Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    tsukino_fuki913

    @tsukino_fuki913

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 😊 💚 💙
    POIPOI 6

    tsukino_fuki913

    ☆quiet follow

    診断メーカー:「RTされたら指定された攻めのセリフでCPの作品を書く」
    いただいたお題:「6RTで『お前の望むようにしてやろう。さあ何をしてほしいか言ってみろ』」
    登場人物:
    不死川実弥:地上で暮らす男。ただの人間だと思っていたが、実は……。
    冨岡義勇:天空で暮らす天空の池をつかさどる神様の跡継ぎ。
    冨岡蔦子:天空で暮らす天女。義勇の姉。
    鱗滝老:天空の池をつかさどる神の前任。義勇と蔦子の後見人。

    羽衣だけが知っている「……痛ったたた……」
    姉に借りた羽衣を使って空を飛ぶ練習をしているうちに、風に煽られて地上へと墜ちてしまった。墜ちた場所には誰もおらず、人間を傷つけることがなかったのは幸いだった。

    俺は冨岡義勇。天空の池をつかさどる神様だった両親を早くに亡くし、両親の前任をしていた鱗滝老に姉とともに引き取られ、神様になるための修業をしている。神様になる修業、と言っても、姉の方は羽衣を使って空を舞う練習を、俺の方は結界を破って中に入ろうとしてくる荒くれ者を討伐するための剣技を磨くことが中心だった。今日は、鱗滝さんから休息の日にする、と言われ、前から姉の羽衣を使って空を飛んでみたかった俺は、こっそりと姉の羽衣を借りたのだった。しかし、実は、羽衣を使って空を飛ぶには、それなりの体幹がいるらしい。つまり、どんなに練習をしても今まで一度も落ちたことのない姉は、失敗した俺よりも体幹の筋肉があるということだ。ほっそりした柔らかい体つきの姉であっても、男の俺よりもそれなりの筋力があるのか、と、地上に落ちて初めてその事実を知った。

    「ふう……しかし、ここは、一体……?」
    墜ちてしまったことは、自分にはまだ羽衣を使いこなすだけの筋力がないと思い知らされるようで恥ずかしく悲しかったが、なんとしても天空に戻らなければ。そう思いながら辺りを見回したが、森の奥のその場所は、人間どころか神様の声を聴くことができる動物さえもいないようなだだっ広い野原だった。と、その時。

    「ったく……。誰だよォ、こんなところに墜ちてきたのは……」
    舌打ちをしてぶつぶつ文句を言い、頭をガリガリと掻きながら、茂みの奥から一人の男が姿を現した。白銀の美しい髪の色に、紫色の瞳。顔には傷があり、一見すると強面だが、体中から甘い香りと優し気な空気がにじみ出ている。その気配に、俺は慌てて隠れようとしたが、周りには身を隠すものが何もなく、その場で立ち尽くしてしまった。つい、と視線が合い、俺は雷で撃たれたかのような衝撃を感じて動けなくなった。
    その紫の瞳は、俺を見ると驚いたような顔をしたが、それから気持ちを立て直したようで、ふ、と口元を緩めて俺の方へと歩いてくる。……この男は、人間、なのか……?空から落ちてきたであろう自分を見ても驚くことなく、真っすぐに自分へ向かってやってくるその男に、俺の目もくぎ付けになった。金縛りにあったかのように動けずにいる俺に対して、その男はふー、と息を吹きかけた。すると、硬直していた体が楽になり、その反動で思わず地面にぺたりと座り込んでしまった。


    「あー、悪ィなァ、驚かせちまったな」
    力が抜けて動けなくなった俺を見て、その男はしゃがみ込んで視線を合わせてきた。ぽん、と頭に手を置くと、姉が俺にするみたいに頭を撫でてくれる。じんわりとその手のひらから熱が伝わり、心までぽかぽかとするようだった。
    よいしょ、とその男は俺の腕を掴んで立たせると、ぽんぽんと体を払って木の枝や土埃を払ってくれる。おそらく、俺は泣きそうな顔をしていたんだろう。ふは、と吐息交じりに笑うと、「大丈夫だからなァ」と微笑んでくれた。そして、「おいで」と俺を誘うとその男が暮らすという小屋まで連れて行ってくれた。



