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    あおき

    ⚠飯トラ無法地帯⚠

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    あおき

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    ギャグ寄りの黒飯×ゼノトラ。※モブTP隊員→ゼノトラ要素あり。
    お題「ちょっかいをかける」、「喧嘩」で書きました。

    黒飯さんは気が気じゃない。.



    「あの……悟飯さん、何か怒ってますか?」

    トランクスは隣を歩いていた相手におそるおそる声を掛けた。黒い道着の片袖を揺らしながら歩いていた悟飯は、驚いたように足を止めた。

    「ど……どうして?」
    「あ、やっぱり気付いてなかったんですね。ほんの僅かですけど……暗黒ドラゴンボールのオーラが出ちゃってます」
    「えっ…!?」

    悟飯は慌てて自分の体を見た。すると確かに赤黒いオーラが少量放出されているではないか。無意識に出ていたそれを引っ込めると、悟飯はトランクスに詫びた。

    「すまない。こんなところで……」
    「いえ、大丈夫ですよ。本当に少しでしたし」

    二人が歩いていたのは、タイムパトローラーたちが集う街だった。タイムパトローラーのまとめ役であるトランクスは、時折仕事を手伝ってくれるようになった悟飯に街を案内しているところだった。今日は事件らしい事件もなく、平和な時間が流れていた。そんな中で物騒なオーラを滲ませた悟飯に、トランクスは心配そうに見つめた。

    「別に怒ってたわけじゃ……いや、ちょっとイラついてたかもしれない。君が……随分タイムパトローラーたちから慕われてるようだったから」
    「? え……?」
    「いや、違うんだ。それ自体はいいことなんだけど……」
    「??」
    「その……少し、距離が近すぎる隊員がいるんじゃないかって思ったんだ」

    悟飯が何を言おうとしているのかよくわからず、トランクスは首を傾げた。だが、そこでようやく思い至ることがあった。

    「あ、もしかしてさっきの訓練の話ですか? たまに組手の相手頼まれるんですよ。俺より教えるのが上手い先生は沢山いるんですけどね。でも組手ですから、距離が近くなるのは仕方ないですよ」
    「……今日もそうだったけど、よく投げ技とか締め技の練習頼まれてるんじゃないか?」
    「え? ああ……言われてみれば」

    やっぱり、という言葉を飲み込んで悟飯は溜息を吐いた。もちろん隊員のほとんどは真面目に訓練に取り組んでいた。だがごく一部に――不純な動機を抱えている者がいる気がしてならなかった。

    「それから……さっき君に握手を求めて来た隊員がいたよね」
    「ああ、はい。あの方、律儀な方でいつもそうなんですよ」
    「……やたら手を握ってる時間が長くなかった?」
    「そうでした?」

    話をしている間、相手はトランクスの手をずっと握りしめていた。あれを「律儀」と表現するのは如何なものか――と悟飯は思ったが、当のトランクスが特に疑問を感じていないのだからどうしようもない。それに気になることはまだまだあるのだ。

    「その後、異星人タイプの隊員にも呼び止められたよね」
    「はい。タイムパトロールではあらゆる歴史や年代から戦士をスカウトしているので、様々なタイプの隊員がいるんです」
    「あの隊員も……話をしながら、腕代わりの触手で君のこと触りまくってたよね?」
    「ああ、あれは俺も最初はびっくりしましたね。だけど彼の文化ではあれが『挨拶』なんだそうですよ」

    そうだとしても、それを拒否する権利もあるのでは――と悟飯は思ったが、トランクスはやはり気にも留めていないようだった。トランクスは戦士としては格段に成長していても、別に意味での防御力が低すぎる。それが今日一日トランクスを見ていて、悟飯が猛烈に感じた不安だった。

    「あのさ……もしかしてなんだけど『相談したいことがあるから、二人きりで話がしたい』なんて隊員から言われたりしてるんじゃないか?」
    「え? ああ、よくわかりましたね。実は前から結構そういう相談が多いんですよ。タイムパトロールってやっぱり体だけじゃなく精神的にもきつい仕事ですから……隊員向けのカウンセリングルームを設置する必要があるかもしれないですね」

    トランクスはあくまで真面目に、上司として部下のメンタルヘルスを心配しているようだったが、悟飯は悟飯で心配がこれ以上ないくらいに高まっていた。このままではまた赤黒いオーラが抑えられなくなりそうだ。

    「……出来るだけ早くそうした方がいいと思うよ」
    「ふふ、今日は俺が悟飯さんに相談に乗ってもらっちゃいましたね。ありがとうございます。あ、でも……実は今夜もひとり、相談に乗ってほしいっていう隊員がいて、」

    トランクスの言葉を最後まで待たず、悟飯はその肩を強く掴んだ。もうダメだ。これ以上は黙って聞いていられない。

    「オレも同席するから」
    「え、でも……」
    「君を守りたいんだ」
    「……はい? 何の話ですか?」

    トランクスが首を傾げると、薄紫色の髪がさらりと流れた。その美しさに惹かれてしまうのは、自分だけではないと悟飯はよく知っていた。だから気が気じゃないのだ。



    *



    それからしばらくして――、一部の不純な動機を抱くタイムパトローラーたちの中でこんな噂が流れた。「トランクスさんにちょっかいを掛けると、隣にいる男が暗黒のオーラでめちゃくちゃ威圧してくる」と。

    その噂の真偽を確かめるには、命がいくつあっても足りない。


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