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    生林檎

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    ささろ前提 24🎋とモブの話
    ※当方コミック未読です

    #ささろ
    sasaro

     白膠木簓という男は、何処からともなくふらりと現れた。その男が、いつから、どうやって碧棺左馬刻の右腕というポジションに収まったのか、俺には一体全体分からなかった。
     気づいたら、そこにいたのだ。
     煙草に火をつければ、煙が立つように。物を殴れば、反動で拳が痛むように。
     当たり前だというように、いつの間にか、碧棺左馬刻の隣には白膠木簓がいた。
     いつだったか──そう、あれは確か、冷たい夜空に月が浮かんでいたときのこと。乱闘後の一服中だった男に、新入りの間抜けが問うたのだ。「簓サンは、何処から来たんですか?」と。
     糸目の男は「そんなん聞いて、どないするん?」と月を眺めながら言った。
     間抜けはハッとして「深い意味はないです。すんません、雑談のつもりでした」と頭を下げた。
    「ん〜、ええよぉ。キミは新入りやからねぇ、俺と仲良しサンになろう思ったんやろ?」
     いや、お前も新入り枠だろ。俺より後から組に入った癖に。そう思っても、俺は間抜けより少しばかり賢いので、口には出さない。手を止めず、ただただ床に落ちた赤を拭った。
    「う〜ん、せやなぁ……。俺、俺はなぁ、」
     煙草の煙を揺らしながら、男は「月から来たんや」と言った。
     ニホンのどこか──ディビジョン名が出てくるとは思っていなかったが、返り血に濡れた男が言うにはやけにメルヘンな回答だった。間抜けも「は、はぁ。月、ですか」と戸惑っている。
    「俺はなぁ、オヒメサマを見つけに地球に来たんや。あいつでもない、こいつでもない、って探して、ようやっと見つけた。でもなぁ、オヒメサマ、一緒に月に帰ろうとしたら、一人で地球に戻ってもうて。オヒメサマと一緒やないと、俺は月には帰られへんっていうのに。でも、でもなぁ。一緒に帰りとぉないって言われたら、しゃーないやん? やから、俺も地球に戻ってちょっと放浪の旅をしてみた。そしたらここに辿り着いたってワケ。オヒメサマを見つけに来たナイトが流れ着いた先が、こ〜んな錆臭いトコなんて、運もツキたっちゅ〜ことや! 本当はこんな雑談しとる場合やナイ! と、ゆ〜こと!」
     少し面積の増えた煙草の灰を落としながら、男はハハハと乾いた声で笑った。
    「それじゃあ簓サンは、そのオヒメサマを諦めたんです?」
     たくさん話をしてくれた男に安心したのか、間抜けがまた阿呆なことを聞いた。
    「そんなん、諦めとらんよぉ。でも、諦めんといけんのや。もう俺には、オヒメサマと一緒におる資格はないからなぁ」
     スゥ、と煙草を吸った男は、空に向かって煙を吐き出した。それと同時にあたりが暗くなる。どうやら雲が流れ、月明かりを消したらしい。
    「そこの床掃除してるオニーサン。どうやったらオヒメサマのこと、諦められると思う?」
     俺に話を振るのは勘弁してくれ。
     手を止めず、作業に集中してるフリをすれば「コンクリに染み込んだ血は、拭いても拭いても除れへんよ〜」と男は当たり前のことを言った。
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