    「そうか……それで?」
     その男の名は、実弥、と言った。見た目は、俺よりも少し年上に見える。昨日作った、とぜんざいを温めなおしてくれ、俺にふるまってくれた。それで体を温めながら、ぽつりぽつりとどうして自分があそこにいたのかを話していく。神様の見習いであることも、姉の羽衣を借りて飛んでいるうちに墜ちてしまったことも、人間にとってはまるで荒唐無稽な作り話のようなのに、笑うこともなく真剣に聞いてくれた。

    「……だから、姉の羽衣がないと、天空に帰れないんだ……」
     泣きそうになりながら話しているうちに、本当に涙が溢れてきそうになった。ぐす、と鼻をすすった音を聞き、向かい側に座っていた実弥は俺の隣へと場所を移動した。そして、穏やかな微笑を俺に向けると、「大丈夫だ」と言いながら頭を撫でてくれた。掌から伝わる体温がとても温かくて、抱えていた不安が一気に消えていくような感覚と同時に抗えないほどの眠気が訪れ、ふわりと意識を手放していた。遠のく意識の中で、「久しぶりだが……今のコイツは覚えちゃいねェかァ……。本当は、このままずっと此処にいて欲しいけどなァ」と呟く声が聞こえた気がした。



     ふと気づくと、暖かい布団の中で横になっていた。どのくらい眠っていたのだろう。小屋の外から漏れるのは橙色の光で、夕焼けが辺りを染めているのだと分かる。見ず知らずの、まさか人間の家でこんなに熟睡してしまうとは。神様見習いの俺は、まだまだ未熟だ、と鼻の奥がツンとしてポロリと涙が零れそうになる。ぐず、と鼻をすすったその時、扉が開いて実弥がひょこっと顔を出した。
    「起きたなァ……」
     どこか懐かしい笑顔。実弥の顔を見ていると、なんだかすごく懐かしい気持ちが胸に浮かんでくるが、どこで見たのかは思い出せない。そう思いながら、じっと見つめてしまったのだと思う。少し照れながら、「どうしたァ?」って聞く顔が、とても愛おしいようにも感じてしまった。

     何も言えない代わりに、首を横に振る。「姉さん……鱗滝さん……」と思わず小さくつぶやくと、実弥が俺のすぐ隣にドカッと腰を下ろす。頭をぐりぐりと乱暴に撫でまわしながら、「今日はもう夜になるから……明日、一緒に探すかァ?」と優しい眼差しを俺に向けてくれた。
    「……とりあえず、晩飯でも食うか?」
     その言葉を合図にするように、ぐぅ、と腹が鳴る音が聞こえてきた。恥ずかしい。昼にぜんざいをごちそうになったというのに、すぐに腹が減ってしまったとは……。天界にいる時にはそれほど空腹を感じずに生活できていたというのに、下界に降りるとすぐに腹が減ってしまう。情けなくて、またジワリと涙が浮かんでしまった。

    「寂しいとさ、腹もすぐ減るし、涙もろくなるんだわァ。だから、ちゃんと飯を食って寝て、明るくなったら一緒に探そうぜ」
     実弥が人のよさそうな笑顔で言うから、思わず大きくうなずいた。夕飯は、なぜか俺の好物の鮭大根で、ご飯を二杯も食べてしまった。せめて、と片づけは手伝ったが、そのあとは二人で横になって寝てしまったのだった。


    その夜。

    『……う、義勇……』

     どこからか、俺を呼ぶ声が聞こえる。まだ眠くて体を起こすことができなかったが、必死で力を振り絞って薄く目を開ける。そこには、天空の神々が身に着けているものと同じように薄く透けるような衣をまとった実弥がいた。俺たち、天空の池を司る種族は薄い水色だが、彼が着ているのは薄い緑色だった。たしか、それは天空の風を司る神々が身にまとう衣の色ではなかったかと、思い当たった、その時。

    『お前の望むようにしてやろう。さあ何をしてほしいか言ってみろ』

     少しだけ悲しそうな瞳をした実弥が、俺に向かってそう呟いた。しかしその声は、耳からではなく頭の中に直接注ぎ込まれるかのような響きで、天空で暮らす俺たちが普段使っているコミュニケーション方法だった。驚く間もなく、もう一度『さぁ!』と強い口調で促される。

