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    きふゆ

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    きふゆ

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    過去に出したうちのカルデア設定本の作品の加筆修正分です。

    マリーさんとジャンヌ・オルタ・サンタリリィがお茶会している話「ねぇねぇ、私いいこと思いついたの」
     キャスター水着マリーは唐突に両手をパンと叩いた。昼時も過ぎたカルデア内の食堂。魔力補給や休憩するために何人かサーヴァントとスタッフがいた中。マリーの声が食堂に響く。
    「何を思いついたのですか?」
     マリーの声に聞き直したのはジャンヌオルタ・サンタリリィだ。彼女がちょうどマリーの向かい側に座っていてマリーとアフタヌーンティーをしていた。
    「サンタリリィは夏の遊びを知らないでしょう?」
    「むー確かに私はサンタなので、夏の遊びはちょっぴりしか知らないかもですが……」
    「ごめんなさい意地悪しているつもりはないのよ」
    「分かっています」
     マリーが例えばジャンヌオルタみたいに意地悪するとは思っていない。素直に答えれば、マリーはありがとうと微笑み、サンタリリィの前にある小皿の上に自分のマカロンを一つ置いた。意地悪をしてしまったお詫びだろう。ピンク色のマカロンはサンタリリィの小皿になかった種類だ。
    「ありがとうございます」
    「どういたしまして」
     マリーにお礼を言った後に、サンタリリィはマカロンを手に取る。一口で食べるのは勿体ないので一口食べて味わって残りを食べる。料理が得意なサーヴァントが作ったマカロンはとても美味しくて、んーっとサンタリリィは声が出る。美味しくて嬉しい気持ちのままにミルクティーを飲む。
     ほんのり甘いミルクティーもサンタリリィのお気に入りだ。ほぅと一息ついたところで、マリーがずっと微笑ましそうにサンタリリィの様子を見ていたことに気付いた。
    (うっ見られていました)
     食べている姿をじっと見られていたことに恥ずかしくなって、さっきの話に戻すことにした。
    「そ、それで夏の遊びって何をするんですか?」
    「「そう! 皆で一緒にビーチボールをして遊びましょう?」
    「ビーチボール?」
     マリーの一言で食堂にいたメンバーの動きが、空気が固まった気がしたのは
    「ビーチボールってなんですか?」
     サンタリリィは気になってマリーに質問した。夏の遊びというのだから、何かのゲームなのだろう。夏を象徴する水着で召喚されたマリーが言うことは、冬に召喚されたサンタリリィには知らないことばかりだ。
    「あ、ばか……!」
     サンタリリィの質問をした瞬間、小さな声が聞こえた。近くに座っていたロビンフッドの声だ。どっか焦ったような声だった。
    (どうしたんでしょう?)
     サンタリリィがチラッとロビンフッドの方を見たら気まずそうに目をそらし、彼の宝具でもあるフードで顔を隠した。
    (あとで聞いてみましょう)
     ロビンフッドのあからさまな態度も気になったサンタリリィだが、マリーに話を振っておきながら別のサーヴァントに話しかけるなんてマナー違反だ。あとで聞いてみようと思いながら、マリーの方を見直す。
     マリーはサンタリリィが興味を持ったことが嬉しいらしい。青の瞳をキラキラと輝かせてサンタリリィを見た。
    「あら、サンタリリィ! ビーチボールは初めてなの?」
    「はい。それが夏の遊びですか?」
    「そうよ! 浜辺で一緒にビニールボールで遊ぶの!」
     マリーは椅子から立ち上がって両手を空中に差し出した。手の中に落ちてきたのは青いビーチボール。
    「これがビーチボールよ」
     マリーがぎゅっとボールを抱きしめながら言う。そのボールにサンタリリィもすごく見覚えがあった。
    「マリーさんそれって……戦闘に使っている武器じゃないですか……?」
     光輝いていないけれど、水着マリーが持っているボールは、彼女が戦闘の時によく見かけるものだ。そのボールを敵にぶつけて何体もの敵を倒しているのをサンタリリィは見ている。
    「戦闘……?」
     水着マリーはサンタリリィの言葉に不思議そうに首を傾げる。あれ何かおかしいことを言ったのだろうか。サンタリリィもマリーと同じように首を横に傾げる。
    「マリー。ビーチバレーをするには今日はシミュレーターの予約が埋まっていたはずですよ」
     二人が向かい合って首を傾げ合った所に声がかかる。マリー側の席で休憩していたガウェインだ。マリーはガウェインの方を見る。
    「あらそうなの?」
    「えぇ、モードレッドが予約できなかったと嘆いていましたから」
     ガウェインの説明にどこからか「おい変なこと言うな糞真面目!」と悪態着いた声が聞こえた。爽やかな笑みを浮かべマリーとサンタリリィがいるテーブルへと近づく。
    「けど、困ったわ。サンタリリィに夏を楽しんでもらえないわ……どうしましょう」
    「夏を……?」
     夏の知識は持っている。カルデアではそもそも季節は関係ないのだが……。水着マリーにとっては大切なことのようだった。
    「サンタリリィは冬に生まれたサーヴァントでしょ?だから夏の遊びを一緒に楽しみたかったのに……」
     残念そうに言ったマリーは手元のビーチボールを消した。マリーが残念にしているのを見てサンタリリィも少しだけ残念だった。二人の残念そうな姿を見ていたガウェインが考えてから口を開く。
    「……では趣向を変えてみてはいかがでしょうか?」
    「趣向?」
     ガウェインはサンタリリィをちらりと見てから水着マリーを見た。
    「かき氷なんてのはいかががでしょう? サンタリリィも食べたことありますか?」
     前半は水着マリー、後半はサンタリリィに向けてガウェインは言った。後半部分でまたガウェインはサンタリリィを見た。頷いてほしいといっているような目だった。それに逆らうほどサンタリリィは悪いサーヴァントではない。サンタリリィは大きく首を縦に振った。
    「かき氷食べたことないです。美味しいんですか?」
     聖杯からの知識はあるが、食べたことはない。今もお菓子は食べているけれど、まだまだ食べられる。
    「あら食べたことないかしら?」
    「はい! 食べてみたいです」
    「サンタリリィもこう言っていますので、かき氷を作りませんか?」
    「そうね! じゃあ次のお菓子はかき氷に決まりね!」
     マリーが嬉しそうに言うものだからサンタリリィも次が楽しみになった。
    「約束ですからね」
    「えぇ約束よ」
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    ねこの

