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    ヰ不🍀

    @kamuidaimon2551

    進捗とか呟くには長ったらしい妄想とか投げます。
    絵文字ありがとうございます🙏

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    POIPOI 22

    ヰ不🍀

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    今回も捏造過多。
    漸くアメリカ留学スタートです
    今回はマロで集めていたお話をひとつ組み込ませてもらっています!書いてて楽しかったです!

    前回→ https://poipiku.com/

    あんたと君との5年間(仮)② 雄英高校の卒業式から一週間後。
     長い空の旅を終え、爆豪は予定通りロサンゼルス国際空港に降り立った。
     機内での窮屈な時間と時差の重さが体に残るが、彼は首を軽く鳴らしながら、何気なしに周囲を見回す。
     空港には旅行者のざわめきとスーツケースを引く音、人の笑い声、遠くで響く英語のアナウンス。すべてが、異国の空気に満ちていた。
    (……やっぱ、いねぇよな)
     爆豪の視線は、雑踏の中を無意識に探る。
     そこにオールマイトの姿はない。
     だが、当たり前と言えば当たり前だ。
     卒業式でのあの衝撃的なオールマイトの言葉を思い出し、爆豪は小さく舌打ちする。
     あの時、確かに同じタイミングでアメリカに来るとは言っていたが、一緒に行く約束をしたわけではない。
     ましてや、爆豪がそんな甘ったれたことを望むはずもない。
    (……何を、気にしとんだ俺は)
     自分に苛立つように、爆豪は乱暴に髪を掻く。
     さっさと病院に向かい、リハビリと新たな生活を始めなければ。
     それが自分の目的だと、スーツケースの持ち手を握り直し、出口に向かって歩き出そうとしたその瞬間。
     雑踏の中で、見慣れた車椅子が爆豪の視界に飛び込んできた。
    「私が爆豪少年を待ち伏せしていたぁ!」
     目が合って、お決まりのセリフを使い回すオールマイトに、爆豪は唖然とする。
    「オールマイト、何でここに……!」
    「サプライズさ! ふふ、前乗りして君を待っていたんだよ?」
     オールマイトまるで悪戯を成功させた子供のように、満足気に笑う。
     爆豪は一瞬言葉を失った。
     空港の喧騒が遠くに感じられるほど、目の前の存在感が強い。
    「サプライズってあんたな……。それに何でわざわざ……」
     爆豪の声に呆れと戸惑いが滲む。
     なぜオールマイトがこんなことを? 彼は唇をへの字に曲げ、オールマイトを睨むが、オールマイトはそんな爆豪を見て楽しそうに笑うだけだった。
    「爆豪少年のことだから時間に余裕もって来てるんだろう? それなら少しばかりおじさんに付き合っておくれよ」
    「付き合えったって……」
     戸惑う爆豪に、オールマイトは構わず続ける。
     車椅子を少し前に進め、陽気な口調でまくしたてる。
    「今日からしばらく君も私も病院生活。でもせっかくなんだから、ちょっと観光するくらいバチは当たらないさ!」
     オールマイトの笑うその顔は、まるで太陽のように明るくて、眩しい。
     爆豪はその勢いに圧倒されてしまう。
    「ったく、しゃーねえな……」
     爆豪はぶっきらぼうに呟いた。
     渋々といった態度でスーツケースを引き、彼はオールマイトの車椅子の隣に立つ。
     それにオールマイトは満足げに頷き、車椅子を動かし始め、ふたりは空港の外に向かう。