    『姉さんと、鱗滝さんのところに、帰りたい』
     実弥と同じように、耳に響く言葉ではなく頭に響く声で答える。それに応じるように実弥が俺に右手をかざしたが、『待って』と慌てて付け加える。実弥は不思議そうな顔をしながら、かざした右手をそっと下ろした。

    『実弥とも、今度はもっと一緒にいたい……』
    『お前、それ……』
    『うん……思い出したんだ、忘れていて、ごめん……』

    *****

     それは、こことは異なる世界での出来事。俺たちは、別の生を受けたその世界で繋がっていた。同じ目標のために、命を燃やして戦った仲間だった。俺は昔から実弥に憧れて……好いていたが、どうしてもそれをうまく伝えることができずにいつも怒らせてばかりだった。だから、すべてが終わって平和な世界で生きることになったその時も俺は自分の気持ちをうまく伝えることができずに離れることになってしまったのだった。

    「実弥……またいつか、会えるだろうか……」
    「さァなァ……お前が望むなら、もしかしたら、なァ……」

     実弥は一度も振り返ることなくそのまま去っていた。ひらひらと手だけで別れの挨拶をしていたさみしげな背中が、最後の生きている姿となったのだ。

     そして、そのまま俺たちは二度と会うことはなかった。旅に出た先で、実弥が不慮の事故にあい、死んでしまったから。

    「いつか……いつか、また巡り合えたなら、その時は、俺がお前を探しに行く。そして、俺からお前に好きだって伝える。だから……」

     実弥の亡骸に縋り付いて泣きながら、俺は自分に呪いの言葉を吐いた。そして俺も、そのまま体調を崩して儚んでしまったのだった。

    *****

    「忘れていて、ごめん……ようやく実弥に出会えた……俺、これからの未来を、お前と一緒に生きていきたい。たとえそれが、蔦子姉さんや鱗滝さんとの別れになるとしても……」

     泣きじゃくりながら、自分の声でそう呟く。すると、その時。まばゆい光に当たりが包まれ、思わず顔をしかめる。そして次の瞬間、俺の頭上にふわりとあの羽衣が下りてきて、俺と実弥の体を包み込んだのだ。何が起こるのか分からずにきょとんとしていると、すかさず実弥が俺を抱き寄せる。この温もりと香りがどこか懐かしいのは、あの昔の約束を体と心が覚えていたからだった、と泣きそうな気持ちになった。

     光が少しだけ弱くなったことに気付いて少し顔を上げると、そこには天狗面を外した鱗滝さんと蔦子姉さんが微笑みながらそこにいた。
     
    「義勇……思い出したか……」
    「やっと、思い出したのね……」

     二人とも、どうやら俺と実弥の過去のことを知っていて、それでもあえて何も言わずに見守っていてくれたのだと、ようやく思い至った。二人に見られていることに気付いた俺たちが体を離すと、その様子に二人が破顔するのが見えた。そして、鱗滝さんが何かまじないを唱えて俺のほうに手をかざすと、まだ子どもだった俺の体は実弥と同じくらいの体格の青年へと変化していた。

    「義勇が思い出し、そして再び実弥殿と巡り合うまで、体を小さいままにしておこうと思ったのでな……」
     驚く俺と実弥に、悪戯っぽい視線を向けながら鱗滝さんが言った。
    「私の占いで、そろそろ二人が再会するとき、ってお告げがあったから、こっそり羽衣を置いていたの……」
     蔦子姉さんまで、同じような視線を俺に向ける。……なんだ、二人とも、俺が思い出すのを待っていたのか……。

    「ところで……実弥殿は、先ほどの義勇からの言葉を、どうするつもりですかな……?」
     穏やかながら鋭い視線を実弥に向け、鱗滝さんが静かに実弥に問うと、実弥は照れ臭そうに頭を掻きながらぽつりとつぶやいた。

    「俺は……俺は、この二人の約束の地に義勇が訪ねてくるのを待っていたんです……」

     思わぬ言葉に驚いたのは、俺だけではなかった。鱗滝さんも蔦子姉さんも、同じように驚いた顔をしている。三人の顔をそれぞれ見まわしてから、実弥が続けた。
    「前の生の時に、義勇が俺を弔ったのがこの丘だったんだ……『お前には風が似合う』って言って、いつでも気持ちの良い風が吹くこの丘の上に、俺の墓を作ったのだと先代の風の神に聞いているんだ……」