    PROGRESSキーボードが来るまでストップノウム・カルデアは閉鎖された空間だ。外気は通らず、日光など取り入れられる道理も無い。施設内に疑似日光を再現できる部屋は有るが、あくまで疑似だ。シミュレーターなんかもそうだが、どれだけ限り無く本物に近くとも欺瞞に過ぎない。
     漂白された地球が一体どうなっているのかを斎藤は知らなかった。聞いてもきっと分からないだろう。記憶にあるよりもずっと技術の進んだ施設は便利だが味気ない。昼も夜も同じよう室内を照らす照明も、人間に害を及ぼさぬよう常に働く空気清浄機もよくできていると思うものの、揺らめく火を眺めたくなる。或いは様々なものが混じった土のにおいを嗅ぎたくなった。思えばシミュレーターはこの辺りが足りない気がする。エネミーを斬ったとて血や臓物の臭いが鼻の奥にこびりつく感触は無い。
     レイシフトに手を上げたのもそういう理由だ。今回は多少の揺らぎが観測された土地の調査とあって緊張感が薄い。ベースキャンプを作り、ここを拠点に数日間の探索を行う。野営には慣れているのか、随分と手際が良かった。
     頭上には晴れ晴れとした晴天が広がっている。放牧地なのか草が青々と生い茂り、寝転べば心地良さそうだ。敵性生物の気配 9055