ホム+ぐだ♀️曲パロ私が覚えている一番古い記憶は男がわたしを否定しているシーンからだった。
「マイガールの兄弟なら妹がよかったのだけれど……」
妹?私は男だから弟になるのか。この男は親になる……複雑だ。
見下ろす目を見返す。目をそらせば敗けだ。男が反らすまでは見続けやる。やがて諦めたのは男が先だった。ため息をついて今度は私と目線を合わせてきた。
「分かったよ……君を引き取ろう。あの子の光になってくれるととても助かるんだがね」
あの子?それは誰だ?聞いても答えてくれなくて、手続きをそばで聞いて分かったのは男の名前がジェームズ・モリアーティってことくらいだった。
※※
連れていかれたのは一軒家だ。
ここで待つようにと玄関口で止められる。少しの間を私にしては大人しく待っていると奥の部屋からジェームズ氏に手を引かれて少女が出てきた。
彼女が私の姉になる人物らしい。
「マイガールあの子が今日から君の弟になるんだよ」
「弟?」
ぱちぱちと瞬きをして私を彼女は見る。
よろしくと声を出せば、彼女ーー姉は照れくらそうに笑った。
「こんにちは!はじめまして!立香だよ。よろしくね、ええっと」
私の名前を呼ぼうとして姉は困っていた。私も名前を告げていないからそれは当然だ。
「ホームズ。彼はホームズだよ、立香。呼んであげなさい、きっと喜ぶよ」
「うん。ホームズ」
立香から呼ばれたこの日から私は立香の弟ホームズとして生活することになった。
※※
姉との散歩は私の日課だ。家にいることよりも外の妨が謎や不思議が多い。姉と繋がっているのに私は我を忘れて先に駆け出してしまう。
「待って……待ってよホームズ!」
姉の静止も聞けなくて先に先にと進む。彼女がゆっくりとしか進めないのがもどかしくて聞かない振りだ。小さな段差もかけ降りる。
「わっ」
姉の声と同時に繋がれた私も後ろに引っ張られる。
――姉さん?
好奇心よりも姉の声が気になって振り返る。
「う……っ」
姉が呻いて転がっていた。顔も服も土で汚れてしまっている。段差で転んでしまったようだ。
「ホームズ?」
手探りで弟を、私を探す姉にここにいると声をあげてすぐに駆け寄る。彼女の手に触れれば、すぐに彼女は私の身体を優しく撫でた。
「ホームズよかったぁ」
姉は心の底から安心していた。
「ごめんね。ホームズが早く行きたいのも知ってるのに……」
ちがう。私のせいだ。すまない。
伝えても姉には伝わらない。私が擦りよせる身体をぎゅっと抱き締めてくれるだけだ。
「私こんな段差も分からないの……見えにくいの……こんなお姉ちゃんでごめんね」
小さく姉が呟く。私の耳にはばっちり聞こえていた。いつもの元気な姉の弱々しい姿を見たくない。
ぐすっと泣いている音。泣き止むまで私は寄り添うことしか出来なかった。
それからずっと私と姉は一緒にいた。何をするにも一緒だった。
※※
「ホームズは星って見たことある?」
見たことあるとも。
「ダディがね、遠い遠い所の光がここまで届くんだって。どんな光なんだろ?」
様々な強さの光だよ。沢山の光が空一面に揃ってる。姉さんが見たらきっと驚くと思う。
見上げると夜空に星たちが広がっている。都会では見れないらしいが、片田舎のここは街灯がないおかげて見れるそうだ。
星のおかげで少し明るくなる世界だが姉の目で見るには星の光は弱かった。晴れた日も曇り、雨の日でも変わらず真っ暗だと姉は言う。
叶わない願いでもいつか姉さんと星空を見ることが出来ればいいと思う。