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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    ご×う、のスタートラインのような何か。
    匂わせてばかりでストレートな描写ができないの、なんとかしたい。

    転回 すうと浮き上がるような目覚めの中、庵は、やけにぬくいなと感じていた。湯たんぽ、いや抱き枕か。もふもふ、しかしなで下ろすとすべすべで、不思議な手触りだ。そして大きく、重い。抱えたまま寝返りを打とうとしても無理だった。
     身じろぎしたせいで朝の冷たい空気が布団の隙間から入り込んだ。思わず抱き枕のもふもふを抱え直して、爪先を抱き枕とベッドの間に潜らせる。
     今日の午前中はオフだ。まだ今日も一泊するので、チェックアウトなどの時間は気にしなくてもいい。このままぬくぬくなもふもふと一緒に二度寝してしまおうと抱き枕を抱え込んで大きく一呼吸したところで、抱き枕がもぞりと動いた。庵の腕の中でもぞもぞと動くもふもふ。すべすべな感触は庵の胸元にすりついてくる。
     次の瞬間、ぢう、と鎖骨のあたりに鋭い痛みが走った。
     つねられた? 嚙みつかれた? 何か刺された? 抱き枕が、そんなことするか?
     眠気が飛ぶ。光を避けて開かなかったまぶたはパチリと開いて、腕の中に収まる白いもふもふ——柔らかな白い髪を認識した。
    「まだ寝てていいよ。アラーム鳴るまで、まだ結構あるし」
     抱き枕がしゃべった。いや違う。
    「僕も今、結構きもちいいし」
     やーらかいねえと庵の胸に頬ずりしているのは抱き枕などではなく、五条だった。

     殴られるような頭痛と腹の中をかき回して込み上げる嘔吐感に襲われるたび、悪酔いってこんなんだったなと思う。そのたびに庵は、もう二度とこんなことにはなるものか、こんな酔い方はするものか、次は絶対に気持ちがいいところまでで飲むのをやめる、と強く決意する。しかしなぜだか、またやってしまう。
     店のトイレだったり、宿のユニットバスの片隅だったり、はたまた道端の側溝だったり。喉までせり上がってきたものを抑えられずにゲエゲエしている庵の視界いっぱいに広がる景色は、その時々で違う。
     背中をさする手のひら、「無理せず出しちゃえ」と言い聞かせてくる(時には喉に指を突っ込んでまで嘔吐を促しさえする)声、口元をトイレットペーパーやらティッシュやらハンカチやらで拭う指先。いわゆる介抱をしてくれている誰かがいつも同じだということには、酒精に殴られたようにグラグラする頭でも不思議と気づいていた。
     ただし、寝て起きると忘れる。飲み倒して酔いつぶれて便器を抱えながら、この手この声この指先には覚えがあるな思い出したぞ前にも世話になったなごめんいつもありがとうって言わなくちゃとか色々考えておいて、落ち着けば目覚めとともに一人ベッドの上で伸びをして、記憶の彼方へさようならだ。
     おっかしいなあ、変だなあ、今夜はこんなに酔うつもりなかったんだけどなあと毎回反省する半面、いやこれはそういうルーティンなのだという自堕落な考えもあった。
     そういうルーティンであるはずだったのに。
     庵は身を起こして部屋を見渡した。ここは、庵がチェックインを済ませてキャリーケースを放り込んだ部屋ではない。あれはシングルルームだったはずなのに、このベッドはやけにでかい。壁紙やベッドカバーのデザインなどは見覚えがあるが、見れば見るほどこの部屋は似て非なるものだ。
    「さて、ここはどこでしょう」
     抱き枕、もとい五条が寝転んだままもったいぶったように問いかけてきた。酔いではない頭痛に、こめかみへ手を添える。
    「……ホテル」
    「何号室でしょう」
    「1106」
    「それは歌姫が取った部屋」
     続けて五条が告げた部屋番号は全く身に覚えがなかった。
    「いつも以上に歌姫が離してくれなくてさ。でもシングルの部屋に二人で泊まりますってのは〝なし〟でしょ。フロントで『困ったなー』ってしてたら空きがあるって言ってもらえて、ダブルの部屋に移ったってわけ」
     いつも以上にってなんだ。今回ほどでなくても五条を離さないことがあったのか。いつも、なんて言われるほど何度も介抱させてきたということか。考えれば考えるほど、あまりの情けなさに脱力してしまう。
     ぐいと腕を引かれた。犯人は五条しかいない。脱力した庵の体は抵抗することなく、ばたりとベッドに倒れた。二人向かい合って寝そべる体勢になる。一端のカップルのようだ。
    「僕の意思が固くてよかったね。でなきゃ今頃、っていうか今までだって何度となく、ペロリやらパクリやら、されちゃってただろうよ」
    「性犯罪者を後輩に持った覚えはないわ」
    「そりゃまた大変な信頼を寄せてくださって、どーも」
     五条が指先を庵の鎖骨に滑らせる。くっきりと赤い痣ができていた。
    「何度も迷惑かけてたらしいのは謝るわよ、悪かったわね。だからって紛らわしいもん残しやがって……」
    「内実が欲しければ喜んで実行するけど」
    「いらねえわ。嫌がらせにしちゃタチが悪い。謝ったじゃない」
    「ふーん?」
     ぐるりと視界が転回した。ベッドに腕をついた五条が天井を背負って、庵を見下ろしている。視界が五条で埋まる。呪力を見透かす青い目の中に、庵が映り込んでいた。
     落ちる、と思った。
    「言っとくけど、忘れられるのが癪だったってだけで、僕はその気だよ。ちゃんと覚えててくれる一撃必殺の状況を狙ってんの」
     五条は一度こめかみに口付けを落として、さっぱり目冴えちゃったし身支度してご飯食べに行こ、とベッドから降りていった。わざとらしい話題転換だったが、ありがたく便乗する。落ちるわけにはいかないので。

    (2112160508)
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