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    こんぺいとう

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    こんぺいとう

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    《キミsta》tasting you
    流唯(榛唯) : 残されたのは、
    ※付き合ってる二人


    キミsta開催、ありがとうございます✨
    短いですが、楽しんでいただけたら幸いです!!

    2022/12/17

    #スタオケ
    #流唯
    freeFlow
    #榛唯
    #キミsta
    kimiSta.

    tasting you唯以外、誰もいないキッチン。
    淡々と残り時間を刻むオーブンの前、唯はコンサート前のような緊張した面持ちでその時を待っていた。

    ♪~~

    「…」

    焼き上がりを知らせるその音に、唯は更にその身を固くさせる。
    目を凝らして、オーブンの窓越しに中を確認してみても、その出来はイマイチ分からない。
    唯は意を決して、オーブンを開けた。
    途端、広がる香ばしく甘い香り。
    ミトンをはめた手でそっと天板を掴み、ゆっくりと引き出す。
    テーブルの上に優しく置いた天板の上には、綺麗に並んだ星型のクッキー。
    どれも淡いきつね色で、仕上がりは上々と言えよう。
    何より懸念していた部分も、問題なさそうだ。

    「……よし」
    「…なんだか、良い匂いがする」
    「ひぃっ」

    突如耳元で聞こえた声、突然背後に現れた気配。
    唯は大げさなくらい肩を跳ねさせて驚いた。
    それくらい集中していたのか、もしくは彼の人の気配の消し方が上手いのか。
    だとしても、もう少し可愛らしい反応が出来なかったことが悔やまれる。
    慌てて振り向けば、彼の人-流星が、いつもの無表情でこちらをじっと見つめていた。
    否、彼と少しでも距離を縮めた今なら分かる。
    その瞳に、僅かに驚きと戸惑いの色が混ざっていることに。

    「…驚かせてごめん」
    「ううん、こっちこそ過剰に反応しちゃって…ごめんね」

    見る人が見れば分かる、叱られた仔犬のようにしゅんと肩を落としていた流星が、安心したようにふっと目を細めた。
    その様子に、唯もほっと息を吐く。
    お互い、驚かすことは本意ではない。

    「甘い匂いがする」
    「あ、うん!クッキーを焼いてたんだ。明日からお仕事に行く流星くん達へ差し入れしようかと思って」

    僅かに体をずらし、天板の上のクッキーを見せる。
    瞬間、流星の瞳が一際輝いた。
    それはまるで、宝石箱の中身を見た時のような。

    「……すごい。おいしそう」
    「ほんと?ありがとう!」
    「この真ん中のなに?…キラキラしてる」
    「ふっふっふ…それはね、」

    よくぞ聞いてくれました、と唯は胸を張る。
    いつものクッキーに少し手間を掛け、上手に仕上がったことを確認した部分。

    「星型のクッキーの真ん中を、更に小さな星型で型抜きをして、その中に砕いた飴を入れて焼く…その名もステンドグラスクッキーです」
    「ステンドグラスクッキー…」

    オーブンの熱で溶けた飴は、透き通るまさしくステンドグラスのようで、光を受けてキラキラと反射している。
    見ているだけでも楽しめるクッキー。
    けれど、流星としてはやはり味も気になるところで。

    「……」
    「……」
    「……唯さん」
    「っ……もう、しょうがないなぁ……一個だけだよ?」

    無言の攻防。
    いつだって分が悪いのは唯のほう。
    じっと見つめられるその瞳に、普段呼ばれ慣れない名前呼びに、自分は滅法弱いのだと唯は自覚していた。

    「…流星くんのおねだり上手め…」
    「大丈夫、唯さん以外にはしないから」

    あまりにハッキリと断言するものだから、唯は、それならいいか…いや、いいのか?と自問自答を繰り返す思考の海へと旅立ってしまう。
    そんな唯を知ってか知らずか、流星はそっと天板の上のクッキーの一つに手を伸ばした。
    まだ温かいそれを手に取り、目の前で角度を変えて見る。
    溶けた飴の部分が光を反射して、キラキラと輝く。
    流星にしては珍しく、一瞬だけ食べるのを躊躇したが、元より食べないという選択肢は存在していないため、すぐにそれは口の中に文字通り吸い込まれていった。

    「……どうかな?」

    思考の海から帰ってきた唯が、不安げな声音で問う。
    瞼を伏せ、しばらくそれを味わっていた流星は静かに目を開け、唯を見据える。
    唯は知らず、唾を飲み込んだ。

    「おいしい。飴とクッキーの不思議な食感。思ってたより甘くないから、いくらでも食べられそう」
    「良かったー…って、ちょっと待っ…」

    自然と天板の上に伸びる流星の手を、唯が慌てて止める。
    全く油断も隙もない、と唯がほっとしたのも束の間、すぐ側から感じる例の視線。
    恐る恐る目を向ければ、じっとこちらを見つめる流星の水のように澄んだ瞳。

    「……っ、」
    「……唯さん」
    「だ、だめ…」
    「……どうしてもだめ?」
    「うっ……」

    頷いてしまいそうになるのを必死に堪え、唯は目を瞑り、顔を反らしてやり過ごそうとする。
    目を閉じていても、じっと見つめられているのが分かる。
    唯はぎゅっと目を閉じて、掴んでいた手に力を込めた。

    「……分かった」

    流星の言葉に、唯はふっと力を抜く。
    流星のおねだりに耐えることができた。
    それは唯にとって大きな一歩となった、などと勝利に酔っていた唯は完全に油断していた。


    「……じゃあ、こっちで我慢する」


    流星の言葉の意味を理解するより早く、頬に伸ばされた手。
    流星の顔を捉えるより早く、近づいてきた縹色の瞳。
    疑問を口にするより早く、唇に寄せられた柔らかな感触。



    「……ごちそうさま」



    残されたのは、
    彼の満足そうな笑みと、
    一瞬で頬に帯びた熱。






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