※ 白膠木簓という男は、何処からともなくふらりと現れた。その男が、いつから、どうやって碧棺左馬刻の右腕というポジションに収まったのか、俺には一体全体分からなかった。
気づいたら、そこにいたのだ。
煙草に火をつければ、煙が立つように。物を殴れば、反動で拳が痛むように。
当たり前だというように、いつの間にか、碧棺左馬刻の隣には白膠木簓がいた。
いつだったか──そう、あれは確か、冷たい夜空に月が浮かんでいたときのこと。乱闘後の一服中だった男に、新入りの間抜けが問うたのだ。「簓サンは、何処から来たんですか?」と。
糸目の男は「そんなん聞いて、どないするん?」と月を眺めながら言った。
間抜けはハッとして「深い意味はないです。すんません、雑談のつもりでした」と頭を下げた。
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