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    s_toukouyou

    @s_toukouyou

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    s_toukouyou

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    「お待ちください、閣下!」
     庁舎から出ようと一歩踏み出したところで呼び止められて、すごく嫌そうな表情を浮かべた。声を無視して歩を進めようとしたものの、一瞬の間にいつのまにかラインハルトのそばに巻いたレッドカーペットを抱えた部下がいた。さっとラインハルトの前にそのレッドカーペットを置いたかと思うと、力を込めて転がした。赤い道が伸びていく。転がっていくレッドカーペットを追って、視線をあげると、遠目に水たまりのそばにかがんで板を敷いているものがいた。
     茶番につきあう義理もないので、特に足を止めなかったが、刻一刻と伸びていくレッドカーペットに支障がないように道が整えられていく。
     暇なんだろうか。
     ぴたりと車の前で止まったレッドカーペットの上を歩きながら、ラインハルトはなんとも言い難い表情を浮かべた。ちょうどよいタイミングで車のドアが開けられて、どうぞと中にうながされる。
     車に乗り込んで、ひとつ溜息をつく。
     ドアが閉まると同時に運転手がなめらかな動作で車を発進させた。
     多少髪を整えようと軍帽を脱ぐと、それを受け取るために横から手が伸ばされていた。いつ乗った?
     まあいい、と部下に軍帽を預ける。ぐしゃぐしゃと髪をかき乱すと、そばにいた部下は櫛をさっと取り出した。面倒になったので好きにさせる。
    「目的地につくまで、少々時間がかかりますので、お茶でもいかがですか?」
     髪を梳かしながら聞いてきた部下に惰性で頷けば、部下は一度櫛を置いて、どこからともなくソーサーにのったティーカップを取り出して、ラインハルトに差し出した。湯気がまだ立っている。湯を持ち歩いているのか?
     あきらかにおかしかったが、あまりにも洗練された所作に疑問がわく余地がない。もしかしたら混乱しているのかもしれない。
     うろんなものを見る目で水面を見下ろしていると、追加で一口大の菓子が乗せられた小皿も差し出された。
     暇なんだろうか。私の世話などに妙にやる気をだしている複数人の顔を思い浮かべながら、ラインハルトは「それなら部署移動でもさせて、もっと仕事を割り振りたいところだ」などと考えた。
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