その日、朝食の後片付けを済ませたロイドはミーティングルームで、目の前に広がる光景に目を瞬かせた。
「どうしたんだ? みんな揃って髪を二つ結びにして」
「ツインテール、ですよ、ロイドさん」
「キーアちゃんがお揃いにしたいって言って結んでくれたのだけど。しなれない髪型は少し恥ずかしいわね」
「いや、ふたりともよく似合ってる。とっても可愛いよ」
ロイドの口から無自覚に放たれる言葉にはあ、とふたりはため息をつく。それに、何かおかしな事を言っただろうか、と首を傾げた後、少し言いにくそうにランディの方を向いたロイドは、疑問をぶつける。
「……その、どうしてランディまでその髪型なんだ?」
「んなの、俺の方が聞きてーよ」
そう、女性陣だけでなく、なぜかランディまで髪をくくられ、更に可愛らしいリボンまでつけられていて。納得いかないのかぶすっとした表情で答えたランディがキーアに目を向けると、あっけらかんとした答えが帰ってきた。
「んーとね、似合いそうだなーと思って結んでみたの。けっこう可愛いよね?」
「キー坊……」
「ぶふっ。……う、うん、そうだな。似合ってるぞ、ランディ」
「おいこらてめっ、今吹き出しただろうが!」
キーアの言葉に思わず吹き出したロイドに、肩を落としたランディは恨みがましい目を向ける。だがロイドはそれを全く気にも止めずにメンバーを見渡すと、何かに気づいたように今度は自身が少し肩を落とした。
「ロイド?」
「どうしたんだ?」
「ああ、いや。大した事じゃないんだけどさ。……俺だけ、仲間外れみたいで少し、寂しいかなって」
「あ……」
「ロイドさん……」
いや、無理なのはわかってるんだ、気にしないでくれ。
そう言うロイドだが、その顔はやはり少し寂しそうで。そんなロイドの様子にキーアはうーん、と少し考え込むと、自分の髪をほどき始めた。
「キ、キーア?」
「んーとね、後ろでひとつに結べば、みんなお揃いにできるかなって」
いや別に髪をリボンで結わえられたい訳じゃないんだが、と。そう喉元まで出かかった言葉をロイドは飲み込み、ならお願いしようかな、とキーアに微笑む。
それに満面の笑みでうんっ! と答えたキーアは、今度はロイドを含めた全員の髪を後ろでひとつに結び、仕上げにそれぞれに似合いそうな色の可愛らしいリボンを見繕って結んでくれた。
そしてミーティングの時間だからとそれを外そうとしたロイドとランディはキーアに、もう外しちゃうの? と言われたため、彼女に逆らえない保護者一同はその日一日、その髪型で過ごす事となったのだった。
「……お前ら、それで仕事をするつもりなのか? まあ別に構わんが」
「ええと。せっかくキーアが結んでくれましたし……」
「俺は止めたんですよ。けど数の暴力に押し切られちまいました」
「あら。ランディもキーアちゃんに髪を結ばれているとき、満更でもないっていう顔をしていたじゃない」
「それとこれとは別だろ! これで外に出るとか、恥ずかしいにも程があるぜ」
「いい加減諦めてください、ランディさん」
「やれやれ。賑やかなのは結構だが、そろそろ朝のミーティングを始めるからな」
「「「「はい/うっす/了解です」」」」
(えへへ。エリィとティオとランディの髪はさらさらで、ロイドの髪はちょっとふわふわしてて、面白かったなー。今度はワジとノエルの髪も、触ってみたいな)