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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    ご+う。
    たぶんスマホ黎明期なので何年か前。

    スタンプ「あの画面デザインからして、長い文章送ることは想定してないって分かるでしょ」
    「まあ、そうなんだけど……。どうもメールの感覚が抜けなくて」
     スマートフォンを取り出した五条はメッセージアプリを開き、改めて己と庵のトーク画面を眺めた。手のひら大の画面の中で、左側の大きめの吹き出しと右側の小さな吹き出しやスタンプが独特のリズムを刻んでいる。
     基本的に庵のメッセージは最後に丸を打ってあることに気づく。彼女が送るのは文なのだ、やはり。さらに一度にいくつかの文をまとめてくる分、左側にある吹き出しは縦に伸びがちだった。その点、右に並ぶ吹き出しは小さくて多い。
    「そういえば歌姫ってデコメとかも全然だったね」
    「あったわね、そんな機能」
     数年前のメール事情を思い返してみれば、なるほど庵がくだけた文字コミュニケーションを不得手とするのは今に始まったことではなかった。庵はメールのデコレーション機能もほとんど使っていなかったはずだ。任務の集合場所や時間、書類の提出期限といったいわゆる重要事項を太字や赤字にしていた程度ではなかったか。アニメーションやイラストなどのデコレーション素材の挿入は、少なくとも五条が受け取った庵のメールでは見た覚えがない。
     スマートフォンが普及するとともに、あのころの携帯電話はガラケーと呼ばれるようになり、メッセージをやりとりする行為は随分と気軽なものになった。
     手紙のような定型やタイムラグがなく、メールの白々と広い作成画面を前にしたときほど肩肘張る必要もない。せいぜい一、二行分の入力スペースから、一文にも満たないたった一言を放り込めばいい。なんなら文字ですらなくイラストひとつをポンと送るのでも十分だ。手軽なチャット、まさにおしゃべりという感覚。五条としては割合に座りの良いコミュニケーションツールであった。
     一方の庵は違っていたらしい。
     ガラケーとメールが席巻していた時代から、それなりに整った文章でのやりとりになりがちな傾向があった。今のメッセージアプリの気軽な短文コミュニケーションに向くUI上でも、その様子は変わらない。
     五条の送るものが短文、単語、スタンプであるのなら、庵のそれは文章、資料だ。
    「歌姫はとりあえずさ、スタンプを使おう。もっと気楽なトークを目指そう」
     五条の提案に、庵が顔を歪める。
    「えぇ……。使いどころが分からないのよ、スタンプって」
    「文字の入ったやつを、あいさつとかの代わりに送ればいいんだよ」
     これとか、と庵にスマートフォンを差し出す。画面には五条の持っているスタンプのプレビューを表示させてあった。あいさつや相づちといった定番フレーズが書き添えられたスタンプだ。庵とのやりとりでも使っているものなので、「こういうやつね」と庵も納得する様子を見せた。
     庵が自分のスマートフォンでアプリを立ち上げたのを見て、五条は先ほど見せたスタンプの中から一つをタップした。彼女のトークリストの中で五条の名前がトップに浮上する。庵が新着アイコンのついたそれをタップして五条とのトーク画面を開けば、五条が送りつけた『あそぼ〜』というスタンプがちゃんと届いているのが見えた。
    「でも、元からあるスタンプって、こういう文字入ってないわよね」
     どこだっけ、ここか、と言いながら画面をタップした庵が言う。五条が画面を覗き込むと、庵の手持ちのスタンプが表示されていた。スタンプリストはデフォルト状態だ。
    「イラストだけのやつだって、感情とか様子とかを伝える参考資料だって考えてみれば、どう?」
     『のどかわいた』とメッセージを送ってから、ジュースを飲むキャラクターのスタンプを一つ添えてやる。ぽぽんと庵の手元のトーク画面にも並んだ。
    「要するに挿絵みたいなもんだよ」
    「なんかしっくりきた。今度から使ってみる」
     五条のスマートフォンが震えて、手元の画面に『飲み物買ってくればいいじゃない。』と吹き出しが一つ増えた。数拍の間を置いて、首を傾げたキャラクターのスタンプが追加される。小首を傾げて提案する庵の姿を想像すると、少し幼なげな姿になった。むずむずする。
     『いいね!』とサムズアップするスタンプを送る。それを見た庵が五条を見上げてくるので、自販機コーナーのある方向を指差した。
    「これからもスタンプ練習付き合ったげるよ」
    「スタンプ練習って何。もっと他にするべき練習があるでしょう」
     真面目な返答を聞きながら、五条は指差した方向へ歩きだした。手の中でスマートフォンが震えたので見れば、キャラクターが二人並んで歩いているスタンプが届いている。後ろから隣に追いついてこようとする気配を感じとりつつ、五条はスマートフォンをしまった。

    (2111190708)
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