これからのおれたちは(後)【三. 対等であること】
寝ぼけまなこを擦るカリムの跳ねた髪にミストをかける。細い髪に櫛を通せば、朝の柔らかな日差しを受けたパールグレイがきらきらと光って見える。
あの屋敷で寝起きするカリムには毎朝数人の使用人がついて身支度を整えていた。ミドルスクールに進学した頃から従者見習いとして一通りの仕事をやらされていたジャミルは、カリムのベッドのシーツを替え、寝巻を回収し、部屋の掃除を担当していた時期があった。ぼんやりとしたまま黙って肌着を着せられるカリムを横目に眺めていると、ジャミルとカリムはまるで別の生き物だと、そんな風に感じたものである。ただ、ジャミルが朝、仕事のために部屋に入るたび、カリムが朝食をとるため部屋を出ていくたび、おはよう、また後で、とジャミルだけに視線を向けていつもの笑顔を浮かべるものだから、ジャミルは使用人として頭を下げるべきか、友人として笑みを返すべきか、どっちつかずの心地でいつも目を伏せ頷いたのだった。
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