    「爆豪少年、ようこそアメリカへ!」
     オールマイトの元気な声とともに、爆豪はロサンゼルスの空港を出た。
     太陽が眩しく、空の青さが日本とは一味違って見える。
     周りには広大な駐車場に停められた車、そして高層ビルの合間に見える広い通り。
     何より、空の広さが日本と全然違った。日本ではビルが立ち並び、空が狭く感じることも多いが、こちらはとにかく開放感がある。広い空が無限に続いているような感覚だ。
     爆豪はこれまでI・アイランドやオセオンに行ったことがあったが、アメリカは初めてだった。
     何もかもが大きく、鮮やかで、さすがの爆豪も目を見張るものがある。
     そんな爆豪に優しい眼差しを向けるオールマイト。
    「さ、行こうか」
     オールマイトが予約していたらしいタクシーに乗り込む。
     オールマイトが運転手に行き先を伝えると、車は発進する。
    「で? どこ行くんだよ」
    「それは、着いてからのお楽しみさ」
     そんなことを言いながら、オールマイトはウィンクをして茶目っ気を出す。
     躱すオールマイトに心底呆れつつ、爆豪は窓から見える景色に目を向ける。
     高くそびえるヤシの木が規則的に並ぶ大通り、低層の建物が横に広がる街並み、そして通り沿いには色とりどりの看板が目に飛び込んでくる。
     オールマイトが頼んでもないのに隣で「ここらへんは映画によく使われている街なんだ」とか「あそこのお店のバーガーは美味しいよ」とかのガイドをするから、どうしても心が浮つく。
     遊びに来たわけじゃない。
     この腕を治すために、実戦経験を積むために。
     ヒーローになるためにここへ来たのだ。
     でも、それでも、今この時くらいは、オールマイトの言う通り観光に身を委ねてもいいだろうか?
     タクシーが海沿いの道を抜けると、街の空気が一気に変わった。高層ビルの影が遠のき、フロントガラスの向こうにちらりと海の気配が見えた気がして、無意識に目で追った。
     タクシーが静かに速度を落とし、近くの小さな駐車場で止まった。
     穏やかで、それでいてどこか弾んだような声で「着いたよ」とオールマイトが声をかける。
     爆豪は頷き、ドアを開けて外に出る。
     照りつける陽射しが肌を刺すほどだったが、どこか心地よい熱を含んでいた。
     ふと、顔を上げる。
     駐車場の先、少し距離はあるが、視線の先には確かに海があった。
     まばゆいほどの陽光を跳ね返す水平線。そして、そのすぐ左手に、鮮やかに回る観覧車が見える。
     空の青、観覧車の原色、そしてその向こうに広がる、どこまでも続く海。
    「……」
     爆豪はけして感嘆を漏らさない。
     けれど、大きく開いている目が、その少年にとって初めて触れる景色なのだと物語る。
     背後ではオールマイトが、柔らかな笑みを浮かべている。爆豪の視線を辿るように、同じ景色を見ていた。
    「もう少しだけ、近くに行こうか」
     爆豪はオールマイトの言葉に「……ああ」と短く返事をして、車椅子の取っ手に手をかける。
     観覧車がすぐ横に見える位置まで来ると、景色は一段と開けた。
     海が視界いっぱいに広がり、太陽の光が波に反射し、きらめいている。
     まるで何かを祝福するかのように。
     オールマイトは静かに目を細めている。
     風に髪を揺らし、何かを懐かしむような、少し遠くを見ている目。
     爆豪は黙ったまま、その横顔を見ていた。
    「……これ以上は、時間が押してしまうかな」
     海を眺めながら、オールマイトがぽつりと呟いた。
     それは、どこか名残惜しそうな声だった。
     風の吹く方へ目をやりながら、それでも背を向けるように車椅子を少し引く。
    「そろそろ病院に向かおうか」
     タクシーを待機させている場所に戻り、運転手への軽い挨拶とともに再びエンジンを唸らせて走り出す。
     車内は観光の余韻と、これから始まる新たな生活への緊張感が混じる中、爆豪はふとあることに気づき、眉をひそめる。
    「そういや俺、あんたに病院の場所言ってねえけど、今どこ向かってんだ」
     その爆豪の言葉にオールマイトはきょとんとした顔をする。
    「えっ? 私と一緒の病院だって相澤くんから聞いたけど」
    「は??」
     爆豪の驚きと苛立ちが混ざったその声が車内に響く。
     オールマイトはそのまま言葉を続ける。
    「行先はアメリカで、行く日も同じ日で、病院も同じだなんて、相澤くんと偶然ってあるもんだねーって言ってたんだよ」
    (言えよ先生……!)
     爆豪は頭を抱え、シートに深く沈み込む。相澤の無駄に口の堅い態度を思い出し、内心で毒づく。
     車は信号で止まり、街の喧騒が窓の外からどこか楽しげに響く。
     オールマイトの視線が、遠くを見つめるように柔らかくなる。
    「でも、羨ましいなぁ」
    「羨ましい?」
     オールマイトの呟きに爆豪は怪訝そうに顔を上げた。
    「私の頃はまだリモートで受けれる講義とか、前倒しで単位取れるとかっていうシステムなかったからさ」
     懐かしさと、それからほんの少し恥ずかしさが混じったような声。
    「じ、実は私、単位取れたのわりとギリギリだったんだよね……」
    「……へぇ」
     爆豪の声は、軽蔑や馬鹿にしたものではない。
     ただただ純粋な意外さに自然と漏れたものだった。
     教師まで務めた元No.1ヒーローに、そんな話があったなんて。
    「街で悲鳴とか、事故なんかの通信が入るとどうしてもね……。いやぁ、友人と友人の車があって助かったよ」
     オールマイトの指が、恥ずかしそうに絡まる。
     その姿は、かつての堂々たるヒーローではなく、どこか人間らしい、親しみ深いものだった。
     爆豪の脳裏に、ヒーロー仮免許を取得した日のことが蘇る。
     街に敵が現れ、爆豪と轟が応戦していたあの時。
     オールマイトは避難誘導をしていた。そんな中、倒れてくる街灯に気づかずふらふらと歩く女性を助けようと、既に力を失った体で、オールマイトは迷わず動いていた。
     あの時オールマイトすでにマッスルフォームにはなれず、ただの無個性の男だったはずなのに。
     考えるより先に、体が動いてしまう。
     それは昔からきっと変わらない。オールマイトの性分なのだろう。
    「……あんたはきっと、昔から変わんねンだな」
     爆豪のその呟きはあまりにも小さく、車内のエンジン音にかき消される。
     オールマイトが首をかしげる。
    「爆豪少年、今何か言った?」
    「あんたの連れが可哀想だっつったんだよ」
     爆豪はそっぽを向き、ぶっきらぼうに返す。
    「うっ。ら、ランチ奢るくらいしたさ……!」
    「単位とランチじゃ割に合わねえだろ」
     爆豪の軽い皮肉に、オールマイトが肩をすくめて笑う。
     車内はささやかな笑い声と、どこか温かな空気に包まれ、窓の外は緑の木々と白い病院の建物が段々と近づいてくる。
     やがてタクシーが病院のロータリーに滑り込んだ。
     オールマイトが支払いを済ませると、どうやら運転手はオールマイトのファンだったようで去り際に握手をねだられていた。
     去り際に握手を求める運転手に、オールマイトは穏やかに応じる。その姿を、爆豪は少し離れた場所から見つめる。
     陽の光がオールマイトの金の髪を照らし、まるで彼がまだヒーローであるかのような輝きを放っていた。
     病院のエントランスは、消毒液の匂いと人の雑踏がありながらも静かな空気が漂う。
     爆豪は受付と手続きのために、今日のところはここでオールマイトと別れることになる。
     スーツケースを握る手が、ほんの少し強張った。
    「それじゃあ爆豪少年、頑張ってね」
     オールマイトが浮かべていたその笑顔は、卒業式の時と同じ、温かく、誇らしげだ。
     爆豪はその目に宿る光を見つめ、すぐに口の端を吊り上げる。
    「ハッ! 当たり前だ!」
     強気な笑みを浮かべ、爆豪は力強く言い放つ。
     その声は、病院のロビーに響き、新たな決意をこの地に刻む。
     カルフォニアに差す陽光がガラス越しにふたりを照らし、物語の新たなページを静かに開いた。
     