     そうだった。風が吹く場所に実弥がいるのだと、俺はいつもそう思っていた。気持ちの良い風が吹く場所に行けば、いつでも実弥に会えるようなそんな気がしていたのだ。すでに俺たちの身寄りは誰一人残っていなかったから、どこでも好きな場所に弔うことができた。そして、この丘にある大樹を墓標に見立て、そこに実弥の遺骨を少しだけ埋葬させてもらったのだった。

    「今の姿かたちで生を受けて、しばらくしてから俺は先代の風の神からその話を聞かされていたんだ。そして、風を司る神として生きるか、それとも地上で義勇を待つかを迫られて……」
     下を向きながら話していた実弥が、ぐっとこぶしを握り締める。そして、大きく一つ息を吐きだすと、俺のほうを真っすぐ見て言った。
    「俺は、お前と生きていきたいから、お前を待ちたい、って、そう言ったんだ」
     最後の言葉まで聞くや否や、すぐに俺は実弥へと抱き着いていた。俺のことをいつまでも待つつもりでいたのだと、前の生では果たせなかった約束をこの丘で果たすために待ち続けていたんだと、胸が熱くなる思いだった。

    「そうか……義勇も、実弥殿と同じように、この先は二人で生きていきたいと、そう思っているのかな?」
     穏やかだが俺たちに真意を問うための強い口調。隣にいる実弥の手をぎゅっと握りしめると、俺も大きくうなずいて宣言した。
    「はいっ!俺は……俺も、実弥とともに生きていきたいのです、これからもずっと……!」

     その言葉に最初に反応したのは蔦子姉さんだった。両目からポロポロと涙をこぼし、嬉しそうにうんうんと頷く。そして、一歩遅れて実弥が俺をもう一度抱きしめてくれた。

    「そうか……であれば、義勇。」
     うんうんと頷き、顔を上げる鱗滝さん。おそらく、俺が実弥を選ぶということは、もう天空の世界には戻れないということ……。少し寂しいが、仕方ない……と思っていると、告げられたのは思いもよらない一言だった。

    「義勇が望むのは、儂たちのところに戻りたいということと……実弥殿と、これからも一緒に生きていきたいというもので合っているかな……?」
    「え……は、はい……」
     鱗滝さんが話す内容に少し驚きながらも大きく頷く。すると、蔦子姉さんがふふふ、と笑いながら続けた。
    「今、天空の世界でも少しだけ問題があるの。実は、風の神が納めていた地区を守るべき方が、少し前から不在にしていてね……」
     うむうむ、と鱗滝さんも頷きながらさらに続けた。
    「風の地区を収めるのは風の神なので、その末裔である実弥殿に、力を貸してほしいのだ」
    「風の神と水の神は、昔から切っても切れない縁があってね……どうか、二人でその地区を収めてもらえないかしら?」

     一拍おいてから、あたりには「えぇ~~~!?!?!?!?」という俺と実弥の絶叫が響き渡った。

     どうやら、天空の風を司る神は気まぐれで、しょっちゅう旅に出ては放浪し、そのまましばらく帰ってこないことがあるらしい。そして今回も、「いずれ息子が戻るだろォ?」と言い残して旅に出てしまったのだという。息子とは、つまり、実弥のことで……。天空の神々は、俺と実弥が浅からぬ因縁で結ばれていること、そして、蔦子姉さんの占いの通り、すぐに二人が巡り合って記憶を取り戻すであろうことを、すでに気付いていたというのだ。しかし、巡り合う場所が、義勇が前の生での実弥を弔った場所であることまでは、だれも予想していなかったようだった。
     実弥も、いずれは父が不在になることを知ってはいたが、義勇をどうしてもあきらめたり忘れたりすることができずに、力を隠したまま地上での生活をしていたのだと教えてくれた。

    「もし……もしも、俺がお前の前に現れなかったら、どうするつもりだったんだ……?」
    「まァ……その時は、次の生にお前との再会を託して、今の生は……だったんだろうなァ……」
     そう呟く実弥の顔がさみしそうで、思わず涙がこぼれていた。俺の様子を見た蔦子姉さんも鱗滝さんも、少しぐっと来たみたいで目頭をぬぐっていた。

