うつくしいひと。うつくしいひと。
恋人が自分と同じベットで寝ている。いつもは騒がしいその恋人の慎ましやかに閉じた唇。そのすぐ上を通る高くまっすぐな鼻筋を美しいと思い、綺麗だと誰もが思う輪郭に沿うように頬を撫でた。他人と、自分以外の人間と同じ部屋に帰り同じベットに入り、裸で抱き合い、粘膜を擦り合わせて気持ちよくなる。そして身を清めて眠りに着く。そんな人生が自分に待っているとは微塵も思っていなかったことを思い出した。
好きだと言われた。恋人になりキスを交わしてそれ以上の事もしたいと思う方の好きだと、告白された。そんな事を言われるまで、好かれているなんて露程も思っていなかった。どちらかというと、嫌われていると思っていた。俺がそういう態度をとったからだ。俺は別に、嫌いではない。そこまで感情を動かす相手ではない。ただ、俺が好ましいと思う態度を、あまりにとらない男だった。それを指摘するのも面倒だから俺は距離をとりたかったのに、ちょっかいを出してくるからそれなりの対応をしていた。
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