなのに、ギルガメッシュの習慣を尊重してくれている。その心掛けは実に殊勝である。ので、眠らずにいるか否か考えてやらん事もない。待っていた事などすっかり棚上げである。
    「じゃあもう少し起きててください。王様、……ギルガメッシュ王」
     立香のまとう空気が変わる。陽の射す海原のような瞳の奥に炎が灯った。それを見留めてギルガメッシュは口角の片側を持ち上げる。実に好い眼だ。
    「…………キス、してもいいですか」
    「そういう事は空気を読め、バカ者」
     不器用な誘いも手馴れていないようで好い。ようで、ではなく実際手慣れてはいないだろう。手慣れていたところで、立香の経験など過去に何をしていようがギルガメッシュにとっては児戯のようなものだ。そんな事は知った事ではない。肝心なのはこれからの事である。これからの立香を如何にギルガメッシュの好む男に仕立て上げるかだ。
     両手を伸べれば立香が身体を屈めて顔を寄せる。その首へ腕を回して残る距離で視線を絡め合えば立香が照れくさそうに微笑った。この程度で照れてどうする。が、初々しくて大変好い。立香のそういう、朴訥なところは好いと思っている。そうでなければ立香ではない、とすら思う。
     などと考えている間におずおずと唇が重ねられる。たったそれだけでは挨拶のようなもの――であるはずが、触れた箇所からとろりと溶けてしまいそうな錯覚を覚えて目を眇める。ただの、幼子の戯れのようなくちづけひとつで。ああ、認めよう。どうやら待ちすぎていたらしい。無論、それを告げるつもりはないが。
     目を眇めたギルガメッシュと反対に、立香は元々大きな目を更に見開く。その陽の射す溟海を湛えた瞳が、ぼやけているせいでなおさら零れ落ちてしまいそうだ。しかし、いつまでもただ重ね合わせているだけでは惜しい。立香の唇を舌先でなぞれば引き結ばれていた唇が開く。舌を絡める事は覚えていたらしい。まあ、忘れていたらまた教え込むまでだが。目を伏せたまま立香の様子を窺うギルガメッシュの前で、立香はぎゅっと目を瞑って一生懸命に応えている。その様も初々しくて好い。もし誰かに教え込まれてでもいようものなら、塗り替えてやるところだった。こうでなくては興醒めだ。
     舌を絡め、表面を擦り合わせながらくちづけを深くしていく。立香の癖毛に指を差し込めばまだ湿っていて、ひやりとした感触を掌へ伝えた。その髪を撫で梳き角度を変えて深く交わらせれば耳元でちり、と耳飾りが音を立てた。立香の舌へ柔らかく歯を立てる。歯列の裏側をなぞり上顎をくすぐってやればすぐにそれを真似してくる。この程度の戯れで必死なのだろう、と思えば笑みが零れる。しかし上顎はくすぐったい。舌先でくるくると撫でられれば声が漏れた。
    「ん、んんっ……」
     その反応に気を良くしたのか立香は執拗に口内をまさぐってくる。舌の表面でなく裏側まで舌を差し込み、縁をなぞる。どこかで覚えた、というよりは今この場でギルガメッシュの反応を窺いながら探っているのだろう。立香は飲み込みが早い。飲み下せなかった二人分の唾液が唇の端から流れ落ちる。しかしこの程度、戯れに過ぎない。――筈だったのだが。
    「ん、んぅ、ん、んむ、ん、く、」
     ちゅくちゅくと音を立てられて、舌先まで丹念に舐め上げられれば脳の芯が痺れてくる。立香が殆ど唇を離さないせいで呼吸もままならない。それは立香も同じ筈なのだが、気づけばされるがままになっていた。眇めた眼で立香を窺い見れば目があい、笑みの形に歪められた。余裕が出てきたのだろう。生意気な、と思う半分、脳内は心地よさで占められている。僅かな息継ぎの間に漏れる吐息は共に熱い。
    「ん、……りつか、」
     もうよい、という言葉すら唇に飲まれる。舌に歯を立てられ唇を音を立てて優しく食まれる。舌を吸われる、はて、くちづけとはこんなに心地よいものだっただろうか。下腹部に熱を集めるものだっただろうか。身体を跨ぐ立香の脚の下でギルガメッシュは己の脚を擦り合わせる。早く次に進んで欲しかった。決定的な快楽が欲しかった。立香には待たされてばかりだが、ここでも待たされるのか。与えられるだけをただ待つのは、性に合わない、筈なのだが。
