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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    ご+う。信頼のなせるわざ、ではあるはず。ミリタリー全然知らないくせに、五先生に「だんちゃーく、いま!」って言ってほしくて。

    ものは試し「目的地ってアレ?」
     五条の問いに、運転席の補助監督は是を返した。
     湖の対岸に見える廃墟、そこで庵が任に就いているという。ただ呪霊の階級が当初の想定よりも高く、さらに複数体が認められたために、一度退避して応援を要請してきた。そこにたまたま隣接地域での任務を終えたばかりだった五条が手を挙げたのだ。
     湖の向こうにいるはずの庵の姿は見えずとも、この目でなら彼女の呪力の所在はつかめた。常人のそれとは一味違う景色を映す五条の瞳は、彼女が例の呪霊はびこる廃墟からは少し離れたところにいると伝えてくる。大方、少し距離を取って様子見しているのだろう。都合がいい。
     発信履歴から通話ボタンひとつで、庵を電話口に召喚する。ワンコールで出た。いつもこれくらい迅速な反応をくれたらいいのに、と思う。
    『まさか応援で来るのってアンタなの』
    「まあね。歌姫、今は外にいるんでしょ」
    『ええ。いったん策を立て直そうと思って』
    「じゃあ、そのままそこにいて」
    『アンタと合流するまで待機ってこと?』
     それはいいけどアンタあとどれくらいで着くのよと庵が尋ねてくるのを聞きながら、補助監督に車を止めるよう合図した。
     車を降りて、湖畔に立つ。満月の明るさで視界は良好だ。呪力を小さく硬く練り上げつつ、標的を見据える。庵がしっかりと廃墟から離れていることを改めて確認した。ここから廃墟までの最短距離を結ぶ射線はオールクリア。
    「いくよ歌姫、弾着十秒!」
    『えっ』
     的を見定め、呪力の塊を指先でぴんとはじいた。
    「七、六、五、四」
     勢いよく飛び出した呪力の弾丸は、音もなく湖を越えてまっすぐに飛んでいく。その威力に巻き上げられて湖面が白くざざざと波立ち、本来なら五条にだけ見える負のエネルギーの軌跡を可視化した。
    「弾着……今!」
     五条が高らかに数え上げた瞬間、対岸にうっそりと立っていた廃墟が、呪霊の気配ごとがらりと崩れ落ちるのが見えた。庵の気配がそれに巻き込まれていないことを目で﹅﹅確認する。次いで、ががが、と轟音が電話越しにも湖越しにも聞こえてきた。破壊音をBGMに庵が張り上げる声もまた、スピーカーから五条の耳を震わせる。
    『おい五条アンタ、ふざっけんなほんと!』
     電波に乗らずとも、耳をすませば湖を越えてこちらまで届きそうな大声だった。
    「いやー、やってみたかったんだよねコレ」
    『マジふざけんなよ……』
    「いくら歌姫が弱いったっても、この程度よけられないくせに準一級だの高専の先生だの名乗るような、空っぽの腰抜けではないでしょ。こっちも相当手加減したけどね。撃ったの術式じゃなくて呪力だし」
    『一言どころでなく多いんだわ』
     五条が術式を撃っていたら、猶予など数秒もありはしない。数える間もなく対象は吹き飛び、射線も何もなく狙った一帯が更地と化す。きっと庵も含めて。
    「カウントダウンすれば周りも身構えられるかなって思ってたんだ。ほら、報連相ってやつ」
    『一万歩譲って連絡は認めてやる。でも報告も相談も皆無だったでしょうが』
    「通話先とのタイムラグの計算がミソかな。手間だけど、これについては実例積み重ねて距離と威力から弾着までの時間をパターン化するって手もある。タイム固定して、飛ばすスピードの方を調節するのもありだし」
    『話聞け。やめろ。二度とやるな馬鹿』
    「……ま、明日明後日に二度目やるとは言わないって」
     さすがに誰が相手でもできることでないのは、五条とて分かっている。今回だって庵が相手だから実行したのだ。この手の実験に巻き込める相手は、片手に余るほどしかいない。
    「こういうのをトライ・アンド・エラーって言うんだよ。勉強になるねー? 歌姫」
    『アンタと組むとろくなことにならないって知見を得たわ。ええ、その意味ではとっても、これ以上ないほど勉強になった』

    (2110230453)
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