     
     これは、彼らが再起するための物語。
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    Replies from the creator

    ヰ不🍀

    DONE全て捏造。
    アニメ勢は少しだけネタバレ含みます。
    一応それぞれ調べたりしてますが、留学とか病院とか知らん!わからん!って思って書いてます。
    何でも許せる方のみお読みください。
    ごりごりにブロマンスですが、距離が近すぎるので勝オルとしてます。
    今回は準備回みたいなもので、全然留学のりの字もないです。
    誤字脱字は気づき次第直していくのでそれまでは脳内補完お願いします…
    あんたと君との5年間(仮)① 放課後の教室には、まだ生徒たちの声や足音が微かに響いていた。
     窓の外から差し込む夕陽が教室の床を橙に染めている。
     そんな教室の中に低く静かな声が、教室に落ちた。
    「お前、本当にいいのか?」
    「いンだよ、校長からの説明も聞いた、親の了承も得てる」
     まるでそれ以上の議論は無駄だと言うように、一切の迷いなく、爆豪は答えた。
     その返答に相澤はため息混じりに頭を掻き、手元の調査書に視線を落とす。
     そこにはたった一行。第一希望のところに「アメリカ留学」とだけしか書かれていない、大雑把とも大胆ともとれる進路の希望が書かれてあった。
    「最近腕の調子はどうなんだ」
     爆豪の右腕は、死柄木弔やオール・フォー・ワンとの戦いで受けた傷のせいで、今も完全には動かない。
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