監視役の居ない昼下がりみぃみぃと苦しそうに鳴き喚くセミに、お前たちはこの太陽の下必死に声を出さないといけないなんて大変だなと冷房の効いた部屋で一人思う。
俺の監視役兼保護者の男は夕飯の買い出しに、バディの魔人はぐっすりと自室のベッドで眠っている。
誰も居ないことをいいことに、一日一個と言われたアイスの二本目を味わっているところだ。
勿論、すでに食べた一本目の棒はティッシュに包んでゴミ箱の奥に捨てたのでバレっこない。
ちゃぶ台に背中を預け、ぐだりと窓を通して空を見上げる。
青い、空だ。
それに広がるあのでかい雲は、入道雲というのだと早川の先輩に教わった。
ソフトクリームみたいだ、と笑った帰り道、食べていくかと冷たいソフトクリームを奢ってもらった。
パワ子がいない時に何かをしてもらうと、なんだか特別のような気がして気分が良くなる。
そんな日は、少しだけいつもより彼女に優しくしてやろうと思う。
窓は閉まっているのに、熱が入り込んできているような気がしてその場から逃げ、アキの部屋の扉に寄りかかった。
とっくになくなっていた二本目のアイスの木の棒。
すっかり味も無くなってしまい、手持ち無沙汰に口の中で噛んだり転がしたりしてぼんやりと意識を沈める。
遠くでかちゃんと音がした。
とすとすとすと静かな足音。
ぐいと棒を引っ張られると同時に意識も引っ張り上げられた。
驚いて口を開けると、棒は何者かに抜き取られていった。
見上げるとそこには汗を拭いながらしゃがみ込んでいるアキが居た。
「こら、食いながら寝るな。危ない」
「はやぱい…おかえりぃ」
「ただいま…」
ため息をつきながら立ち上がったアキ。
お前、アイス二本食ったろ。と少し呆れた顔をされてしまった。
ことんとゴミ箱に放られる棒。
シャッとカーテンが閉められ、外の熱から完全に遮断される。
あれ?なんでバレたんだろう。
END
🍁「ヒント。俺は数を把握している」
🪚「答えじゃねぇか」