熱源はどこに?西風騎士団の主席錬金術師が使っている工房付近が、まるで暖炉の中で燃える炎のような熱さになっている。
とは、同じく錬金術師を名乗るスクロースからもたらされた情報だった。騎士団本部の執務室で書類整理を淡々と行っていたガイアは、なんとかできませんかと相談してくる丸いメガネの少女に、そうだなあと呑気に返答する。
「普段は雪山に引きこもってばかりいるし、たまには反対の環境に身を置いてみたいんじゃないか?」
「そんな適当な理由ではないはずです!」
アルベドのことを先生と呼ぶ至極真っ当な師弟関係――と思っているのは目の前の緑髪を揺らす少女だけだろうが――を築いている彼女がわっと喚くと、インクに浸したペン先を渋々置いて、わかったよとガイアは書類を投げた。
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