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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    ご×う

    明ける「今、歌姫の家の前」
    『は? え、始発』
    「出張帰り。車降りた」
     電話口の庵は、寝起きだと分かる声だった。新幹線も動いていない土曜日の早朝、明け方の街。リュック一つを背負って、五条は庵が住むマンション前に立っている。
     呪術師の拠点である呪術高専は、超法規的な存在だ。呪術師は上級の呪霊や呪詛師を相手にすれば、救護対象の選別や暗殺、処刑といった行為にも踏み切るが、警察組織がそれを摘発したりはしない。同様に、人手不足のあおりを受けて任務に連日駆り出されていても、休日返上で祓除に赴くことになっても、呪術師の労働環境に労基署がメスを入れることはない。メリットとデメリットは表裏一体なのだ。
     高専管轄下ただ一人の特級ともなれば特に顕著だった。学生相手に実技指導やら任務引率やらをしているときに急に出張が入るわ、それを巻きで終わらせてさっさと帰ってきたと見るや手が空いたなら頼むとばかりに他の術師の尻拭いを任されるわ、休みなのは重々承知で一級術師が出払っているからと祓除を依頼されるわと、それはそれはブラックである。
     特級に回されるだけあって事態は急を要するものばかりで、「明日にしていい?」とはさすがの五条も言わない(言える状況ならねじ込むが)。
     反転術式での自己回復がなければ成り立たないほどの繁忙。それにしたって傷が治り疲労感が飛ぶという話で、一度疲れたという事実は消えない。今日は疲れた、昨日も疲れた、一昨日も疲れていた——と積み重なれば、現代最強の特級呪術師とて気が滅入る。
     例に漏れず西日本行脚と化した長期出張の帰り。新幹線の始発を狙って駅を目指す車内から眺める景色が、庵の暮らす街並みであることに五条は気づいた。運転する補助監督に声をかけて車を止めさせて、僕ここで降りる、と返事も聞かずに降車した。
     歩きながら、発信履歴から庵を呼び出す。時間が時間なだけに反応は遅く、待機音が途切れて『おはよう、時間考えてよ』という庵の声が届いたときには、マンションにたどり着いていた。
    「僕、今日、休み」
     言葉を紡ぐのも面倒くさかった。単語を並べて意思を伝える。
    『帰らないの?』
    「ここにいる」
     エントランスに入って、インターフォンの呼び出しパネルの前に立つ。部屋番号いくつだっけ、こんな時間に間違えたら近所迷惑って歌姫が怒るんだろうな。しかし頭の回転は鈍っていても指は覚えていたようで、ゆっくりと、三桁の番号を入力する。
     呼び出しボタンに触れ、押し込む直前に、傍らの自動ドアが開いた。寝巻きにつっかけサンダルの庵が、ストールを羽織って立っている。
    「出張おつかれ、五条。おかえりなさい」
    「……ただいま、歌姫」
     とりあえず二度寝に付き合いなさいよと庵に手を引かれて、五条は自動ドアをくぐった。

    (2111130553)
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