神の子でもきっと気付かない。 オクタンにとって《数》は最も分かりやすい正義だった。フォロワーは多ければ多いほど良いし、アップする動画も多い方が良い。祝い事やイベントは大人数で開催した方が楽しいと思う。客人をもてなす料理も様々な趣向を凝らす方が美味しい。
勿論、その夜を明かす相手も多種多様なテイストを好んだ。
自分好みの相手やそうじゃない相手。オクタンは全ての味を楽しみたいと思っている。それはえり好みをする事に飽きているのもあるし、それを可能にする自由がオクタンの《普通》だった。何の悪意も感じてはいない。
オクタンはそれを肯定するように何度も肌を重ねてきた。
☆
「勝手にしろ」
冷たくあしらう一言にオクタンは顔をしかめた。他人を突き放す彼の言動は、今に始まったわけではない。
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