マリーさんと新宿のアーチャーがお茶会している話「ムッシュお砂糖は幾つ必要かしら?」
にこやかに尋ねるマリーにアーチャーモリアーティは少しだけ間を置いておいてから。
「いやストレートで頼むよ、王妃」
と答えた。
「ふふっ、了解したわ」
真っ白なティーポットを傾けて紅茶を注ぐマリーと、その向かい側にモリアーティ。マリーが、サーヴァントカルデア職員を誘って行われる小さなお茶会は、カルデアの恒例行事だ。今回のターゲット……もといゲストに選ばれたのは素材周回帰りのモリアーティだった。
「どうぞ召し上がってくださいな」
モリアーティの目の前に紅茶と小皿が差し出される。小皿には一回り小さめの茶色い丸い物がのっていた。
「ありがとう。こちらは何かな?」
「今日のお菓子はマスターの故郷のお菓子なの。どら焼きという、あんこを挟んだお菓子らしいわ」
「ほぅマスター君の」
マスターの故郷のお菓子と聞いてモリアーティは興味がわいた。だが、せっかく王妃が入れてくれた先に紅茶を飲んでからとティーカップに手を取る。一口飲む。
「どうかしら?」
「とても美味しいよ」
「よかった。不安だったの」
モリアーティの感想を聞いてからマリーも紅茶を飲んでいる。うん、美味しいと呟いているマリー。
「……そういえば今回のティータイムは私一人かな?」
「えぇ。皆忙しいみたいで、けど後でマスターが来るかもと言っていたわ」
「ほう」
マスターの名前が出てきたことでモリアーティは本当なら早めにこのお茶会を退席しようかと思っていた。
「ふふっもう少しだけいてくださるかしら?」
モリアーティの心境を予想したようなマリーの言葉にモリアーティは無言を通すことにした。この王妃はよく心境を察していることが多いのでモリアーティは内心苦手視していた。
「マリーで構わないのにっていつも言っているのに、ムッシュはいつも呼んでくれないわよね? 寂しいわ」
マリーの言葉にモリアーティは一瞬だけ動きを止める。
「流石に王妃を呼び捨てには出来ないさ」
「今は王妃ではなくてマスターのサーヴァントですもの。関係ないわ」
「では、いつか……」
「えぇそれならいつかを楽しみにしているわ」