    「王さま……」
     唇の合間で熱い吐息と共に呼ばれる。余裕かと思っていたが立香の声は切羽詰まっていた。これは良い流れではないだろうか。大変良い流れではないのだろうか。そこへきて立香はようやく唇を解放する。つと唾液が舌先から垂れ落ちて二人を繋いだ。自らの唇の上へ落ちてきたそれをギルガメッシュが舐めとる間に、立香はギルガメッシュの口の端から溢れた唾液を舐めとってもう一度唇に触れてくる。触れるだけだったが、離れるのをほんの僅か惜しいと思ってしまった。そしてまた立香は顔を離し、ギルガメッシュは見下ろされる。誰かに見下ろされるなどいつぶりだろうか。組み敷かれた記憶は殆どない。絡まる糸のように見つめあう。これはもう、この後はもう、交合するしかあるまい。鼓動が早まったりなどは決してしないが、心音はうるさいほどに聞こえてきた。期待など、していない。照明を背に影を落とす立香は、凪いだ眼で見つめてくる。表情はとても穏やかで、満足気だった。
     …………………………満足気?
     そんな満足気な表情を浮かべた立香は僅かに嫌な予感を抱いたギルガメッシュの身体から降り、壁のパネルを操作して室内の照明を落とす。なるほど暗闇であれば雰囲気も出るというもの。なかなかに気が利いているではないか。嫌な予感は杞憂であったか。そう思考するギルガメッシュの傍らで、立香は四つん這いの状態でギルガメッシュを見下ろす。そうだ、それでいい。
    「王様、手を繋いでもいいですか?」
    「……構わん。好きにせよ」
     立香の右手がギルガメッシュの左手を取り、指を絡めて握り込む。顔の横に縫い止められればなるほど、この状態で事に及ぶつもりか。そういう趣向か。悪くはない。握り合わせた立香の掌は熱いほどに体温を持っていた。そのまま、ぎゅ、と握り込まれる。
    「……この手、もう離さなくてもいいんですよね」
    「たわけ。…………問うまでもなかろう」
     ふへ、と妙な笑みを漏らした立香の情けない顔にやはり嫌な予感がする。こんな戯言を交わしていれば熱も醒めてしまうではないか。
    「ギルガメッシュ王、オレは貴方の事が大好きですから。もう絶対に離しません」
    「ふん。ならば精々励め、立香」
     おや?と思いつつも平静を装って返せば立香は満足気に目を細める。非常に満足気である。大層満たされた顔である。これは、もしかして。いやまさか。でも、もしかして。
    「それじゃあ、おやすみなさい、王様」
     やはり、そうらしい。寝るつもりだこの男。ここまで煽っておいて寝るつもりだ。やっとふたりきりになれたと言うのに、寝るつもりだ。手を繋いだまま、隣へ横たわった立香に片腕で抱き込まれる。体温が間近に感じられる。それは良い。胸の奥まで立香の高い体温が移りそうだ。それは好い。が、ギルガメッシュをぎゅうと抱き寄せた立香はギルガメッシュが戸惑う間にもう寝息を立てている。寝た。寝てしまった。寝つきが良すぎだ。おやすみ三秒か。
    「まさか……そのような事が」
     誰しもが讃美し崇め称え、手を伸ばすこの至高の王に、玉体に、手を伸ばしておきながら、いや手は繋がれているが、手を取りながら、何もせずに寝るとはいったいどういう事なのだ。
     あまりの事にやや混乱しながらギルガメッシュは立香の寝顔を見遣る。実に安らかな寝顔である。微笑んですらいる。非常に満たされた顔である。よい寝顔だ。なんという事だ。
    「どういう事なのだ、立香……」
     呆然と呟くギルガメッシュの言葉に、立香は言葉にならないむにゃむにゃとした寝言で応えたのだった。
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