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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    ご+う

    LED「どうして雨なの」
    「お天道様に聞きなよ」
     庵は教員室のデスクに伏せて、腕の中でくぐもった声を上げた。その姿はどうにも大人げない。隣のデスクチェアに座って眺めている五条の「生徒には見せられない姿だねえ」という言葉に返ってきたのは「うるせ……」と切れの足りない声だった。
     ざあざあと窓の外から聞こえてくる雨音をシャットアウトするように、時折うなっているのが聞こえる。五条が後ろ頭を飾る白いリボンを引っ張っても、いつもの「やめろ」「触るな」が飛び出してこないあたり、落胆は相当なものであるらしい。はたから見ていても、どうしてそこまで、と呆れてしまうだけなのだが。
    「ああー、イルミネーションー」
     冬、年末、東京出張。その夜が空いているとなれば、庵は当然、かわいがっている後輩の家入に声をかけていた。
     ご飯食べよう。飲みに行こう。ついでに、冬らしくイルミネーション見に行っちゃおう。
     家入はその役割柄、気軽に高専の持ち場を離れることができない。だからこそ、たまの外出でパッと華やかな非日常に触れて気晴らしできればと思ったのだと、庵は言う。
     五条が今の様子を見るに、庵自身が見たいところにそれらしい理屈を張り付けているような気がしないでもない。とはいえ庵が家入を慈しんでいるのは事実だから、その言い分もまるきりの嘘ではないのだろう。
     しかし、庵の野望はついえた。朝からこちら強めの雨が降り、夜までやむ気配はないらしい。目当てのイルミネーションイベントは中止だ。
    「明日になったら雨やんでるでしょ。京都へ帰るときにでも寄れば」
    「明日だと硝子の都合がつかなかったの! 一人で見たって意味ないのよ!」
     庵がバッと身を起こしたかと思うと、ちくしょうとかもごもご言いながら窓を睨み据えている。
     大通りがチカチカ光ってるってだけで、そんなに惜しむほどありがたいもんかね。いや、惜しいのは硝子との約束ごとか。
     この飲兵衛が飲みの席を確保してなお他ごとを惜しんでいるさまは、五条としては少々意外だった。まったく、懐いているのはどちらだ。
     ぎ、と背もたれが限界を訴えてくるのも気にせず、体重を預けた。天井を仰ぎつつ、ちろりと視線をスライドして、庵の横顔を眺める。「今日、飲み自体には行くんでしょ」と問えば、「まあそうなんだけど」と気まずそうな視線を五条の方へよこしてきた。二つの飴色はそのまま、じ、とこちらを見つめ続けている。
     珍しいと素直に思った。真っ直ぐ、真正面から、おとなしく五条を見ている庵。滅多なことでは実現しない絵面だ。なにせ、庵は五条を前にすると臆病な子犬もかくやと言うほどに吠える﹅﹅﹅
    「……ずいぶん熱い視線をくれるね」
    「目隠し野郎め。こっち見てるなら言って」
    「それ、こっちのセリフ。見られすぎて穴開きそう」
    「開いたらどんなにか胸がすくかしら」
    「僕に死ねって言ってる?」
    「穴くらいで死ぬタマじゃないでしょ」
     そりゃあねえ。
     わざとらしく反動をつけて、上半身を起こした。ぎぎ、と背もたれが大げさな音を立ててきしむ。今度こそお互いに真正面から向き合う体勢になる。
    「で? 話そらさないでよ」
    「そらそうとしたわけじゃないわよ」
     はあ、と呆れましたと言わんばかりのため息をつかれた。正直、先ほどから呆れているのはこっちだ。
    「アンタってさ、イルミネーションみたいな色合いしてるよね。髪の白と、隠れてるけど目の青」
    「GLGに対して言うことか?」
    「アンタが例のイルミネーションの中にいたら、完全に保護色でしょ」
     先輩と行くんだ、と家入が見せてきたイベントのイメージ画像を思い出す。確かに、白を基調にした輝く空間に差し色の淡い青が瞬いていた。
    「五条の相伝を発現してる男つかまえてLED扱いする女、歌姫くらいだよ」

    (2112282128)
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    85_yako_p

    DONE秀鋭。懺悔する演技の練習をする鋭心先輩と、よくわからなくなっちゃったけど鋭心先輩のことが好きになっちゃった秀くんです。書いてて私もよくわかんなくなっちゃった。明るくないです。(2023/7/26)
    モノクロレコード シアタールームに満ちる、淡々とした声を聞いている。大好きなはずの声は普段とは違ってボソボソと覇気がなく濁っていて、蓮すら咲かない泥のようだ。こんな声が目の前の男からこぼれていいはずがない。なんだか現実味のない、悪夢のような時間だった。
     鋭心先輩の口からは際限なく罪状が零れ落ちる。いま、俺は神父で鋭心先輩は裁かれることのなかった罪人だった。彼の告白する罪のひとつひとつがどんな罪に問われるのかは知らないけれど、その積み重ねの先にこんなどうしようもない人間が生まれてしまったのだということが悲しいほどにわかってしまう、そういう声だ。
     正直、こんな役を鋭心先輩に演じてほしくはなかった。鋭心先輩が次の仕事で演じるのは罪を犯したのに罰を与えられなかった人間だ。キーパーソンでもなんでもない、ただ世界の不条理を示すだけの端役で、やることは道端を歩くこと、懺悔室でたっぷり2分をかけて罪を吐露すること、そして何を守るでもなく車に轢かれることだけ。未来すら描かれることのない、亡霊のような役だ。
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