花あかり~後編~「…んっ。」
朝日奈の柔らかい唇の感触。
竜崎は、目を見開き戸惑いを隠せなかった。
いつも率先して驚かせてくるのは、慣れたつもりだった。
そして、諫めるのは竜崎。
情事にまで先手を取られて…
その先まで頭を回すには、柔らかさが甘すぎる。
思考が停止し、目を伏せ朝日奈の後頭部に手を添える。
「ふっ…んっ…」
竜崎をこんな近くで見たのは初めてかもしれない。
後頭部を抑えている手の大きさ、
伏した瞼には、長い睫。
少し荒くなる、吐息の熱さ。
こんなに色っぽい彼を、見たことがなかった。
私だけ見られる表情。
ぞくっ…
敏感になった全てが、気持ちいいから快感へ。
「んやっ…はや…てっ…」
甘くなった声を合図に、口内に温かいものが差し込まれる。
自身のそれで懸命に辿った。
「あぁぁっ…んむっ」
擦れて合わさった瞬間、朝日奈は下腹部がじわっと熱くなり抑え込んだ。
「唯…」
唇が耳に沿い、低く甘やかな声は脳を震わせる。
続いて、首筋、鎖骨へと唇はおちていき、左右の鎖骨の間でぴたりと止まる。
唇で辿って初めてわかる、きめ細かな唯の肌に
こみ上げる衝動のまま、柔らかな双丘に触れてしまいたかった。
深呼吸をして留まらせ、薄っすらと涙を浮かべる瞳と合った。
もう躊躇していられない。浴衣の上から双丘を包みやわやわと、
初めは形を確かめるように。次第に主張してくる先を右手指でつまみ
左指先は、背筋や腰の辺りを掠めるように…。
「んぁっ…あっ!あっ…あっ!」
反射のように揺れ始める腰に、艶を含む声に疾風は指を唯の下腹部に滑らせた。
「気持ちいいのか?。良かった…」
首を辛うじて縦に振る仕草に、熱が昂る。
はぁっと興奮を隠さない疾風の吐息に、唯は反応して更に湿り気を帯びるのがわかる。
疾風は蜜を指に纏わせ、ぷっくりと膨れている陰核に塗り付け転がし続けた。
「やっそれだめっ!はや…てっ…あっもう…っ!」
「っ…そうか…」
ぬるっと秘所に長い指を陰核の裏側まで差し込んだ時、一際強い締め付けとともに嬌声が脳を甘く溶かした。
「あぁっ…んやぁあぁっあっあっ!」
ビクンビクンと身体を跳ねさせ、生理的な涙が疾風の肩にぱたっと落ちる。
「は…やてっのえっち…」
達した荒い呼吸で紡がれても全く牽制力を持たない。むしろ煽っているようだ。
下半身が熱くなりすぎて、もう窮屈だった。
「煽るな…限界だ。」
彼女の視界に入らないように、下着から解放してやる。
下着の染みは、瞳に捉えられてしまった。
疾風も…私相手であんなになるんだ…
時間差でじわじわと理解する脳は、スキンを装着したものを見てしまった。
「お、おっきぃ…なんか長い気が…」
「馬鹿っ!それ以上言うな!辛いだけだぞ…」
入り口に添えられたそれは、少し質量を増した。
「挿れるぞ…痛かったら言ってくれ…」
くっと先が入っただけで体がぞくっと震え、ゆっくり進むいっぱいなそれは、膣壁をゆるゆると擦りながら快感を与えてくる。
「あぅっ…擦れて…疾風のが……んっ」
陰核の裏を擦り、通り過ぎると得も言われぬ快感が沸き上がり、反射的に奥へと腰が揺れる。
「やめっ…ろ…あっ!くうっ…!」
誘われるまま、疾風は奥にずんっと突き入れてしまった。
「あああっっ!」
ビクンッ!
先ほどよりも強く体が跳ね、一番奥に自分から擦り付けて達した唯は、もっともっとと強く締め付けた。
「あっ…おいっ……はっ…」
「やっ…イくの止まらない…きもちいっ」
「唯…俺をみてくれ…」
とろんと蕩けた顔を何とか向け、それでもイき続ける唯。
「はあっ…唯、綺麗だ…愛してる…」
意識が持っていかれそうになり、苦しそうに告げた疾風は理性を振り切った。
「あっ…んやっあっあっ…はげしっ…」
「はっ…んっんっ…」
互いの喘ぎは、同時に高みへと導いていった。
「またっ…!はやて…っあっあっイっちゃう…!」
唯の身体が跳ね、乳房もぷるっと弾む。とろとろに溶けた締め付けに、穿つように腰を叩きつける。
「はっ…出るっ…!」
膣でぐっと固くなった陰茎は、スキン越しに勢いよく吐精した。
何度か吐き出されるのと同じ間隔で、奥に奥に擦り付けようやく治まった。
悪戯な桜の花びらは、その瞬間を見計らったかのように窓の隙間からはらりと床に息を潜めた。
次の日…
「あ~!いたいた、竜崎先輩!」
ひらひらと成宮が校舎から、手を振りながら歩いてきた。
「成宮か…なんだ?」
眉根を寄せて目線を遣る。
竜崎としては、願ったり叶ったりの場を提供してくれた彼に、あまり顔を合わせたくは無かったが…
「ヤりましたねぇ…朝日奈先輩のうなじの辺りが色付いていましたよ?」
「うなじの辺りだと…?色付いていたとは…」
「あれ?記憶にないんですか?キスマークつけたの。」
「なっ!?俺はき、きキスマークなどつけた覚えは…」
本当に、キスマークを付けた覚えのない竜崎は、顔を真っ赤にして慌てふためいていた。
桜の花びらの悪戯は、暫く竜崎の顔色を赤くさせ続けるのだった。
ーFin-