心配性にも程がある夏、陽泉高校の体育でプール授業が始まる季節。
生徒達が賑わう中、一人怪訝な顔をして頭を抱える男…氷室辰也。
「なぁ、アツシ」
「何〜?室ちん」
「スクール水着は…コスプレ用の水着じゃないのかい?」
「はぁ?」
「オレは今日まで、スクール水着は日本文化の…コスプレ衣装の1つなんだと思っていたんだ」
真剣に話す氷室の顔と声に紫原は呆れる。
「そんなわけ…ていうか室ちん、普段からそういうの見てるの?」
ないわー…と呟きながら新しいお菓子の袋を開ける紫原に構わず、氷室は話を続けた。
「あんな…あんなフェティシズムに刺さるセクシーな水着を着た自分の恋人が他の男共の目に触れると思うと気が変になるぜ…」
何言ってんのこの人
「…たかがスク水じゃん」
「されどスク水だろ?!」
もうやだこの人…
「じゃあプール休んでって言えばー」
「最近暑いし、きっと楽しみにしてるだろうから言えるわけ……そうか!」
氷室は何か閃いたようで、満面の笑みで勢い良く紫原の肩を掴む。
「アツシ同じクラスだよな!?そうだ!アツシに監視してもらえば良いじゃないか!オレの代わりに捻り潰してくれないか!」
「やだし!やりたくねーし!」
「オレと彼女の一大事なんだ…!」
「オレにも彼女いるの忘れてない?ていうかさー、スク水なんて全然エロくないし、気にし過ぎなんじゃないの?」
紫原がそう言うと氷室はスマホを取り出し紫原に突き付ける。
「これでもそう言えるのか?」
紫原は氷室の圧に負けてその画面を見るも、画像内容があまりにも非現実的で引き気味の紫原。
「……こういう性癖なの?」
「オレはこんな姿を他の男に見せたくない」
「目怖いよ室ちん」
スマホをしまい咳払いをしてまた紫原の肩を掴む。
「頼むアツシ、この通りだ…好きなだけお菓子食べていい買ってやる」
「え〜?ほんと〜?…じゃなくて!それさぁ、オレが室ちんの彼女のスク水見る事にもな…」
そう言いかけた時、紫原の肩に氷室の指が凄い力で食い込む。
「Even though it's Atsushi, I'll kill you if you see my girlfriend's body…(アツシとはいえ、オレの彼女の体見たらぶっ殺すぞ)」
「情緒どうなってんの?」
過保護もここまでくると病気だよ室ちん…
終