     少し間をおいてから、コホン、と鱗滝さんの咳払いが聞こえる。その音に姿勢を正して向き直ると、鱗滝さんがもう一度俺たちに問いかけた。

    「どうか、二人に天空に戻ってもらい、それぞれに風の神、水の神として天空を守ることに力を貸してもらえないだろうか」
     俺たちには、もう迷いはなかった。「はい」、「ぜひ」と力強く宣言をすると、あたりがもう一度まぶしい光に包まれ、実弥の緑色の衣はそのままに、俺の地上の服装が水色の天空の衣へと変化した。そして、次の瞬きを終えるとそこは天空の風の神が住まう宮殿へと変わっていた。

    「どうか、二人、仲良くな……」
    「これまでのこともこれからのことも、きちんと二人で話し合うのよ……」
     俺たちにそう告げると、鱗滝さんと蔦子姉さんは羽衣の力を使って天空の池のほうへと移動していった。二人が去る背中に、おれは「ありがとう」とぽつりと呟いて見送る。二人の姿が見えなくなってから実弥のほうへと向き直ると、実弥も同じように二人の背中を見送っていた。

     実弥を見ていると実弥も俺のほうを見て、バチっと視線が交錯する。照れながらも見つめあっていると、実弥がいきなり俺に対して跪いた。
    「義勇……俺と、ここで添い遂げてほしい……今度は、お前を置いていくことは絶対にしねェから……」
     そういってそっと右手を差し出す。俺は驚きながらもそこに左手を添えて俺からも伝える。
    「俺も……実弥と、一緒に生きていきたい……俺で、いいのか……」
     実弥は俺の言葉に深く頷き、「義勇がいい」と力強く宣言をした。と同時に、俺の左手の薬指には緑色の風の神の文様が、実弥の左手の薬指には水色の水の神の文様が刻まれた。それは、天空の世界での婚姻の証文だった。

    「二人で、目いっぱい幸せになろうなァ」
     うん、と大きく頷くと、俺は跪く実弥を立ち上がらせてその唇に口づけをした。また巡り合った俺たちが、どうかもっともっと幸せになりますように。そんな願いを込めて、もう一度深く口づけをした。

     風の神の宮殿にある掲揚塔には、水の神が持つことの許されている青い羽衣がはためいている。二人の永遠の誓いは、羽衣だけが知っている。 
    (了)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤👼❤❤❤☺👏💖💚💙👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    tsukino_fuki913

    DONE診断メーカー:「RTされたら指定された攻めのセリフでCPの作品を書く」
    いただいたお題:「6RTで『お前の望むようにしてやろう。さあ何をしてほしいか言ってみろ』」
    登場人物:
    不死川実弥:地上で暮らす男。ただの人間だと思っていたが、実は……。
    冨岡義勇:天空で暮らす天空の池をつかさどる神様の跡継ぎ。
    冨岡蔦子:天空で暮らす天女。義勇の姉。
    鱗滝老:天空の池をつかさどる神の前任。義勇と蔦子の後見人。
    羽衣だけが知っている「……痛ったたた……」
    姉に借りた羽衣を使って空を飛ぶ練習をしているうちに、風に煽られて地上へと墜ちてしまった。墜ちた場所には誰もおらず、人間を傷つけることがなかったのは幸いだった。

    俺は冨岡義勇。天空の池をつかさどる神様だった両親を早くに亡くし、両親の前任をしていた鱗滝老に姉とともに引き取られ、神様になるための修業をしている。神様になる修業、と言っても、姉の方は羽衣を使って空を舞う練習を、俺の方は結界を破って中に入ろうとしてくる荒くれ者を討伐するための剣技を磨くことが中心だった。今日は、鱗滝さんから休息の日にする、と言われ、前から姉の羽衣を使って空を飛んでみたかった俺は、こっそりと姉の羽衣を借りたのだった。しかし、実は、羽衣を使って空を飛ぶには、それなりの体幹がいるらしい。つまり、どんなに練習をしても今まで一度も落ちたことのない姉は、失敗した俺よりも体幹の筋肉があるということだ。ほっそりした柔らかい体つきの姉であっても、男の俺よりもそれなりの筋力があるのか、と、地上に落ちて初めてその事実を知った。
    7300